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空に咲く恋 [読書・青春小説]


空に咲く恋 (文春文庫)

空に咲く恋 (文春文庫)

  • 作者: 福田 和代
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2020/07/08


評価:★★★☆


 実家の花火屋に嫌気がさし、飛び出した青年・三輪由紀(みわ・よしき)。しかし放浪先で出会った花火屋の跡取り娘に感化され、一念発起して花火づくりに取り組むことに。しかし彼の行く道は前途多難だった・・・。


 群馬県前橋市郊外にある花火店・三輪煙火工業。そこに生まれた由紀は誰もが認めるイケメンだったが、子どもの頃のトラウマから女性アレルギーになっていた。女の子が接近してくると呼吸困難になるという、なんともトボけた話だが、本人からすれば死活問題なのだろう(笑)。

 厳しく気難しい父、有能すぎる姉・京(みやこ)、一年がすべて花火のことで埋められてしまう花火師という職業に嫌気がさし、由紀は大学卒業後に実家を飛び出し、本州各地を放浪する旅に。

 新潟県山古志村で行き倒れ寸前になっていた彼を救ったのは、農業を営む老人・猪貝久造。いまは彼の計らいで古民家に住んでいる。

 久造の手伝いをして暮らしているある日、由紀は自動車の玉突き事故に遭遇する。前後を挟まれて動けない軽トラックには、大量の花火が積まれていた。火薬の扱いには経験があった由紀は、引火を防ぐために花火を運び出す作業に協力することに。

 軽トラは地元の花火師・清倉花火店のもので、乗っていたのはそこの跡取り娘・清倉ぼたん。高校卒業後、家業を継いで一人前の花火師となるために修行中だという。なぜかぼたん相手にはアレルギー症状が出ないことを不思議がる由紀。
 彼女の夢にかける情熱に触れた由紀は花火の素晴らしさに目覚め、再び家業と向き合う決意をするのだが・・・ 


 物語は二部構成で、ここまでが第一部。
 第二部では実家に帰った由紀が、新米花火師としてスタートするところから始まる。

 由紀の前には、いくつもの試練が立ちはだかる。

 厳しく指導していた父が交通事故に遭って首を負傷し、花火が造れない状態になってしまう。大黒柱を欠いた三輪煙火工業は存亡の危機を迎える。

 大阪の花火業者・蒼天煙火商会の後継者である児島道顕(どうけん)は、新進気鋭の花火師としてマスコミにも取り上げられている存在だが、どうやら彼もぼたんに惚れているらしい。

 一人前の花火師となり、実家を救って、ぼたんと対等につきあえるような存在になりたい。
 由紀は自らのアイデアを基に創作花火を作り上げ、ぼたんも道顕も参加する花火競技大会に臨むが・・・


 花火がテーマの "ボーイ・ミーツ・ガール" のラブコメだが、花火業界の内幕を描いた "お仕事小説" としても面白い。
 "女性アレルギー" というのはいささかマンガ的だけど、彼の精神的な未熟さを象徴しているのだろう。

 ボーイッシュでサバサバしたぼたん、鼻につく言動で典型的ライバルキャラの道顕、有能だが上昇志向が強い姉・京など、みな性格づけがわかりやすい。だから物語にも簡単に入り込めるし、リーダビリティもいい。楽しい読書の時間を過ごせるだろう。

 楽しい物語を読んだ後はいつも思うのだが、彼ら彼女らの "その後" が知りたくなる。長編でとはいわないが、短編でもいいから後日談が読みたいな。主人公カップル以外にも、いろいろ気になる要素がいっぱいだ。



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