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恋路ヶ島サービスエリアとその夜の獣たち [読書・ミステリ]


恋路ヶ島サービスエリアとその夜の獣たち (講談社文庫)

恋路ヶ島サービスエリアとその夜の獣たち (講談社文庫)

  • 作者: 森 晶麿
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/11/15
  • メディア: 文庫
評価:★★★

恋路ヶ島は、淡路島の西隣に位置する小さな島。
ここにある高速道路のサービスエリア(SA)で起こった
一夜の大騒動の顛末が描かれる。

恋路ヶ島SAの売り子になると1年以内に恋人からプロポーズされるという。
ヒロインの理代子もまたその伝説の通り、
同棲中の恋人・和彦から結婚を申し込まれる。
しかしある日、彼女は和彦の浮気現場に遭遇してしまう。

アパートを飛び出した理代子は、そのままSAに出勤する。
今日のシフトは午前0時から午前9時まで。
混乱する心を抑えきれずにいた彼女に声をかけたのは
1か月前に入った新入り清掃士のマキノだった。

一方、夜のSAには様々な客が訪れる。
動物のにおいをまとわせた迷彩服の男、
殺してしまった女の死体を運んでいる兄弟、
浮気相手と密会中の人気テレビ司会者・・・
そんな中、理代子とマキノは男子トイレの個室で血痕を発見する。
さらにそこには何かを引きずったような跡まで。
これは何を意味するのか?

物語は理代子&マキノの二人を含む、
登場人物たちそれぞれに視点を切り替えながら進んでいく。
そして次第に、一見して何の関連もなさそうな彼らの間に
実は意外なつながりがあることがわかってくる。

途中までは、このSA内でいったい何が起こっているのか
よく分からないまま事態は推移していくのだが
実はいちばん謎なのはマキノの正体だろう。
章の合間にときおり「マキノ」と題された断章が挿入されているんだが、
これがまた思わせぶりな内容である。

タイトルに「獣たち」ってあるんだが、最初は
わがまま一杯で、ある意味 ”凶暴” な登場人物たちを
”獣” に例えてるんだろうと思ってた。
でもストーリーが進むうちにSAの中を
ホントの ”獣たち(!)” が跋扈し始めるのはちょっと驚き。

そしてラストでは、序盤からは想像もできないような
大騒動となっていく。

読み終わってまず思ったことは
「よくまあこんな話を考えたなあ」ってこと。
物語の構成がとてもうまくできてるのだろう。

終わってみれば ”一夜の夢” のようなお話なんだが、
この怒濤のような体験が理代子を変えていく。
このあたりの読後感は悪くない


最後にちょっとお願いを。
できれば、登場人物一覧をつけてほしいなあ。
どうもトシを取ると、キャラの名前とか素性とか属性とかを
覚えるのが苦手になってきたみたいで
場面ごとに出てくる人物が入れ替わる本作は、
流して読んでると迷子になってしまいそうなので。
(単に私がグウタラなだけなだけなんだが)

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