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紐結びの魔道師 [読書・ファンタジー]


紐結びの魔道師 (創元推理文庫)

紐結びの魔道師 (創元推理文庫)

  • 作者: 乾石 智子
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/11/19
  • メディア: 文庫
評価:★★★

異世界〈オーリエラント〉を舞台にしたこのファンタジー・シリーズは
毎回、登場する土地やキャラクター、そして時代もまちまち。

本書は、紐に様々な結び目を施すことで発動する
〈テイクオク魔法〉を操る魔道師・リクエンシスの活躍を綴った短編集。
ちなみに、ほぼ時系列に沿って並べられているようだ。

 一部、順番が前後するものもあるみたいだが、
 もっとも魔道士は常人を遙かに超える寿命を持つみたいなので
 あんまり関係ないかな(笑)。


「紐結びの魔道師」
湖畔の街・サンサンディアにやってきた貴石占術師カッシ。
ここに住むリクエンシスに弟子にしてもらうために来たという。
しかしそれは口実で、実は魔道の勝負を挑みに来たのだった・・・

「冬の孤島」
エズキウムの都から左遷され、ココツコ島に住まう氷と炎の化け物を
退治せよとの命令を受けて、途方に暮れていた魔道師オルスル。
リクエンシスは彼に助力を申し出る(というか肩代わりする)のだが・・・

「形見」
文庫でわずか6ページの掌編。
リクエンシスが見つけた死体は、
彼にとって宿敵の ”銀戦士” の一人だった・・・

「水分け」
リクエンシスの相棒にして紐魔道の記録係のリコ。
しかし既に齢80を超え、死の床にあった。
なんとか彼の寿命を引き延ばそうと奔走するリクエンシス。

「子孫」
文庫でわずか10ページの掌編。
踊り子のニーナと旅を続けるリクエンシス。
嵐を避けて立ち寄った村の名を聞いてニーナは驚く・・・

「魔道師の憂鬱」
齢300を超え、いささか虚無感に取り憑かれたリクエンシス。
リコの残した ”紐魔道の書き付け” をきれいに製本してもらうため
ニーナと共にパドゥキアへ向けて出発するが・・・


魔道師ってどちらかというと頭脳労働系の職種(笑)で、
気難しくて偏屈でやたら細かそうなイメージがあるんだけど
本書に登場する紐魔道師リクエンシスはおそよ真逆。

何事にも楽観的でおおらか、情にも厚い。
それでいて剣をとっても一流の腕前。

特筆すべきはそのとぼけた言動。
多くの紐魔道を身につけているにもかかわらず、
どの結び方でどの魔道が発動するのかを覚えていないという(おいおい)。
だから、最初のうちは「結んでみないと分からない」とか
「何度もやり直す」とかの事態が頻発する。

書記係のリコを得てからは、
使用した ”結び方” をいちいち記録してもらうようになるのだが。

本書の最後の時点で300歳を超えているんだが、外見は40歳そこそこ。
魔道師としても戦士としても高いスペックを誇るのに、
行動面でいささか ”ポンコツ” なところが好感を抱かせる。

作者の思い入れがあるのか、読者から人気があるのかわからないが
(たぶん両方だろう)彼を主役とした長編が刊行中。
なんと三部作というボリュームになるらしい。
(この短編集の発行もそれに時期を合わせたんだろう)

第一巻『赤銅の魔女』と第二巻『白銀の巫女』は既刊で
第三巻『蒼炎の戦士』は2019年1月刊とのこと。

うーん、全部単行本なので、文庫になるのはかなり先になりそうですねぇ。
まあ、楽しみに待ちましょう。


おっと、第二巻のタイトルを見て
某アニメでパイプオルガンを弾いている人を
思い浮かべてしまったのはナイショだ(笑)。

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