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ミステリマガジン700【海外編】 創刊700号記念アンソロジー [読書・ミステリ]

ミステリマガジン700 【海外篇】 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ミステリマガジン700 【海外篇】 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2014/04/24
  • メディア: 新書



評価:★★☆

"ミステリ" マガジンと銘打ってはいるものの、収録されている作品は
本格ものからサスペンス、心理スリラーからホラーっぽいものまで
かなりバラエティに富んでいる。
700号にわたって掲載された膨大な作品群から、
日本で刊行された単行本に未収録の作品を対象に選考し、
16編を収録している。

私の定義するところのミステリとは、
「大きい/小さい/重厚/軽妙に関わらず、また犯罪/非犯罪を問わず
 ストーリーの根幹に "謎" があって、最後には謎が解けて解決する」
これがまあ、だいたいの私の基準といっていい。

 とはいっても、ミステリ/非ミステリの判断に迷う作品も
 少なくない。境界は限りなくファジィなんだ・・・

これに当てはめると、本書にはミステリではないものも含まれている。
でもまあ個人の価値基準ですから気にしないでください。

 犯罪がらみのエンターテインメント小説全般を
 十把一絡げに "ミステリ" って呼ぶことに、
 どうしても違和感をぬぐえないオジサンなので。

あと、これ書くと怒られそうなんだけど
「ミステリマガジン」自体は一冊も買ったことありません。
早川書房さんごめんなさい。

 でも、クリスティー文庫はほとんど全巻買ったから許して(笑)。


閑話休題。

まず、気に入ったものは次の4編。

「マニング氏の金のなる木」(ロバート・アーサー)
 銀行から大金を横領したヘンリー・マニングは、逮捕される直前に
 若夫婦(ジェローム&コンスタンス)が暮らす家の庭の、
 エゾマツの苗木の下に金を埋めた。
 3年の刑期を終えて出所したヘンリーだったが、
 エゾマツは大きく成長してしまって金を掘り出すのは容易ではない。
 そこで彼は、自動車修理工として働きながらジェロームに接近するが、
 次第にコンスタンスに惹かれていってしまう・・・
 これ、ミステリとしてどうかは別として、とってもいい話だなあ。
 O・ヘンリーの短編集に入ってても違和感ないんじゃないかな。

「二十五年目のクラス会」(エドワード・D・ホック)
 レオポルド警部のもとに高校の同級生だったハリーが訪れる。
 卒業25年目のクラス会を開くために、彼を手伝って、
 かつての同級生たちへの連絡を始めるレオポルドだが、
 その中で卒業ピクニックで溺死したジョージのことを思い出す。
 あれは事故ではなく、殺人ではなかったのか・・・
 レオポルド警部シリーズを読んだのは、たぶんこれが二作目。
 切れ者なイメージはないが、朴訥かつ堅実な人柄のようで、
 クラスメイトたちの反撥にもめげずに地道に捜査を続けていく。
 ミステリとしてきちんとまとまっていて、さすがは短編の名手。

「すばらしき誘拐」(ボアロー、ナルスジャック)
 毛皮商ベルトンの妻・マリが誘拐された。
 犯人からは身代金30万フランを要求する電話が。
 しかし、マリの死を願っていたベルトンは内心小躍りしていた。
 妻が誘拐犯に殺害されることを願いつつ、警察に連絡するが・・・
 予想外で切れ味鋭いラスト。いやあこれは一本とられました。

「ソフト・スポット」(イアン・ランキン)
 囚人が外部とやりとりする郵便物の検閲官・デニス。
 大物囚人のブレインの妻・セライナは、
 夫に向けてしばしば情欲に満ちた手紙を送ってきていた。
 夫との面会に訪れた彼女に惹かれたデニスは、
 セライナにつきまとうようになり、彼女の浮気を知るが・・・
 ストーカーもののサスペンスかと思いきや、
 最後に大技を食らってまたまた一本とられました。
 お見事。


とりあえずミステリとして読めたものが4編。

「拝啓、編集長様」(クリスチアナ・ブランド)
 女性作家が、今まさに殺人を行おうとしている状況を
 自ら手紙にしたためている、という趣向。最後のオチが効いている。
 クリスチアナ・ブランドは一時期まとめて長編を2~3冊読んだなあ。
 "これぞ本格"ともいうべき、かなり"濃い"作風だったのを覚えてる。
 なんで読むのやめたんだろう・・・?

