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ネメシスIII [読書・ミステリ]

ネメシス3 (講談社タイガ)

ネメシス3 (講談社タイガ)

  • 作者: 周木 律
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2021/04/15
  • メディア: 文庫

評価:★★★

TVドラマ「ネメシス」をベースにした小説シリーズ、第3巻。

横浜にある探偵事務所ネメシスを舞台に
社長の栗田一秋、新人探偵の風間尚希、
そして助手の美神アンナの3人が事件に立ち向かう。

探偵役を務めるのは、天才的なひらめきをもつアンナ。
ポンコツな風間を陰からフォローして事件解決へ導く役回り。

この第3巻に収録された2話は、いずれもAIがテーマになっている。

「第一話 愛という事件のもとに」

TVドラマ版第4話がベース。

名門校・私立デカルト女子学院の校舎の屋上から、教師が転落死した。
死んだのは、イケメンで生徒からも人気のあった美術教師・黒田秀臣。

警察と学校は自殺で処理しようとしていたが、
それに反発したスクールカウンセラー・雪村陽子が
ネメシスに調査を依頼してきた。

アンナは潜入捜査のため、編入試験を受けて
デカルト女子学院の校舎の生徒となる。

 ちなみに、この学校は東大合格レベルの生徒が集まる超進学校らしいが
 アンナは編入試験を余裕でクリアしてしまう。

一方、風間は知り合いの刑事の伝手で
学園内に入りこむことに成功するが
教頭の南禅寺光江から「1日だけ」と条件を付けられてしまう。

転落時は昼休みで、容疑者となるのはその時間帯にアリバイのない者。
しかしその時校内にいた教職員・生徒は総勢152名もおり、
とても1日で調べきることはできない。

そこで風間はAI研究者・姫川烝位(じょうい)に応援を仰ぐ。
姫川は自らが開発したアプリを全員のスマホにインストールさせ、
そこから得た情報をAIで解析、容疑者を4人に絞り込む。
該当したのは生徒3名、そしてカウンセラーの雪村だった・・・

もちろんこの中に犯人がいてすんなり解決、とはならない。
この後もふたひねりくらいあって、
AIを超えたアンナの推理が真犯人を導く。

「第二話 名探偵初めての敗北」

中村勇気三冠と山神海彦七段によるプロ将棋のタイトル・豪将戦は
全五局のうち四局が終了し、二勝二敗の五分。

ネメシスに現れたのは豪将戦を主催する新聞社の広報部長・塩谷。
依頼内容は、中村三冠のカンニング疑惑の調査。
彼は以前、対局中にスマホを持ち込んでいたことがあり、
反則負けとなった過去があった。

 プロをしのぐ強さのAIも開発され、
 それが手軽なIT機器でも動くようになってきた。
 つまり手元にスマホがあれば、
 プロ棋士にさえ勝てる時代になってしまったということだ。

風間とアンナは、中村三冠が参加する将棋協会のイベントに同行して
様子を探るが、不正行為の証拠はつかめない。

そして迎えた豪将戦最終局の日。
会場となる横浜の旅館で午前十時に始まった対局は
12時間の攻防の末に中村三冠が勝利するが、その直後、
自室に引き上げていた山神七段が刺殺死体となって発見される。
しかもその部屋は密室状態となっていた・・・

密室トリック自体は過去にも作例があるし、
ミステリに詳しい人なら見当もついてしまうだろうけど、
本作のメインはそこではないだろう。

なぜ密室にしなければならなかったか、
そこに至るまでの心情の動きがこの作品の読みどころ。

私は将棋については駒の動かし方くらいしか知らないし、
プロ棋士の世界の厳しさも、ニュースや活字などを通して
間接的にしか知らない。

そんな私だが、この作品は充分に楽しめたよ。


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