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カーリーⅢ 孵化する恋と帝国の終焉 [読書・その他]


カーリー <3.孵化する恋と帝国の終焉> (講談社文庫)

カーリー <3.孵化する恋と帝国の終焉> (講談社文庫)

  • 作者: 高殿 円
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/10/15
  • メディア: 文庫
評価:★★★

1939年。第二次世界大戦勃発の直前に
父の赴任先であるインドへ渡り、花嫁学校である
オルガ女学院へ転入した14歳の少女・シャーロット。

当時のインドは英国の統治のもと、
多くの「藩王国」と呼ばれる小国が存在していた。
彼女の転校は、その藩王国の一つで英国大使を務めていた
父の招きではあったが、シャーロットには
実母の情報を得たいとの想いもあった。
母・ミリセントはシャーロットを産んだ後、
愛人を追ってインドに渡り、そこで死んだと聞かされていたから。

シリーズ既刊の「Ⅰ」「Ⅱ」では、
シャーロットがオルガ女学院で過ごした日々を描いてきた。

関西なまりの英語(?)を駆使するミチル、
マッドサイエンティストへの道をまっしぐら(笑)のヘンリエッタと
心の許せる友人もできる。
前巻で登場したプリンセス・パティ、そして彼女を通して、
”学園一のお嬢様” ヴェロニカとも関係改善が進む。

そして何より、一番の親友となった
イギリスとインドのハーフである美少女・カーリーガード・・・

ガンジーたちによる独立運動、それを押さえようとするイギリス、
そして両者の間で漁夫の利を狙う藩王国。さらには
英仏独露の列強諸国によるスパイが暗躍する1940年のインド。

シャーロットたちもいくつかの陰謀に巻き込まれ、
何とかをそれを切り抜けてきたが、オルガ女学院の閉鎖が決まり、
生徒たちは散り散りになってしまう・・・

そして本書「Ⅲ」は、前作から4年後の1944年の物語となる。

インドからスイスへ移り、勉学に励んだシャーロットは
その後イギリスへ帰国、19歳となった現在は
オックスフォード大学の1年生となっていた。おお、才媛だねえ。

しかし彼女の中には、インドへ渡って
カーリーとの再会を願う気持ちが未だ強く残っていた。

そんなとき、子爵家主催のホームパーティーに潜り込んだシャーロットは
(いちおう、彼女だって政府高官の娘ではあるのだ)
カブールタラ藩王国の第四王子ナリンダー=シンと知り合う。
インドとカーリーのことを熱く語るシャーロットに、王子は提案する。
「僕と婚約すれば、インドへ行けるよ」

かくして、王子と ”偽装婚約” したシャーロットは、
周囲の混乱をよそに、イギリスを出国していく・・・

物語はこの後インドへ舞台を移し、
シャーロットはインド王族の暮らしぶりに驚いたり、
イギリス諜報部のスパイだったエセルバードと再会したり。
そしてクライマックスの ”婚約披露の宴” へと進んでいく。
もちろん、女学院時代の友人たちも招待して・・・


前2作の登場キャラたちも4年の歳月を経て様々に変わっている。

まずは冒頭で明かされるエセルバードの ”正体” で
強烈な一発を食らってしまう。
”偽装婚約” なぁんてライトノベル風に展開する本編の前に
しれっとこんなネタを放り込んでくるのは流石である。
エスピオナージものにさほど詳しくない私でも、
思わずニヤリとさせられたよ。

女学院の面々もそれぞれの場所で人生を歩んでる。
人気モデルとなって世界を巡っているミチル、
パティはインド最大の藩王国ハイデラバードへ嫁ぎ、
上級生だったベリンダもまたインド有数のタタ財閥へ嫁いでいる。
”リケジョ” のヘンリエッタと ”お嬢様” のヴェロニカは
アメリカに渡っていて、特にヘンリエッタの境遇は、
1944年という時代を考えれば「さもありなん」。

もちろん肝心のカーリーとの再会も果たされるのだが
その登場の仕方が、まあ凝ってるというかミステリタッチというか。
このへんは読んでのお楽しみだろう。


てっきりこの「Ⅲ」で完結かと思ってたのだけど、まだ続きそうだ。
ここまで風呂敷を広げてしまうと、なかなか畳むのが大変なのだろう。

ラスト近く、意外な事実が明かされてびっくり。
これはかなり予想外の内容で、読んでいて思わず
「そっちかよ!」って心の中で叫んでしまった(笑)。

続巻「Ⅳ」はまだ発表されていないけど、
どうやら本書の3年後、1947年の物語になりそうだ。
22歳になったシャーロットの運命や如何に。

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