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バチカン奇跡調査官 ジェヴォーダンの鐘 [読書・ミステリ]


バチカン奇跡調査官 ジェヴォーダンの鐘 (角川ホラー文庫)

バチカン奇跡調査官 ジェヴォーダンの鐘 (角川ホラー文庫)

  • 作者: 藤木 稟
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/04/25
  • メディア: 文庫
評価:★★★

カソリックの総本山、バチカン市国。
世界中から寄せられてくる "奇跡" 発見の報に対して
その真偽を判別する調査機関『聖徒の座』。

そこに所属する天才科学者の平賀と、
その相棒で古文書の解析と暗号解読の達人・ロベルト。
「奇跡調査官」である神父二人の活躍を描く第17弾。
長編としては14作目になる。


今回の奇跡申請はフランスの小村・セレからもたらされた。

山の洞窟に建立された聖マリー教会に村人たちが集まり、
春の訪れを祝う祭りが行われていたそのとき、
突如として聖母マリアの像がまばゆい輝きを放ち、教会の鐘が鳴り響く。
しかし鐘を鳴らした者は誰もおらず、
しかもその鐘にはそもそも舌(ぜつ)がついていなかったのだ。

 ちなみに「舌」とは、鐘の内側にぶら下がった棒状のものを指す言葉で、
 これが鐘本体にぶつかることで音を出すわけだ。
 うーん、この齢になるまでアレを ”舌” というとは知りませんでした。

さらに、祭りに参加していた全盲の少女ファンターヌの
視力もまた回復してしまう。

さっそくフランスへ飛んだ平賀とロベルトは、今回の ”奇跡” の地に
かつて「ジェヴォーダンの獣」と呼ばれる怪物が
跳梁していたとの伝説を耳にする。

 怪物が出現したのは250年前。それは雄牛ほどもある巨体を持ち、
 人間を捕えては徹底的に肉体を蹂躙し尽くすという残虐さを示した。
 3年ほどの間に200回近い襲撃があり、死者は100人を超えたという。

平賀は早速、教会の調査に向かい、
ロベルトはファンターヌが視力を失ったきっかけを聞かされる。

3年前、彼女は森の奥深くに分け入り、
そこで大ガラスの化け物・バズブに遭遇して
視力を奪われてしまったのだという。
そして同じ日、マティアスという少年もまた行方不明となっていた。

セレ村を治めていたかつての領主・ジェヴォーダン伯爵は
精霊を使役する力を持ち、逆らう村人を攫ったり、
石に変えてしまったという。

ロベルトは、ジェヴォーダン伯の末裔であり
今も森の奥に住むシュヴィニ家の屋敷を訪れるが・・・


奇跡のように見える(思える)不思議な現象に、
合理的な解釈を施してみせるこのシリーズ。

さらに、今回は中盤以降にも新たな謎が提示される。
視力を失う前のファンターヌが、森の中で出会った "精霊" のこと、
そして彼が連れて行ってくれた "精霊の国"・・・

毎回、どんな説明(こじつけ?)を持ち出してくるか楽しみで
なかにはかなり苦しいものもあったりするが、それもまたご愛嬌。
今回の "鳴るはずがない鐘" や "精霊" がらみの謎解きも
予想を超える大がかりなもの。
「なるほど」よりも「えーっ、そうなのぉ?」って感じだが
それを楽しめるのがこのシリーズの読者なのだろう。

終盤で平賀とロベルトは3年前のファンターヌの身に起こった真実、
そして "精霊" が秘めていた愛と哀しみの物語をも解き明かす。
真相を知ってみると、その切なさもまたひとしおである。

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