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本バスめぐりん。 [読書・ミステリ]


本バスめぐりん。 (創元推理文庫)

本バスめぐりん。 (創元推理文庫)

  • 作者: 大崎 梢
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/10/24
評価:★★★

 タイトルの ”本バス” とは、マイクロバスを改造して作った移動図書館のこと。いろんなジャンルの本をおよそ3000冊積んで、各所を巡回している。
 本書に登場するのは、横浜市の隣にある種川市(モデルは藤沢市あたりかと思われる)が運行している ”めぐりん” 号だ。

 視点人物となるのは照岡久志、通称テルさん。定年退職後に再雇用で3年働いた後、無職となった。暇を持て余しているところに友人からの誘いがあり、移動図書館の運転手となった65歳。

 相棒は司書の梅園菜緖子、愛称ウメちゃん。細い手足にショートカット、あっさりした顔立ち。文学系というより体育会系の雰囲気で年齢は20代半ば。

 この年齢差40歳のコンビが市内各所を巡回している時に遭遇したエピソードを5編収録している。


「テルさん、ウメちゃん」
 ”めぐりん” で借りた本に、大事な私物を挟んだまま返却してしまったという申し出が。ウメちゃんはその本を次に借りた中年女性・寺沢に確認するが、知らないという。しかし彼女の挙動はいかにも不審だった・・・

「気立てがよくて賢くて」
 高級住宅地・殿が丘は ”めぐりん” の巡回先の一つ。しかし近年、利用者が減少していて巡回先から外す案が浮上する。
 テルさんは近くにある保育園の児童に利用を呼びかけたらと提案するが、古くからの住民は悲観的。実は保育園と殿が丘には、ある因縁があったのだ・・・

「ランチタイム・フェイバリット」
 ”めぐりん” が毎週金曜日の昼にやってくるのは、企業のオフィスや工場・研究施設などが集積しているエリア。そこで働く人たちが利用するためだ。
 そこでの常連利用者・野庭悦司(のば・えつし)は、笑顔が爽やかで真面目そうな好青年だ。彼の相手をしている時のウメちゃんも楽しそう。
 しかし、彼の視線がしばしば ”めぐりん” ではない、別の方に向いていることにテルさんは気づく。彼は何を見ているのか・・・

「道を照らす花」
 宇佐山団地は、種川市で最も古い公団住宅。そこは ”めぐりん” の巡回先のひとつでもある。そこにある日、見慣れない美少女が現れる。
 彼女の名は宮本杏奈、中学2年生。母が亡くなり、父と二人で引っ越してきたのだという。本が好きで、”めぐりん” 利用の常連となってくれた。
 しかしある日、彼女は ”めぐりん” の前で突然泣き出してしまう。あまりの号泣ぶりに戸惑う周囲の人々。一体彼女に何が起こったのか・・・

「降っても晴れても」
 毎年10月に開かれる市民祭り。今年は開催場所が拡張されたのに伴い、”めぐりん” も参加することになった。そのための企画作りに没頭するウメちゃん。
 そんな中、図書館に苦情の葉書が届く。”めぐりん” の運転手についてのクレームだった。しかしテルさんにはその内容に全く心当たりがない。誰がどんな目的で投書をしたのか・・・
 野庭や杏奈など、以前のエピソードに登場したキャラも再登場し、さながらカーテンコール状態。


 強いて分類すれば ”日常の謎” 系なのだろうが、ミステリというよりは移動図書館を巡る ”ちょっといい話” という感じだ。

 移動図書館というのは、山間部みたいな僻地を巡回しているのだとばっかり思っていたが、都市部でもけっこう多いみたい。
 ネットで検索してみたら、私の住んでるところにはないけど近隣の2つの市では合計して3台の本バスが運行しているようだ。

 近年、自治体の財政悪化で公立図書館の統廃合が続き、司書の採用も少なくなってるらしい。運営を民間に委託してるところもあるみたいだし。ウメちゃんは公立図書館で正採用されてるみたいだから、かなり優秀なのでしょう。

 本作は続編『めぐりんと私。』が刊行されてる。ウメちゃんと野庭の仲も気になる。文庫になったら読みます(笑)。



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