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からくり探偵 百栗柿三郎 [読書・ミステリ]

からくり探偵・百栗柿三郎 (実業之日本社文庫)

からくり探偵・百栗柿三郎 (実業之日本社文庫)

  • 作者: 伽古屋 圭市
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2015/05/15

評価:★★★☆

発明家にして名探偵の百栗柿三郎が活躍するシリーズ、第1作。

「序章」で描かれるのは、大正12年(1923年)の
関東大震災によって灰燼に帰した浅草の街。
そして倒壊してしまった自宅『百栗庵』(ももくりあん)の前で
立ち尽くす主人公・百栗柿三郎の姿。

そこから9年前の大正3年へと時代が戻り、
彼が遭遇した4つの探偵譚が語られていく。

「第一話 人造人間(ホムンクルス)の殺意」
科学者・真壁達巳博士の絞殺死体が発見される。
彼の自宅兼研究所にいた3人の助手の証言によると、
現場である研究室に出入りした者はいないという。
しかも、研究室に安置してあったホムンクルスの標本が消え、
裏庭の藪から発見される。その手には凶器と覚しき紐が握られていた。
”ホムンクルス” とは錬金術師がつくり出したといわれる人造人間。
真壁家で働いていた女中・千代は、殺人の容疑をかけられそうになり、
柿三郎のもとに駆け込んできたのだが・・・

雇い主を失った千代は、この事件がきっかけで
柿三郎の助手兼女中を務めることになる。

「第二話 あるべき死体」
隅田川のほとりの草むらで、男性のバラバラ死体が見つかる。
被害者は化粧品会社社長・秋儂富美男(あきの・ふみお)。
遺体の第一発見者だったのは千代。彼女のもとへ
秋儂の執事・坂巻が訪れ、柿三郎は事件の捜査を依頼される。
やがて、第二のバラバラ死体が発見される・・・
犯人が遺体をバラバラにする理由は古今いろんな作品で描かれてきたが
今作は意外に現代的な要素を含んでいる。もっとも、
およそ100年前のこの時代だからこそ成立する話、とも言えるが。

「第三話 揺れる陽炎」
室町時代の伝説の幻術師・果心居士(かしんこじ)の末裔と称する
”一斎(いっさい)居士” なる者が開いた道場が人気を集めていた。
要するに怪しげな新興宗教だ。
百栗庵を訪れた婦人・正子は、道場での共同生活に参加するために
家を出ていったまま還ってこない息子・寅丸(とらまる)を
連れ戻してほしい、と柿三郎に依頼する。
千代は、体験入門者を偽装して道場に入りこむのだが・・・

「第四話 惨劇に消えた少女」
質屋を営む音塚夫婦の家に賊が侵入した。
その夜、一人娘の玉緒(たまお)は友人・八重の家に滞在していたが、
手に入れた珍しい白粉を見せようと八重と二人で音塚家へ戻り、
そこで両親の死体を発見してしまう。
驚いた二人は現場から逃げ出すが、途中ではぐれてしまい、
そのまま玉緒も行方不明になってしまった。
百栗庵を訪れた梅松という男は、「音塚夫妻の遠縁の者から頼まれた」
と言って、玉緒の探索を依頼する。
柿三郎たちは、知人から借りてきた犬・トビィの力を借りて
玉緒探索に乗り出すのだが・・・

柿三郎の本業は発明家であり、作中でもいろんな機械を自作している。
当然ながら科学知識も豊富らしく、指紋採取や警察犬などの
操作技術についても一通りに知識はあるようだ。

とは言っても、作中の描写には首を捻る部分がある。
「科学的にそれはありえんだろ?」とか
「この時代の技術水準じゃ無理じゃん?」とか引っかかるのだが
実はそれも伏線になっていて、最後まで読むと綺麗に氷解してしまう。
特に○○○○については、「やられた~」って思ったよ。

柿三郎が事件の捜査に首を突っ込めるのは、
警視庁に兄が勤めているかららしいし、
どう見ても金にならない発明三昧の生活を送れるのも、
どうやら金持ちの後援者がいるかららしい。

 まあ、普通に考えたら名前からして三男坊なので
 長兄が資産家で、次兄が警視庁勤務、というところなのだろう。

本書には続編がもう一冊刊行されている。
そちらも読了済みなので近々記事に書く予定。


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