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ソロモンの偽証 第3部 法廷 [読書・ミステリ]

ソロモンの偽証: 第III部 法廷 上巻 (新潮文庫)

ソロモンの偽証: 第III部 法廷 上巻 (新潮文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/10/28
  • メディア: 文庫




ソロモンの偽証: 第III部 法廷 下巻 (新潮文庫)

ソロモンの偽証: 第III部 法廷 下巻 (新潮文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/10/28
  • メディア: 文庫



評価:★★★★★

自分たちの手で柏木卓也の死の真相を突き止める。
一人の中学生・藤野涼子の決意がクラスメートを動かし、
学校の教職員を動かし、保護者や学校を取り巻く大人たちを動かし、
ついに「学校内裁判」が開廷する。

第3部もまた、文庫で1100ページを超えるが、
そのほとんどすべてが法廷場面である。
舞台は、城東第三中学校の体育館に設えられた "特設法廷"。

元校長・津崎が、少年課の刑事・佐々木が、
HBS記者の茂木が、柏木卓也の兄・宏之が。
事件の関係者たちが次々と証人として出廷する。

あくまで大出俊次の犯行とする検事・藤野涼子。
すべては "空想" と断言する弁護人・神原和彦。
正反対の主張を貫く二人の鋭い主尋問と反対尋問によって、
事件の細部が次第に明らかにされていく。

そして、ついに告発状の差出人・三宅樹里が出廷するが・・・


私はそんなにたくさん法廷ものを読んできたわけではないけれど、
本書の裁判シーンの緊張感は、凡百のそれを上回るものがある。

どんなにもっともらしくても、
中学生が行う "裁判ごっこ" に過ぎないはずなのに。
専門家から見たら、おそらく裁判の体を為していないであろうに。

しかし。

検事役の涼子、弁護人役の和彦、
そして裁判の秩序と進行を仕切る判事役の井上康夫。

そして、検察事務官役の佐々木吾郎と萩尾一美、
弁護人助手の野田健一、廷吏の山崎晋吾、
そして竹田和利率いる9人の陪審員団。

このすばらしい連中は、中学校の体育館に
立派な "法廷" を現出させることに成功した。

もっとも、言葉や仕草のあちこちに
中学生らしさが垣間見えるのはご愛敬。
重苦しくなりがちな雰囲気に適度にクッションを入れてくれる。
その辺りのさじ加減も絶妙である。


第2部まで読んできた人なら、
なんとなく裁判の最終的な行方の見当はつくかも知れないし、
"事件" の真相も、ある程度予想できるのかも知れない。

でも、それでも。

ページを繰る手が止まらない。
証人の爆弾発言あり、隠し球あり、思いがけない人物の乱入あり。
最後の最後まで、必死になって活字を追い続けてしまう。
それだけのパワーと牽引力を持った作品だ。


なんといっても、登場する中学生たちが素晴らしい。
"学校内裁判" という異常な状況で、しかもクラスメートを裁くという
特異な体験の中にいながら、みな真摯に法廷に向き合う。
ちょっと(かなり?)背伸びしながら。

そう、読んでて感じたのは「微笑ましさ」だった。
スーパー中学生である涼子・和彦・康夫の3人組だって超人ではない。
かなり無理していて、いっぱいいっぱいである。
他の生徒は言わずもがな。

でも、子供たちが身の丈を超えて、精一杯頑張っているところを見たら、
大人は思わず微笑んでしまうんじゃないか?
そして、素直に応援してしまわないか? 「頑張れ!」と。


裁判の前は、必ずしも親しい関係にはなかった生徒たち。
俊次たち三人の傍若無人の振る舞いにも、内心では憤っていても
目を逸らしたり、無関心を装ったり、見ざる聞かざるを決め込んでいた者も。

でも生徒たちは、この裁判を通じて、ひと夏で大きく成長する。
単に同じ学校に通っていた、同じクラスだった、というだけではなく
本当の意味での "級友" になってゆく。

下巻P.395の吾郎の台詞を読んだら、不覚にも目頭が熱くなってしまった。
そうだよねぇ、裁判を通じて心をつないだ仲なんだ。
もしそんなことになったら、この子たちはこうするよねえ。


下巻の最後に、"ボーナストラック" として
本編の20年後を描いた150枚の書き下ろし中編が収められている。

中年の私立探偵が、ある私立中学校で起こったトラブルの調査に赴き、
そこで弁護士となった涼子と遭遇する。
35歳になり、結婚して子供もいるようなのだが、
名刺の名前は「藤野涼子」。
(たぶん旧姓をそのまま使っているのだろうけど、
 ダンナが藤野家に婿入りしたのか? それとも事実婚?
 なーんて思ってしまったよ。)
本書ですっかり涼子のファンとなってしまった人(私もだが)には
うれしいプレゼントだろう。
ラスト近くの涼子の台詞で思わず「どひゃあ!」
これもうれしいサプライズ。

弁護士・藤野涼子の活躍する作品も読んでみたいなあ。
長編とはいいません。短編でもいいです。
宮部みゆきさん、お願いしますよ。


終わってみれば、本編+ボーナストラック合わせて4850枚を、
2週間で読んでしまったよ。
決して急いで読んだわけじゃないんだけど、
気がつくとページが進んでるんだよねえ。

第3部だって、一昨日(金曜)の段階では
上巻半ばまでしか読んでなくて、まだ900ページ近く残ってた。
この土日で読み終わるかなあ・・・なんて思ってたんだが
何のことはない。日曜の昼過ぎには読み終わってしまったよ。

素晴らしい中学生たちと過ごしたこの14日間は、
至福の読書体験だった。
文句なく、今年読んだ本のベスト1です。


最後に余計な一言を。
この物語って、4700枚にも及ぶ
壮大な○○○○○○○○○でもあったんですねぇ。

あと、ついでだから書いてしまおう。
本書は前後編で映画化されるとのことだ。
長大な原作をどうまとめるかも気になるけど、キャストも気になる。

公式サイトによると、この映画のために
1万人に及ぶオーディションを実施し、
そこから選ばれた中学生たちがメインとなるとのこと。

決定したキャストも載ってる。

藤野涼子役のお嬢さんは、ほぼイメージにぴったり。
原作通りの "可愛さが売り物ではない、凛とした美人" だと思う。
成人後の涼子は尾野真千子。これもいいねえ。

神原和彦役はちょっと背が高いかな。原作では小柄だったはずだけど
スクリーンでの見栄えを優先したのかも知れない。
でも顔つきはとても知的でいい感じである。

井上康夫はちょっと線が細いかな。
もっと図太いイメージがあったんだけど、
これもスクリーンでは違うのかも知れない。

藤野剛は佐々木蔵之介。うーん、剛はもっとゴツいイメージだけどなあ。
邦子の夏川結衣はいい感じ。

津崎は小日向文世。これも "豆ダヌキ" という感じではないなあ。
まあ上手な人だから大丈夫だろうけど。

涼子が、和彦が、そして康夫がスクリーンの中で動き回る。
それだけでも見に行く価値がありそう、って思ってしまうのは
やっぱりそれだけ原作が素晴らしいからだろう。

いや、たぶん私はこの映画、ホントに見に行くと思うよ。


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コメント 2

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2014-12-01 21:42) 

mojo

makimakiさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2014-12-02 20:23) 

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