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亡霊ふたり [読書・ミステリ]


亡霊ふたり (創元推理文庫)

亡霊ふたり (創元推理文庫)

  • 作者: 詠坂 雄二
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/10/12

評価:★★★★


 "高校在学中に人をひとり殺す" ことを目標に生きる高橋和也(たかはし・かずや)。その彼が出会ったのは "名探偵になりたい" という願望を抱く同級生・若月(わかつき)ローコ。
 殺人願望を抱く少年と名探偵志願の少女は、廃校を巡る奇妙な事件に巻き込まれていくが・・・

* * * * * * * * * *

 高橋和也は県立遠海(とおみ)西高校1年生。「高校在学中に人をひとり殺す」ことを夢見ている。殺人が難なく行えるようになれば、人生を自由に生きられると信じているから(おいおい)。
 現在は彼を含めても部員が3人しかいない弱小ボクシング部に所属し、トレーニングを続けている。競技人口が少ないこともあってか、県下でも上位の選手になっている。

 9月のある日、校外をランニングしていた和也は、半年前に閉校した私立・吏塚高等学校の校門前を通りかかる。亡霊が出るとの噂がある廃校だったが、そこに佇むひとりの女子高生がいた。若月ローコと名乗った彼女は、同じ遠海西高の同級生だった。

 廃校の中を探検するという彼女に、行きがかり上つき合うことになり、二人で校舎内へ侵入する。"亡霊" の正体を突き止めたいというローコが、「名探偵になりたい」という願望を抱いていることを知った和也は、彼女を殺人の "標的" とすることを決める。

 序盤に語られる二人の探検。その収穫は、廃校にしては厳重な警報設備があったことだけだったが、これをきっかけに、和也はローコの "探偵活動" に引っ張り込まれる。

 名探偵に必要な能力は、魅力的な謎に出会うこと。これを実践するために、校内での出来事に "謎" を積極的に(無理矢理?)見いだし、その解決のために奔走するローコ。
 中盤ではそんな二人の、遠海西高における探偵ぶりが描かれる。そして終盤にいたり、ローコが和也に意味不明な手紙を残して失踪してしまう・・・


 物語は和也の視点から語られていく。
 殺人願望と探偵願望という、およそ正反対な夢を持つ高校生二人が出会い、行動を共にするようになっていく。周囲の生徒たちは二人が恋愛関係にあると思っており、それが原因でラブコメっぽい展開に巻き込まれたりするが、和也にとってはローコはあくまで "標的" であり、恋愛対象ではない。

 しかし、お互い ”ぶっ飛んだ夢” を抱く者同士でもあり、和也はローコに対して一種の連帯感も感じている。そして物語が進むにつれて、ゆっくりとだが二人の関係も変化していく。
 だから彼女の行動も気になるし、失踪すれば探すことになる。それでも、隙あれば彼女を殺してやろうと思ってるところがなんとも屈折しているが(笑)。

 サブキャラたちの言動も面白い。とくに和也の所属するボクシング部の先輩二人の常軌を逸した奇行がものすごい。男子校ならともかく女子の前でこれをやるか?と呆れかえること間違いない。

 殺人者になれそうでなれない少年と、名探偵に手が届きそうにない少女。厨二病を拗らせたような二人のその思いが、終盤の事件を通じてどんな結末を迎えるのか。
 思ったこと、書きたいことはけっこうあるんだが、ことごとくネタバレにつながりそうなので書けないんだなあ。残念。



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