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吉野太平記 上下 [読書・歴史/時代小説]

吉野太平記〈上〉 (時代小説文庫)

吉野太平記〈上〉 (時代小説文庫)

  • 作者: 武内 涼
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2015/12
  • メディア: 文庫




吉野太平記〈下〉 (時代小説文庫)

吉野太平記〈下〉 (時代小説文庫)

  • 作者: 武内 涼
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2015/12
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

足利尊氏が室町に幕府を開いてからおよそ100年。

大覚寺統を報じる一派、いわゆる後南朝は、
いまだ吉野の地にこもり、幕府そして北朝への抵抗を続けていた。

1443年に起きた禁闕(きんけつ)の変で、
三種の神器の一つ・勾玉を奪取した後南朝側は、
大覚寺統の末裔・自天王を「帝」と仰ぎ、反撃を開始した。

戦乱を防ぎ、皇統をふたたび一つにする糸口を探るべく、
近衛関白は後南朝内部の和平派との接触を図る。
その使者に選ばれたのは
将軍・足利義政の妻である日野富子の妹、幸子であった。

その護衛を命ぜられたのは忍軍村雲党の棟梁・村雲兵庫。
幕府に不満を抱く貧乏公家の娘に扮した幸子とともに、
敵地である吉野の山地奥深くへと分け入っていく。

しかし、幕府の実権を握る伊勢守貞親は、
後南朝勢力の根絶を狙って、戸隠忍軍による別働隊を送り込む・・・


読んでいて思いだしたのは、著者のデビュー作「戦都の陰陽師」。
ヒロインがある目的を持って敵地に乗り込んでいく、
忍者のチームが護衛につき、その頭領に想いを寄せていく、
ストーリーのほとんどが深い山中で進んでいく、など
共通するモチーフも多い。

ただ、このブログで「戦都の陰陽師」を採り上げた時、
けっこう文句を書いたんだよねぇ。

「護衛の忍者たちの内面描写が少ない」とか
「山の中を逃げ回ってるシーンが長い」とか
「もっと戦闘シーンをじっくりと」とか・・・

でも今回は大丈夫。

護衛のメンバーを、兵庫を含めても4人に絞ったせいか
それぞれの過去や心理描写も丁寧に描かれたし、
主人公一行は確かに逃げ回ったけど、
一方的にやられっぱなしになってないし、
兵庫が手練れの敵と戦うシーンも、危機に陥るシーンも
たっぷり描いてあるし。

それに加えて、敵キャラにまでドラマを用意してある。
南朝再興に執念を燃やす謀将・楠木不雪。
戦い続ける日々に疑問を抱き、さらには
自らがもつ "ある秘密" に葛藤する自天王。
敵陣営内の人間模様も読みどころの一つだ。

デビュー作と比べると、
かなりの進歩を感じる出来になっていると思う。


しかしながら実際の歴史に題を採った小説である以上、
史実から大きく離れた結末は許されない。

それはまあ歴史小説の宿命ではあるのだろうけど、
本書の中で終始一貫して平和を願っていた幸子が、
この物語が終わった「後」に辿る運命を史実から追ってみると
そのあまりの落差に驚き、ちょっと切ない気分になったよ。


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