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新鮮 theどんでん返し [読書・ミステリ]


新鮮 THE どんでん返し (双葉文庫)

新鮮 THE どんでん返し (双葉文庫)

  • 作者: 青柳 碧人
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2017/12/13
  • メディア: 文庫
評価:★★☆

アンソロジー「theどんでん返し」シリーズの第3弾。
既発表作品から、作家が ”自薦” した作品を集めた前2巻と異なり
今回はこのアンソロジー用に新たに書き下ろしたもの、または
雑誌発表のみで書籍化されていない作品を収録している。


「密室竜宮城」青柳碧人
海辺でいじめられていた亀を助けた浦島太郎は、
そのお礼にと竜宮城へ連れて行ってもらう。
そこは様々な魚たちが ”人間態” に変身して暮らしていた。
しかしそこで密室殺人(殺魚?)事件が起こる・・・
なんで浦島太郎?って思ったが、一種の特殊状況下ミステリで
ラストではこの物語世界でのみ可能な仕掛けが明かされる。
いやあでも、太郎君の扱いが悲惨すぎませんかこれ。

「居場所」天祢涼
若い女性の脚に異様な執着を示す八木は
援助交際で知り合った女子高生を殺してしまい、逮捕される。
刑務所を出てからも、その前科ゆえに仕事を転転としている。
そして今、彼の関心の対象は女子高生・マナ。
悶々とした思いを抱えて彼女の後を追い回している八木の前に
謎の男が現れ、こう提案する。
「いっそのこと、彼女のスカートの中を盗撮しませんか?
 そしてあなたが警察に捕まるまでの一部始終を撮影させてください」
男なら誰でも(程度の差はあるが)、
性的な衝動を隠し持っているものだろうが、八木がとにかく哀れ。
意表を突く展開で、ミステリ的にはよくできてるとは思うが。

「事件を巡る三つの対話」大山誠一郎
路上で発見された男の撲殺死体。氏名は峰岸洋平、そして無職。
しかし毎月定期的な入金があることから、
峰岸は何者かを恐喝していた疑いが浮上する。
事件の捜査を巡り、三つの対話が綴られる。
まずは所轄署の捜査員・水原とその上司・小野寺係長、
翌朝の水原と春日捜査一課長、そしてもうひとつ。
これも会話劇ならではの仕掛けが施されている。
作者は密室ものが得意と思っていたが、こういうものも達者なんですね。

「夜半」のちぎり」岡崎琢磨
”俺” と妻・茜は新婚旅行でシンガポールを訪れる。
しかし4日目の夜、宿泊中のホテルで ”俺” は
かつての恋人・紗季と再会する。
彼女は ”俺” の同期だった川島と結婚し、
彼らもまた新婚旅行に訪れていたのだ。
その夜、”俺” は紗季と密会するが、
部屋に帰ってきたとき茜の姿は消えており、
翌朝、浜辺で扼死体となって発見される・・・
うーん、幕切れは一種のイヤミスですねえ。
それに加えて男女の間のドロドロな話は苦手だなあ・・・

「筋肉事件/四人目の」似鳥鶏
雪に閉ざされた山荘で起こった殺人事件。
警察の到着まで時間がかかるとのことで、
現場にいる人たちによる犯人探索の様子が綴られるのだが・・・
これは紹介が難しいなあ。
読み進んでいくほどにだんだんと不可解さが増していくのだが
これ、”どんでん返し” って言えるんですかねえ・・・?

「使い勝手のいい女」水生大海
28歳・独身の葉月は勤めていた会社が倒産してフリーター暮らし。
ある日彼女のアパートに、かつての恋人・智哉が押しかけてくる。
強引に金の無心をする智哉と激しく押し問答をする葉月。
そしてその夜、葉月の友人・加奈が訪ねてくる。
彼女こそ智哉がかつて浮気をした相手であり、それが別れた理由だった。
長々と居座る加奈に対し、じりじりと焦る葉月。
彼女には、はやく加奈に帰ってほしい理由があったのだ・・・
葉月が黒い想いを秘めながら包丁をシャクシャクと研ぐ描写が
随所に入って恐怖感を盛り上げるのだけど、
テーマが ”どんでん返し” なのを忘れてはいけない。

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