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襲名犯 [読書・ミステリ]

襲名犯 (講談社文庫)

襲名犯 (講談社文庫)

  • 作者: 竹吉優輔
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/09/11

評価:★★★☆

第59回(2013年) 江戸川乱歩賞受賞作。

茨城県の地方都市・栄馬(えいま)市で起こった無差別猟奇連続殺人事件。
犯人は ”ブ-ジャム” という異名で呼ばれるようになり、
一部に熱狂的な信奉者を産み出したが、ある事故をきっかけに
殺人犯・新田秀哉があっけなく逮捕される。

14年後、獄中にあった新田の死刑が執行され、
事件は名実ともに終結したかと思われたが
それと時を同じくして、”ブージャム事件” をなぞるような
猟奇殺人事件が栄馬市で発生する。

主人公は、栄馬市の図書館で司書を務めている南條仁(じん)。
14年前の ”事件” では、当時13歳だった
双子の兄・信(しん)を喪っていた。

茨城県警で刑事となっている三上律子、
人気小説家となった霜野襄一(しもの・じょういち)。
この2人も、かつて南條兄弟とは同級生だった。

物語は仁・律子・襄一の3人が、再び起こった ”ブージャム事件” に
巻き込まれ、翻弄されながら真相に近づいていく様が綴られていく。

”ブージャム事件” の資料ばかりを漁る図書館利用者、
かつて新田秀哉と獄中結婚していた女など
怪しげな人物が次々と現れてなかなか真相は見通せないが
登場人物自体はさほど多くはないので、
終盤に向けて犯人はけっこう絞られていく。

しかし、犯人当ての興味以上にページをめくらせる原動力となったのは
主人公・仁の造形だった。

両親の経済的な苦境を救うために養子に出された兄・信。
しかし ”事件” で信が亡くなってしまうと、
養母だった女性は次に仁を養子に欲しいといいだす。

それに応えたものの、養母の扱いはあくまで ”信の身代わり”。
信の通っていた中学へ転入するが、既に信と友情を結んでいた
クラスメイトたちから見れば、仁は ”信の代わり” でしかない。

そんな中でも、律子や霜野は仁と厚誼を結んでくれたが
それでも彼らとの間には「信」という見えない壁が厳として存在する。

「周囲の人間は、自分を『仁』という人間として見ているのではなく、
 自分を通して『信』を見ているのではないか」
そんな思いが、常に仁を悩ませてきた。

本書は、再び起こってしまった ”ブージャム事件” を通して
仁が自らに取り憑いた ”『信』の呪縛” から解放され、
人生の新たな一歩を踏み出すまでの成長の物語でもある。

特にラストシーンが感動的で素晴らしい。
最終ページまできたら、一気に涙腺が崩壊してしまったよ。


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