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小説 君の名は。 [読書・SF]


小説 君の名は。 (角川文庫)

小説 君の名は。 (角川文庫)

  • 作者: 新海 誠
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/メディアファクトリー
  • 発売日: 2016/06/18
  • メディア: 文庫



いま、巷で話題の映画を
監督自らの書き下ろしでノベライズしたもの。

文庫で250ページほどで、しかも
内容はほぼ映画の内容をなぞっているので
映画を観た人ならば、いろいろなシーンを頭の中に甦らせながら
すいすいと読めてしまうだろう。
映画にあって小説にないシーンはちらほらありそうな気もするが
小説にあって映画にないシーンはほとんどないんじゃないかなあ。

活字で書いてあるぶん、
台詞で聞き落としたところが再確認できて
より理解できるようにはなってるとは思う。

この映画を観た知人が漏らしていた
「面白かったんだけど、○○○が分かりにくかった」
(ネタバレ防止のため伏せ字)って言ってたけど
その疑問もたぶん解けるだろう。
映画を観て、もしも疑問を感じるところがあったら、
その全部ではないがかなりの部分は解決するかも?

しかし本作は、映画の答え合わせのための小説ではもちろんない。
小説ならではの良さももちろん兼ね備えている。

小説版では瀧の一人称と三葉の一人称が交互に進行する。
映像では表情や仕草でしか示されない二人の内面や心理描写も、
文章で、言葉で描かれるのだ。
これはやはり活字のいいところだろう。
この監督は映像が本業のはずなのに、文章も達者だ。

とくに終盤、三葉が駆けるシーンが特筆もの。
彼女は疲労困憊、満身創痍になりながらも、走り続ける。
走りながら、彼女の中をさまざまな思いが駆け巡る。
自分のこと、"彼" のこと、そして "自分たち" のこと。
もう一度 "彼" と巡り会うために、自分は走っているのだと。

章のタイトルがまたいい。
「うつくしく、もがく」
まさに、運命の人に再会するために若い二人が
必死に "もがく" さまが綴られる。
そんな君たちに、映画館では泣かされたんだよねえ・・・

このあたり、映画のシーンとオーバーラップして
再びこみ上げてくるものを感じた。
いやはや、新海監督は映像もすばらしいが文章も絶品だ。


個人的には、映画など映像作品のノベライズは
映像で表現された以外の情報を
(登場人物の過去とか、裏設定とか、エピソードの追加とか)
じっくりと書き込んでもらって、
質/量ともに読み応えのあるものがいいと思っている。

だけど、今作に限ってはあれこれ足さずに
映画の内容をすっきりとまとめた今回の作りは正解だと思う。

まあ、「もうちょっと説明してくれよ」って
思うところもなくはないんだが
観客/読者の想像に任せる部分を残しているぶん、
余韻があっていいような気がする。

たとえば私の想像だと
(たぶん、映画を観た人の大半はおんなじ想像をしたと思うんだけど)
かつて三葉の両親の間にも、
三葉と瀧のような入れ替わりがあったんじゃないか・・・
もしそうならば、終盤の展開もすんなりと腑に落ちるんだよね。

ま、そこまで詮索するのは野暮ですかねぇ・・・


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