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眼鏡屋は消えた [読書・ミステリ]

最初に断っておきますが、この本を買ったのは
表紙のセーラー服に惹かれたせいではありません。
だいたい、ヒロインは作中でセーラー服着てませんよ。

ええっと、何をムキになってるんだオレは。

眼鏡屋は消えた (創元推理文庫)

眼鏡屋は消えた (創元推理文庫)

  • 作者: 山田 彩人
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/09/29
  • メディア: 文庫



評価:★★★

主人公・藤野千絵は、何者かに頭を殴打され、気を失う。
意識を取り戻したとき、彼女は8年間の記憶を失っていた。
高校2年生の文化祭直前から、25歳になった今までの記憶を。
そしてなんと、彼女は母校の英語教師になっていたのだ。

さらに驚いたことは、千絵の記憶が飛んだ直後である
文化祭の準備中に、彼女の親友・実綺(みき)が
校内の時計台から謎の転落死を遂げていたこと。

タイトルの『眼鏡屋は消えた』とは、実綺の脚本による演劇で
過去に起こった "いじめ" で、ワタルという男子生徒が死んだ事件を
下敷きにしており、実綺と千絵は学校側の反対を押し切って
この劇を上演しようと画策していた。

しかし実綺の死によって上演はついに行われなかったのだ。

実綺の死の真相を知りたい。そして彼女の無念を晴らしたい。
その一念で行動を起こした千絵だったが
8年の歳月が経った事件を調べるのは容易ではない。
彼女は演劇部の幽霊部員だった戸川涼介を頼ることにする。

8年の間に、教師の中にも学校に残った者もあり去った者もあり、
当時の同級生や演劇部員たちも社会に出て様々な生活を送っている。
校内は千絵、校外は涼介と、二手に分かれての調査は
やがて不可解な事実にぶち当たる。
実綺が死んだ時間帯には時計台は衆人環視の下にあり、
人の出入りは不可能だったのだ・・・


第21回鮎川哲也賞受賞作とのこと。

何と言ってもヒロイン・千絵のキャラがまずお見事だろう。
明るく元気でおよそ悩むということがない。
8年間の記憶を失ってしまってもへっちゃらなのだ。
超ポジティブ思考で常にハイテンション、
好きな男は一にイケメン、二にイケメン、三四がなくて五にイケメン。
ある意味コメディの主人公としてはカンペキかも知れない。

探偵役を務めるのは高校時代の同級生の涼介だが
顔だけ見れば超イケメンなのに性格は最悪で、
ついでに口も悪いというこれまた強烈なキャラである。

 新人賞作家にしては登場人物のキャラ設定が上手いと思ったら
 「あとがき」によるとアニメのシナリオライターを
 長年されていた方ということなので、なんか納得。

千絵と涼介の漫才のようなコントのような会話もとても面白く、
物語はこの二人によってぐいぐい引っ張られていく。

ラストの謎解きもよくできている。
時計台を巡る人々の動きもよく考えられていて
不可能状況が論理的に解明されていく流れもいい。

ミステリとしての出来は鮎川哲也賞にふさわしいと想う。


物語のハイテンション・コメディぶりとは打って変わって
最終的に明かされる結末はけっこう重い。
(まあ、人が死んでいるんだから軽かったら困るが・・・)

途中までは★3つ半だったんだけど、
このラストがちょいと私好みではないので、★半分減です。

まあ、好みは人それぞれですから・・・ネ。


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