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オチケン探偵の事件簿 [読書・ミステリ]


オチケン探偵の事件簿 (PHP文芸文庫)

オチケン探偵の事件簿 (PHP文芸文庫)

  • 作者: 大倉 崇裕
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2015/09/10
  • メディア: 文庫
評価:★★★

落語に興味がないのに無理矢理オチケン(落語研究会)に
入部させられてしまった学同院大学の学生・越智健一(おち・けんいち)。
彼とオチケンの部員たちが出くわす事件を描いた連作ミステリ。

レギュラーメンバーは噺家・花道家春蔵(はなみちや・はるぞう)の
一番弟子でもあるオチケン部長・岸弥一郎と、
飄々としていて正体不明な中村誠一の二人。
ちなみに越智を含めて部員はこの3人のみである。

本作はシリーズ第3弾、中編2編を収録している。

「幻の男」
学同院大学落語研究会に次ぐ歴史を持つ千条学園落語研究部。
同部は毎年夏に落語の発表会「千条寄席」を開いていた。
岸はそのイベントに呼ばれ、ゲストとして出演することになる。
もう一人のゲストは真打ち・鈴の屋池海(すずのや・いけうみ)師匠。
岸の噺の後、一人挟んでトリが池海という順番。
千条学園落語研究部は全日本学生落語選手権で三連覇中という強豪。
しかし、岸の存在が四連覇を阻むかも知れない。
何らかの陰謀の気配を感じながらも当日を迎えた岸と越智。
本番を迎え、高座に上がった岸は『不動坊』を演じ始めるが、
聞いていた越智は、本来の噺と細部が異なることに気づく。
さらに内容は逸脱していき、後半は『たらちね』へと変化してしまう。
文庫で170ページほどの中編なんだが、この岸の行動の謎は
なんと開始40ページほどで明かされてしまう。
そしてそれは、千条学園落語研究部に隠された秘密が
明かされるきっかけへとつながっていく。

「高田馬場」
学同院大学に1つしかないプールの使用を巡って、
水泳部と水球部の間には確執があった。
そして5日前、水泳部の部室で火災報知器が鳴った。
室内には部室等での使用が禁止されているコンロがあり、
火がつけっぱなしで上の鍋が煮立っていた。
しかしその時間には部員は誰もおらず、何者かの工作かと思われた。
水泳部部長・鴻上は落研に対して事件の調査を依頼してきた。
その翌日、大学のプールに大量の古新聞が投げ込まれていた。
水球部部長・霧ヶ峰をはじめ部員たちは水泳部の仕業だといきり立つ。
単なる二つの部活動の抗争劇かと思いきや、
ストーリーが進むにつれて、大学改革の名の下に
邪魔な団体の淘汰を狙う新学長の存在が浮かび上がってくる。
そしてラストでは、すべての騒ぎの糸を引いていた
意外な人物の存在が明かされる。

基本的には一話完結なのだけど、サザエさん時空(笑)ではないので
作品内では巻を追うごとに時間が経過しており、
どの巻から読み始めても大丈夫、とはちょっと言いにくい。

前巻から繋がっている部分(特に中村が関係するところ)もあるし、
新学長と落研の関わり(対決?)は次巻以降に持ち越されるし。
もしこれから読もうという人がいるなら、
できれば第1巻から順番に読むことをオススメする。

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