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大きな森の小さな密室 [読書・ミステリ]

大きな森の小さな密室 (創元推理文庫)

大きな森の小さな密室 (創元推理文庫)

  • 作者: 小林 泰三
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2011/10/21
  • メディア: 文庫



評価:★★★

この人、ホラーとSFがメインの人だと思ってたんだけど
ミステリもけっこう書いてたんだね。
親切(?)なことに、各タイトルの後ろに "どんなミステリか" が
ご丁寧にも提示してある。

「大きな森の小さな密室 (犯人あて)」
 タイトル通り、森の中にある高利貸し・蓮井の別荘に、
 金を借りた人間が集まったところで、当の蓮井が殺され、
 遺体は密室状況の中で発見される。
 この短編集を最後まで読むと分かるけど、まずは巻頭で
 とてもオーソドックスな作品を提示して、
 「私はこういうちゃんとしたミステリも書けますよ」
 ってことをまずは示した、ってことなんですね。
 なんでかって言うと、後に行くほどワケノワカラナイ
 トンデモ系ミステリになっていくから。

「氷橋 (倒叙ミステリ)」
 重役の娘を妻に持つ出版社の編集者・乙田は、
 昇進に伴い、邪魔になった愛人・里香美を殺害することを決意する。
 首尾良く犯行は成功するのだが、西條という弁護士が現れ、
 乙田につきまといながらネチネチと真相に迫ってくる・・・
 いやあ、決め手に○○○○○○○○を持ち出すとは恐れ入ったね。
 さすが理系作家。

「自らの伝言 (安楽椅子探偵)」
 コンビニ店員・早苗のもとに友人・菜穂子がやってきた。
 恋人の猛士と連絡がつかなくなったという。
 そして菜穂子が猛士の勤務先に向かったところ、
 彼は死体で発見される・・・
 コンビニ店内での二人の会話を聞いていた早苗の同僚の
 新藤礼都(しんどう・れつ)は、ズバズバと真相を暴いていく。
 いやあ、礼都さんのキャラが濃い。
 舌鋒鋭く、言いたいことを歯に衣着せず言い放つのが爽快だ。
 決め台詞は「私、馬鹿には我慢できないの!」
 いやあ、普段から言いたくてもなかなか言えない台詞だよねぇ。
 あ、いかん。
 私だって、彼女の前にいたらこう言われてしまうよなぁ。

「更新世の殺人 (バカミス)」
 発掘現場の150万年前の地層から、女の死体が発見される。
 それも、化石でも何でもなく、
 つい数時間前に死んだとしか思えないような "新鮮" な死体が(笑)。
 それに対して周囲の人間がみんな揃って、
 「150万年前に死んだ人間がこんな状態で発見されるはずがない」
 ってとこに頭を捻ってるのが "バカミス" なのかと思ってたら、
 ラストにそれを上回る "大バカ" が炸裂。
 思わず「そこかい!」って叫んでしまいそうになったよ。

「正直者の逆説 (??ミステリ)」
 冒頭に[読者へのヒント]と題して
 「作品中、犯人以外の人物は故意に嘘をつくことはない」
 って一文があるんだが、これがくせ者。
 終盤に至って全員による推理合戦があるのだが
 冒頭のこの[ヒント]が犯人指摘に一役買う。
 ただ、最後の "質問" は難しいというかややこしいというか
 バカバカしいというか・・・ついていけませんでした。
 「囚人のジレンマ」とかが苦手な人は敬遠した方がいいかも。

「遺体の代弁者 (SFミステリ)」
 脳を改造されてしまった男・田村二吉。
 なんと、頭が開閉式にされてしまい、死んだ人間の脳を
 スライスして挟むと、死者の記憶を追体験できるという
 なんともはや、ぶっ飛んでる設定。
 というわけで、殺人事件の被害者の脳を使って
 記憶を再現し、犯人を突き止めようとするのだが・・・
 「更新世-」より、こっちのほうがよっぽどバカミスだよなあ。

「路上に放置されたパン屑の研究 (日常の謎)」
 町の路上に、点々と置かれたパン屑。
 それも、数日おきに同じところに置かれる。
 誰が、何のためにまいているのか。
 二人の人間の会話形式で進むのだけど、
 たぶん、読んでるうちに皆さんオチが分かってしまうと思うよ。
 ミステリと言うよりはコントだね。

最後に余計なことを一言。

本書のタイトルってやっぱり河合奈保子が元ネタですか?


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mojo

コースケさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2015-02-20 20:20) 

mojo

makimakiさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2015-02-21 20:16) 

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