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英国パラソル綺譚 アレクシア女史、埃及で木乃伊と踊る [読書・ファンタジー]

アレクシア女史、埃及(エジプト)で木乃伊(ミイラ)と踊る (英国パラソル奇譚)

アレクシア女史、埃及(エジプト)で木乃伊(ミイラ)と踊る (英国パラソル奇譚)

  • 作者: ゲイル・キャリガー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2012/09/20
  • メディア: 文庫



評価:★★★★

吸血鬼や人狼やゴーストなどの<異界族>と、人間とが共存している
パラレルワールドの19世紀イギリスを舞台に、
<異界族>の力を封じることができる
<反異界族>の女性・アレクシアの冒険を描いたシリーズの最終作。


前作ラストで誕生したアレクシアの娘・プルーデンスも
2歳へと成長し、お転婆盛りになった。
何よりお風呂が大嫌いで、入浴させるたびにアレクシアも大わらわ。

そんなとき、エジプトに住む世界最高齢の吸血鬼女王から
アレクシアのもとへ招待状が届く。

エジプトといえば、第2巻で発生した謎の現象の
(異界族が突然その力を失ってしまうというやつ)
原因をもたらした地でもある。

折しも、その現象の原因解明のためにエジプトへ送り込まれた
キングエア人狼団のベータ(副官)が、イギリスに帰国早々
何者かに殺害されるという事件が起こる。

BUR捜査官であるマコン卿は、アレクシアと共に
エジプトへ趣いてしまうため、人狼殺害事件は
マコン卿のベータであるライオール教授と
新米(?)人狼のビフィに託される。

親友のアイヴィと、彼女が率いる劇団とともに、
一家揃ってエジプトへ向かうアレクシアだったが・・・


いままで、アレクシアの父・アレッサンドロ(故人)については。
シリーズのあちこちで言及されてきたが、
第3巻でローマのテンプル騎士団との関係が明らかになり、
本書でも、彼がエジプトで活動していた目的が物語の鍵となる。

主要登場人物の中には、1~4巻までの物語の中で
意外な運命の変転を迎えた者もいるが、
最終巻での展開を読んでいると
「なるほど、あのエピソードにはこんな意味があったか」とか
「そうか、ここにつながるのか」とか
いろいろ感心させられる。

作者はかなり早い時期から最終巻の内容を決めていたのだろう。

もちろん本書でも、とびきり意外なキャラが
とびきり意外な運命を辿るので乞うご期待だ。

シリーズの中でばらまかれてきた伏線を回収しつつ、
さまざまなキャラの着地点が明らかになり、
まさに大団円といえる結末を迎える。

パラレルワールドの英国を舞台に描かれてきた
貴婦人・アレクシアの冒険譚。
5巻で終わるのは、はじめから分かっていたのだけど、
いざ終わってしまうと、意外なくらいの寂しさを感じる。
それくらいヒロインが強烈かつ愛すべきキャラだったんだねえ。
もちろん脇役陣も超個性派が揃っていたけど。

でも、よく考えてみると回収し切れてない伏線もあると思うし
明かされてない設定もけっこうありそうだ。


作者はこの世界を舞台にした別のシリーズを発表している。
本シリーズより25年ほど過去を舞台に、
14歳の少女を主人公にしたもので、全4巻のうち3巻めまでが
ハヤカワ文庫から邦訳・出版されている。

本シリーズの登場人物のうち何人かはこのシリーズにも登場していて、
若き日の姿を見せてくれているらしい。
これも面白そうなので全4巻揃ったらまとめて読もうと思っている。

さらには、成長したプルーデンスを主役にしたシリーズも
執筆されるらしいので、本シリーズで積み残された(?)謎についても
いつか語られる日が来るのかも知れない。
その中でまたアレクシア女史に再会できることを期待しよう。


最後にもう一つだけ。

実は、アレクシアとマコン卿が結婚した頃から
私には気になっていたことがある。それは二人の寿命の差。

ほとんど不老不死の人狼であるマコン卿と
反異界族とはいえ、普通の人間なみの寿命しか持っていないアレクシア。

アレクシア本人は、自分がマコン卿より先に老いて死ぬのは
当然の運命として受け入れているように見えるのだけど
読者としてはやはり気になる。

しかし抜かりのない作者は、この夫婦に対して
ちょっと感動的な結末を用意している。
このあたりも読みどころのひとつだろう。


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mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2015-10-23 00:29) 

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