SSブログ

Junction 運命の分岐点 ミステリー傑作選 [読書・ミステリ]

Junction 運命の分岐点 ミステリー傑作選 (講談社文庫)

Junction 運命の分岐点 ミステリー傑作選 (講談社文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/04/15
  • メディア: 文庫



評価:★★★

日本推理作家協会が毎年編纂しているアンソロジー
『推理小説年刊 ザ・ベストミステリー』
その2012年版を文庫で二分冊したもの、その1。

「望郷、海の星」湊かなえ
 東京で暮らす浜崎の元へ高校の同級生だった美咲から手紙が届く。
 浜崎は瀬戸内の島で育ったが小学6年生の時、父が突然失踪する。
 残された母子の前に、現れた男・真野。
 頻繁に釣った魚を届ける真野に、周囲の誰もが
 浜崎の母に惚れているんだろうと思っていたが、
 ある出来事を境に母子は真野とのつきあいを絶つ。
 やがて高校に進学した浜崎は美咲とクラスメートとなるが、
 彼女は真野の娘だった・・・
 ミステリと言うよりは人情噺かなあ。
 タイトルの「海の星」とは、
 真野が浜崎に見せてくれた "手品" みたいなものなんだが、
 出した以上は責任もって種明かししてほしかったなあ。

「死人宿」米澤穂信
 恋人の佐和子が職場で嫌がらせを受けていたにも関わらず
 真剣に取り合わず放置していたら彼女は失踪(おいおい)。
 2年ぶりに再会した佐和子は、山奥の温泉宿で仲居をしていた。
 その温泉には火山ガスのたまりやすい場所があり、
 "自殺の名所" となっていた。
 佐和子から、泊まっている3人の客の中に
 自殺志願者がいるのではないかと相談を受ける「私」。
 この件にどう関わるかが、佐和子が私に課した
 復縁のためのテストのように感じられ、
 自殺志願者を突き止めようとする「私」。
 最終的に、誰が死にたがっていたかは判明するのだが・・・
 丸く収まるように見えてダークな幕切れ。

「この手500万」両角長彦
 ギャンブラーの半崎のもとへ、かつての舎弟・千野から電話が入る。
 裏カジノでポーカーをしている最中なのだが、
 掛け金が足りないので助けてほしいという。
 千野はかつて半崎の財産を持ち逃げした過去があり、
 いったんは断る半崎だったが、
 彼の「一発逆転できる最高の手がきている」との言葉に、
 なぜかカジノへ向かうことになる・・・
 ミステリかどうかちょっと疑問だが
 半崎をはじめ登場するキャラ同士の会話がよく書けていて
 読んでいて楽しいのは確か。
 特に千野はホントにイヤな奴で、彼の台詞はいちいち気に障る。
 でも、おかしくて笑ってしまうんだなぁこれが。

「超越数トッカータ」杉井光
 音楽業界の片隅で細々と生きているミュージシャン・蒔田。
 ようやくCDリリースにこぎ着け、自作のPVもネットで評判になり、
 一時はダウンロード数が1位に。
 しかし業界の大御所・瀧寺の曲に酷似していると指摘され、
 盗作疑惑をかけられてしまう・・・
 いやあ、ミステリのロジックって、
 よく考えてみたら "屁理屈" だった、ってのはよくあるのけど、
 この解決はどうだろう。
 巻末の解説では "詭弁すれすれ" って書いてあるけど
 私的には「アウト」だなあ・・・
 ていうかこれ、そもそもミステリなのか?

「オンブタイ」長岡弘樹
 建設会社課長の西条は、懇親会からの帰り、
 部下の原に車を運転させて家へ向かう。
 しかし酔った西条が原の運転にちょっかいを出したために
 車は人を跳ね、原は死亡、そして自らは失明という大事故を起こす。
 光を失った西条は自宅にこもりきりになっていたが、
 ある日そこへ新しく女性のヘルパーがやってくる・・・
 読んでいると、ああでもないこうでもないと
 いろいろ予想が二転三転して全く予想がつかない。
 でもラストに来てみると、伏線がきれいに回収されて、
 「なるほど」という結末を迎える。
 意味不明なタイトルも、「そういうことか!」
 いやあ、よくできてる。

「残響ばよえ~ん」詠坂雄一
 ゲームライターの柵馬(さくま)は、
 「ゲームにまつわる恋愛の思い出」というオーダーで、
 中学時代のクラスメート・ミズシロとの交流を綴る。
 学校帰りに彼女と二人、ゲーセンで遊んだだけという、
 初恋かどうかも怪しい話のはずだった。
 しかし、原稿を読んだ先輩ライターの流川(るかわ)は、
 ミズシロにまつわる意外な事実を引き出してみせるのだった。
 作中に『ぷよぷよ』というゲームが重要な要素として登場するが
 ゲームには詳しくない人でもたぶん困らないと思う。
 実際、私はミズシロの秘密の見当はついたし。
 もっとも、なんで分かったかというと、つい最近たまたま
 私の職場でこのネタが話題になったからだが(^_^;)。
 とはいえ、ゲームに詳しい方が本作はより楽しめるだろう。
 うーん、ついにゲームまでミステリのネタになってきたか・・・
 そのうち、ポケモンGOをトリックに使ったミステリとかも
 出てくるのかなぁ・・・
 しかしこのタイトルは何とかならなかったのか?
 それともゲーマーの皆さんなら納得の題名なのか?


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0