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アンデッドガール・マーダーファルス3 [読書・ミステリ]

アンデッドガール・マーダーファルス 3 (講談社タイガ)

アンデッドガール・マーダーファルス 3 (講談社タイガ)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2021/04/15

評価:★★★★

吸血鬼・人造人間・人狼などの怪物や日本の妖怪たちが
公然と(一部は世間から隠れて)跋扈し、それに加えて、
多くの名探偵たちや怪盗、犯罪者たちも実在しているという
テーマパークみたいなパラレルワールドが舞台。

時は19世紀末。
産業革命から100年、科学文明を得た人類は次第に勢力範囲を拡大し
ヨーロッパ各地に潜む怪物たちを排除しつつあったが、
それでも ”人外の存在” が関わる事件は起こっていた。

そんな ”怪物事件” を専門に請け負う探偵・輪堂鴉夜(りんどう・あや)、
彼女の助手兼下僕の真打津軽(しんうち・つがる)、
そして鴉夜に仕えるメイドの馳井静句(はせい・しずく)の
3人組が、異形の怪物や犯罪者に立ち向かうシリーズ、第3作。

前作のラストで、モリアーティ教授が率いる
怪物軍団《夜宴》(バンケット)の次の目標が ”人狼” と判明、
鴉夜たちもドイツへと向かう。

山岳地帯の中にあって、人口も100に満たない村・ホイレンドルフ。
そこでは、1年前から連続殺人事件が起こっていた。
被害者はいずれも10代前半の少女たち。
遺体は手足の骨が折られ胸は裂かれるなど凄まじい損壊を受けていて
住人たちは人狼の仕業とみていた。

鴉夜たちがホイレンドルフに到着した時も、
漁師の娘・ルイーゼが何者かに掠われたばかり。

ホイレンドルフ村の外れには断崖があり、
その下は霧深い巨大な窪地となっていて、
そこには人狼の住む村があるとの伝説があった。

調査を始めた鴉夜たちは、崖下の窪地には伝説通りに
人狼の村・ヴォルフィンヘーレがあることを発見するが、
そちらの村でも同様に、少女の連続殺人が起こっていたことを知る・・・

人狼は人・狼・獣人の3形態をとることができるが、
それぞれの形態での特徴や身体能力、弱点などの設定が
作中でしっかり描かれている。
特殊状況ミステリでは、このあたりがとても大事なのだけど
作者にぬかりはなく、鴉夜の推理もそれに則って展開される。

前作はミステリというよりはホラー・アクションという趣だった。
本作でも 怪物vs超人 の戦闘シーンは随所にあるけれど
それを超えてメインとなるのは、ミステリ要素。

険しい崖に隔てられた2つの村で起こる、極めて類似した連続殺人。
そして明かされる意外な真相。
舞台も展開も、まさに本格ミステリだ。

怪物軍団《夜宴》からは、前作に引き続き女吸血鬼カーミラが登場、
静句嬢と因縁の再戦を繰り広げる。さらに
人造人間ヴィクター、謎の ”魔術師”・アレイスターも参戦する。

前作から登場したロイズ諮問警備部からは、
新たにアリス・ラピッドショット、カイル・チェーンテイルの
2名の凄腕エージェントがやってきて、
鴉夜たち vs 人狼 vs 《夜宴》 の戦いに乱入、状況を混迷させていく。

文庫で470ページもあるのは、
これら ”濃いキャラの皆さん” それぞれに見せ場を作り、
なおかつ、ガチな本格ミステリとして完成させるためだろう。

いやはや、ものすごい大作だと思うのだけど、
ここまでの作品を書き上げてしまったら、
次作に向けてのハードルが上がってしまうんじゃないかなぁ。
ちょっと心配になってしまうのでした。


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