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怪盗ニック全仕事6 [読書・ミステリ]

怪盗ニック全仕事6 (創元推理文庫)

怪盗ニック全仕事6 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/01/21
  • メディア: 文庫
評価:★★★

”価値のないもの、誰も盗もうと思わないもの” 専門の泥棒、
ニック・ヴェルヴェットの ”仕事録”、最終の第6巻。

ニックは依頼された物件を、ある時は奇想天外な方法で、
またある時は心理の盲点を突くようなさりげない方法で盗み出す。

一見して ”価値がない” ように見えても、依頼者からすれば
どうしてもほしい理由があり、たいていの場合
それは別の大きな犯罪の一部を構成していたりする。
そしてほぼ毎回、謎めいた美人が登場して(笑)事態に絡んでくる。

巻き込まれたニックは右往左往四苦八苦させられるのだが
最後には事件を解決まで導いてしまうという役回り。

こういうフォーマットの話を文庫で30ページほどの中に
毎回綺麗にまとめてくるのだから、まさに職人芸といえるだろう。

全87作のうち、本書には第74作から最終作となる第87作まで
14作が収められている。

「コロンブスの首を盗め」
ロシア人芸術家が作ったコロンブスの銅像の首を盗む話。

「グロリアの赤いコートを盗め」
時に1965年、ニックが後にパートナーとなる
グロリアと出会ったときの馴れそめの話。

「バースデイ・ケーキのろうそくを盗め」
バースデイ・ケーキに立っているろうそく
(何の変哲もないふつうのもの)を盗めという依頼。
ただし、盗まれたことを周囲に気づかれてはならないという条件が。

「オウムの羽根を盗め」
クルーズ船の客室の金庫からオウムの羽根を盗めという依頼。

「浴室の体重計を盗め」
依頼人が体重計を欲しがる理由に納得。

「劇場の立て看板を盗め」
立て看板にこういう ”使い方” があったとは。

「結婚式で放たれる鳩を盗め」
作者は執筆時(2002年)に72歳だったはずだけど、
最新技術の進歩もフォローしてるんだね。

「一番でかいシーバスを盗め」
サンディエゴで行われるシーバス釣り大会で優勝した
一番でかい魚を盗めという依頼。
ちなみに ”シーバス” とはスズキのこと。

「ダブル・エレファントを盗め」
”ダブル・エレファント” とは書籍の判型のことで
縦39インチ(約1m)×横26インチ(約66cm)という巨大さ。
画家オーデュボンのダブル・エレファント版の画集を盗む話。
女盗賊サンドラ・パリスと共演。

「空っぽのペイント缶を盗め」
なぜそこに空っぽのペイント缶があるのか?という理由が秀逸。

「くしゃくしゃの道路地図を盗め」
サンドラ・パリスはパリでダイヤモンドを盗むが
共犯者の男が殺され、ダイヤも行方不明に。
彼女はニックに助けを求めるが。

「最高においしいアップル・パイを盗め」
農村地帯ジャクスン郡の祭りで行われるコンクールで
一等賞を取ったアップル・パイを盗む話。

「機関士の五ポンド紙幣を盗め」
イギリスのワイト島にある蒸気鉄道の機関士が持つ
五ポンド紙幣を盗めという依頼。

「仲間外れのダチョウを盗め」
カリフォルニア州の牧場から、群れから離れてぽつんとしている
ダチョウを盗むという依頼を受けたサンドラ・パリス。
しかしいざ事に及ぶとダチョウから意外な反撃を受け(笑)、
負傷してしまう。彼女はニックに助けを求めるが。

作者は晩年まで創作意欲をもって書き続けていたので
当然ながら第87作も最終作という内容ではなく、
たぶんまだまだ続きを書くつもりがあったのだろう。

上にも書いたけど、決まったフォーマットで決まった分量で、
一定のレベルを維持しつつ50年以上に渡って多くのシリーズを
書き続けてきたのはホントにスゴい。

作品は短篇主体で900編以上もあるとのこと。

ちょっとwikiをのぞいてみたら、
ミステリ雑誌『EQMM』に1973年5月から2004年5月まで、
31年にわたって毎月ホックの作品が掲載されていたとのこと。
しかも一回も欠けることなく。
月1編として計算してみたら、これだけでも373編になるけど、
これに加えて500編以上書いてたことになる。

いやはや、想像を超える人ですね。


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