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青春探偵ハルヤ [読書・ミステリ]

青春探偵ハルヤ (創元推理文庫)

青春探偵ハルヤ (創元推理文庫)

  • 作者: 福田栄一
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2015/08/29
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

浅木晴也(ハルヤ)は苦学生である。
アルバイトで学費と生活費を稼ぎ出しながら、
悪友の俊喜、和臣とともに学生生活を過ごしている。

そんなある日、ハルヤは
女学生・美羽(みう)につきまとう不審者を捕まえれば
報酬が受け取れるという話を聞き、引き受ける。

ハルヤは、同級生の葵らの協力を受けて
ストーカー候補者をリストアップしていく。

美羽のマンションに赴いたハルヤは、建物の前に佇む男を発見する。
しかしその男・広沼は、美羽の隣の部屋に住む妹が失踪し、
連絡が取れなくなっていて捜しているのだという。
ハルヤは広沼から妹の捜索への協力を求められてしまう。

候補者リストから浮かんだ容疑者・馬場に接触したハルヤだったが
実は馬場は夏紀という女から強請られていて、
美羽につきまとうどころではなく、逆にハルヤは助けを求められる。

さらに、さらに、というわけで
ハルヤの行くところ様々な事件が起こっていて
ことごとくハルヤは巻き込まれていってしまうのだった・・・


複数の事件が同時進行するミステリを
「モジュラー型」と言うらしいが、
それを私はR・D・ウィングフィールドの
「フロスト警部シリーズ」で知った。

 もっともこのシリーズ、
 最初の2冊しか読んでないんだけどね。

ネットでちょっと調べてみると、けっこう作例も多くて
ミステリの中では一つのジャンルをなしているようだ。
京極夏彦の「百鬼夜行シリーズ」の一部の作品もそうらしいと聞いて、
言われてみればそうかなあ、とも思う。


もちろん、すべての事件が単独のワケはなく、
たとえばA・B・C・Dの4つの事件があったとして
AとBが裏で繋がってたり、
Cが原因でDが起こってその結果がAに影響したり、とか
けっこう複雑なつながりを持ってたりする。


今作の中で起こる複数の事件も、中盤以降になると
意外なつながりがあることが次々に判明していく。

そして最後には綺麗にまとめて解決し、
さらにはちょいと意外な "事実" まで明かされてきっちりと終わる。
かなり複雑なプロットながら、読者は混乱することもなく
最後まで迷子にならずに読めるのは、作者の構成の上手さ、
そしてストーリーテリングの巧みさだろう。


キャラもいい。
主役のハルヤは、大学入学前に通っていた学校が
けっこう荒れていたせいか、かなりのヤンキーだったみたいで
肝は据わってるし、腕っ節も強い。それに加えて
いろんな "特殊技能" (ほとんど犯罪じゃね?ってレベル)も
身につけていたりと、とにかく規格外の大学生。
まあ、それくらいハードボイルドじゃないと
現代社会で探偵なんて務まらないよねえ。

俊喜と和臣もハルヤの "助手的存在" として脇を固めてる。

そして、事件を通して少しずつハルヤとの距離を縮めていく
ヒロイン的な立ち位置にいる葵ちゃんも可愛くていい。

二人の "その後" も気になる。
いつの日か、続編が読めるといいなあ。


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