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コルトM1851残月 [読書・歴史/時代小説]

コルトM1851残月 (文春文庫)

コルトM1851残月 (文春文庫)

  • 作者: 月村 了衛
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2016/04/08
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

タイトルのコルトM1851とは、
アメリカの銃器メーカー・コルト社が1851年に発売した拳銃のこと。
目次の次のページにこの銃の図解も載っている。

文庫版の表紙では、髷を結った町人風の男が
この銃を手にした姿が描かれている。
つまり、時代劇にこの銃は登場するのだ。
時期的には矛盾はしないものの、
これはちょっとしたインパクトだった。


江戸時代も最末期、明治維新までほんの15年ほどの1853年が舞台。

江戸の廻船問屋・三多加屋の番頭・郎次は
堅気の商人を勤める一方、江戸の裏金融を牛耳る
儀平一家の大幹部でもあった。
人呼んで「残月の郎次」。

そして彼にはもう一つ、人に知られぬ秘密があった。
それは "商売上" の邪魔者を、
6連発式の拳銃で密かに "始末" していること。
死体は必ず、人目につかぬよう "処理" しているため
誰も郎次が銃を使ったことに気づかない。

周囲の者たちは、郎次が凄腕の殺し屋と手を組んでいると見ている。
郎次自身もそれを否定せず、
親分の儀平にすら拳銃のことを明かさないできた。

おかげで組織内での出世も順調で、
郎次のことを儀平の跡目を継ぐ候補者の一人とみるものもいた。
しかし順風満帆な日々はある日突然に断ち切られる。

郎次は組織の金をかすめ取った女・おしまを始末しようとするが
なぜか儀平はそれを黙認しようとする。

おしまの言動を腹に据えかねる郎次。
このままでは示しがつかないと、彼女を殺してしまう。
しかしそれを知った儀平によって、
郎次は閑職に追いやられてしまうのだった。

このままでは終われない。
失地回復をもくろむ郎次は、儀平の意図を探り始めるが・・・


現在の物語と並行して、郎次の生い立ち、
そして彼が拳銃を入手した経緯などが語られていく。

幼い頃に家族を失った悲惨な経験。
身寄りのない自分を引き取り、一人前に育ててくれた儀平。
しかしその儀平の真意はいずこにあるのか。


やがて明らかになる儀平一味の陰謀、
そして郎次の家族を死に追いやった真相。
組織にも裏切られて、自分はとことん孤独であったことを
今更ながらに思い知る郎次。

屈辱と失意の中、郎次は組織から離れ、
生き残るために儀平と全面対決する道を選ぶ。


クライマックスでは、郎次は儀平の潜むアジトに対して
拳銃一丁だけを手に急襲をかける。
しかしそれを予想していた儀平は、
圧倒的な "戦力" を用意して待ち受けていた。

まさに絶体絶命かと思われたが
郎次はその状況を逆利用して、次々に儀平の手下を倒していく。
このあたりはハリウッド映画的な
派手なアクション演出でぐいぐい読ませる。

そして物語は、いかにも "ノワール" なエンディングを迎える。


月村了衛って好きな作家さんなんだけど
ノワール小説は私の守備範囲外。
というかはっきり言って苦手。

 かなり昔だけど馳星周の『不夜城』を読んで
 やっぱりノワールは受け付けないなあ・・・って思った。
 ところがその馳星周が本書の解説を書いていたりする(笑)。

そんなわけで、読み通せるかちょっと心配だったんだけど
最後までそれなりに楽しんで読めたよ。
だけど、あのラストはやっぱり好きになれなかったなあ・・・


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