「名探偵ガリレオ」(シオドア・マシスン)
 福山雅治とは関係ありません(笑)。
 アリストテレスの学説を覆すべく、ピサの斜塔の上から
 二つの鉄球を落とす公開実験を行ったガリレオ。
 しかしその直後、塔の上に残っていた二人の弟子が転落死する。
 しかし塔の中に犯人の姿はない・・・
 歴史上の有名人を探偵役に設定したシリーズの一編とのこと。
 犯人の脱出方法にちょっと難があるんじゃないかなあ・・・

「十号船室の問題」(ピーター・ラヴゼイ)
 タイトルを見て、「十三号独房の問題」って作品名を
 思い浮かべた人は、かなり年季の入ったミステリファンだろう。
 (私もここまでは思いついた。)
 さらにジャック・フットレルって作者名とか
 "思考機械" なんて単語まで思い起こした人は
 かなりのミステリマニアだろう。
 (私はそこまでは出てこなかった。)
 実は、ジャック・フットレル本人もこの作品の登場人物の一人。
 さらに「船室」と聞いて「ああ、ひょっとして」と思った人は
 もう "ミステリの鬼" ですなあ。
 (分からない人はwikiを見よう)。
 主人公のジェレミーは、豪華客船で旅をしている。
 彼の目的は、妻の浮気相手を殺すこと。
 しかし、犯行の機会を窺う内に、ジェレミーは
 乗り合わせたフットレル、そして元編集者ステッドと親しくなって・・・
 ミステリ的には、ちょいとひねりがきいた小品なんだが
 フットレルのエピソードを絡めたところがうまい。

「犬のゲーム」(レジナルド・ヒル)
 警官・ピーターは、犬好きが集まるパブへ参加するようになった。
 飼い主たちは、面白半分に語り合っていた。
 「家が火事になって、人間一人か犬一匹しか助けられないとしたら
  どうする? 誰だったら助ける?」
 しかし、その飼い主の一人の家が火事になり、
 同居していた彼の義母が焼死する。
 状況に疑問を覚えたピーターは独自に捜査を始めるが・・・
 オチはなんとなく予想がついたけど、
 どうにもさっぱりしない終わり方だなあ。


"私基準のミステリ" にあてはまらず、従って評価に困るのが8編。
なんと半分も・・・

「決定的なひとひねり」(A・H・Z・カー)
 人里離れた森の中に住む主人公夫妻。
 雑誌の取材で、二人が相続した高価な家具が紹介されて1年後、
 ヘックリンと名乗る男が訪れ、家具を購入したいと申し出るが・・・
 サスペンスだけどミステリかなあ・・・

「アリバイさがし」(シャーロット・アームストロング)
 老嬢メリー・ピーコックは、ある日突然拳銃強盗の容疑をかけられる。
 犯行時刻のアリバイを証明すべく、
 刑事・ミラーと共に、あちこちを訪ね歩くが・・・
 これもミステリかなあ。肝心の強盗事件も解決しないし。

「終列車」(フレドリック・ブラウン)
 酒場で一人グラスを傾けるヘイグ。
 彼の頭の中ではいつも、終列車に乗ってこの町を離れ、
 新たな生活を踏み出すことだけが渦巻いている。
 その夜、意を決した彼は駅へと向かうが・・・
 いわゆる"奇妙な味"? ちょっぴりホラー?

「憎悪の殺人」(パトリシア・ハイスミス)
 郵便局で働くアーロンは、同僚や上司の惨殺を繰り返している。
 ただし、日記の中で。しかし日を追って妄想は暴走を始めて・・・
 いわゆるサイコサスペンスか。

「子守り」(ルース・レンデル)
 画廊を経営するアイヴィンの息子・ダニエルは言葉の発達が遅く、
 3歳になる今も文章を話すことができず、
 仕事で忙しく留守がちの母・シャーロットよりも、
 子守りのネリに懐いていた。
 やがてアイヴィンはネリと不倫関係になり、
 ダニエルの悪戯を装ってシャーロットの殺害に成功するが・・・
 ミステリというよりはサスペンスですかねぇ・・・

「リノで途中下車」(ジャック・フィニィ)
 懐が寂しいベンとローズの夫婦は、
 職を探してサンフランシスコに向かっている途中。
 カジノの町・リノで一泊することになった。
 疲れて眠ってしまったローズを残したまま、
 ベンはなけなしの財産を持ってカジノへ行ってしまう・・・
 読んでて、こいつは一体どうなることかとハラハラしたけど。
 これ、ミステリですかね?

「肝臓色の猫はいりませんか」(ジェラルド・カーシュ)
 語り手の "私" が、昔通ったカフェで出会った男の話。
 ある日、その男の家に一匹の "肝臓色の猫" が現れて・・・
 ミステリではありません。ホラーです。

「フルーツセラー」(ジョイス・キャロル・オーツ)
 兄からの電話で、病死した父の家を訪れたシャノン。
 父が残した箱の中には、13年前に誘拐され、
 ついに発見されなかった少女の新聞記事が。
 そして、長年にわたって開けられたことのない
 地下のフルーツセラーの鍵がいっしょに添えられていた。
 いわゆるリドルストーリーですかね?
 これもさっぱりしないラスト。


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mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2015-10-31 01:19) 

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