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HEARTBEAT [読書・ミステリ]


HEARTBEAT (創元推理文庫)

HEARTBEAT (創元推理文庫)

  • 作者: 小路 幸也
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2012/08/26
  • メディア: 文庫
評価:★★

本作は、二つのストーリーが交互に語られながら進行していく。

一つは28歳の ”僕” が語り手となるパート。

10年前、高校生だった ”僕” は
クラスの委員長を務め、医師を目指している優等生だった。

そして同級生の中には、いつ退学になっても
おかしくないような不良少女・ヤオがいた。

そんな二人を結びつけたのは高校の修学旅行だった。
旅行班から離れて一人で行動していた ”僕” は、
こちらも一人になっていたヤオと出くわす。

そして二人は、見学していた寺の裏山で
1億円の現金(!)を発見してしまう。
密かにそれを持ち出し、隠匿に成功した二人は、
その日から大きな秘密を共有する仲になった。

そして卒業式の日、 ”僕” はヤオに約束する。
「10年後、君が自力で人生を立て直すことができていたら、
 この1億円をすべて君にあげよう」と。

卒業後、”僕” は医学部に入り、やがてアメリカへ留学する。
そして10年後、彼女との約束を果たすために帰国する。

しかし約束の日、約束の場所へ現れたのは彼女ではなく
ヤオの夫を自称する男・植松だった。
彼によると、ヤオは3年前から行方不明になったままなのだという。

”僕” は高校の同級生・巡矢(めぐりや)とともにヤオを探し始めるが・・・


そしてもう一つは、小学5年生(10歳)の ”ぼく” が語り手となるパート。

”ぼく” は旧家の御曹司らしく、家族は巨大な屋敷に暮らしている。
多くの使用人に囲まれているのでかなりの資産家らしい。
そしてどうやら、”ぼく” は(将来、当主が亡くなれば)
かなりの遺産を相続する立場にあるらしいことも分かってくる。

”ぼく” の母・弥生は3年前に家を出てしまった。
その後亡くなったと家族からは聞かされてきたが
最近、その弥生の幽霊が屋敷の中に現れたのだという。

母は本当はどうなっているのか?  ひょっとしたら生きているのか?
”ぼく” は、クラスメイトたちと協力して
母のことを探り出しはじめるのだが・・・


この二つの物語は終盤で合流し、その関係性が明らかになる。


それに加えて、”僕” のパートには
アメリカ時代のエピソードがかなり長めに挿入されている。

”僕” がアメリカで暮らした日々は決して順風満帆なものではなく、
とくに後半はかなり過酷な日々を送っていたことが明かされていく。
そんな中で、”僕” はある ”能力” を身につけていくのだが
それがタイトルの「HEARTBEAT」にも関わってくる。


問題はラストである。
冒頭に書いた星の数でおわかりかと思うが、
私が本書に与えた評価はあまり高くない。

ミステリであるから、結末に至るまで読者は多かれ少なかれ
作者によって騙されているわけだ。それでも、
読み終わったとき「やられたぁ~」って快く思えるのが
(私にとって)いいミステリなのだが・・・

しかし本書の場合、残念ながらそうは思えなかったんだよねぇ。
まず頭に浮かんだのは「え???」という疑問符の山。
そして「いくらなんでもそれはないだろう」という思い。
怒るまではいかなかったけど、がっかりはしたかなぁ


これはあくまで私の価値観によるものなので
これを気の利いたエンディングだと思う人もいるだろうし、
そういう感覚の人を否定する気もないが
少なくとも私はこのオチは好きになれないなぁ・・・

どうも最近この種のオチ、もしくはこれに近いオチの作品に
当たる率が高いような気がする。
たまたまなのか、それともこういう話が流行ってるのでしょうか。

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