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人形島の殺人 呪殺島秘録 [読書・ミステリ]


人形島の殺人―呪殺島秘録―(新潮文庫nex)

人形島の殺人―呪殺島秘録―(新潮文庫nex)

  • 作者: 萩原麻里
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2023/01/30

評価:★★★★


 "僕" の幼馴染みで民俗学オタクの三嶋古陶里(みしま・ことり)が姿を消した。実家のある壱六八島(いろはじま)へ向かったのだ。そこは、いにしえの時代に呪術を執り行っていた一族が流されたと伝わる "呪殺島" のひとつ。古陶里もまた、呪術師の一族・壱六八家の血を引いていたのだ。
 彼女を追って島を訪れた "僕" が遭遇したのは、壱六八家を襲う連続殺人事件だった・・・
 『呪殺島』シリーズ、第3巻。

* * * * * * * * * *

 年末に起こった前作『巫女島の殺人』から約10ヶ月後の11月上旬。"僕" の幼馴染みで民俗学オタクの三嶋古陶里(みしま・ことり)が姿を消した。生家のある壱六八島(いろはじま)へ向かったという。

 いにしえの時代に呪術を執り行っていた一族が流されたと伝わる "呪殺島" は全国で複数確認されているが、壱六八島はそのひとつ。古陶里もまた、呪術師の一族の血・壱六八家を引いていたのだ。

 彼女を追って島を訪れた "僕" が遭遇したのは、崖に吊された女性の死体。そしてそれを見上げている人たち。その中には壱六八家の姉弟、千姫(ちひろ)と和亀(かずき)がいた。

 彼らによると、死体は昨日やってきて夜には姿を消した客人、すなわち古陶里だという。しかし崖から下ろした死体を検分した彼らは驚愕する。それは二人の姉・万姫(まき)だったのだ。だが死体発見の知らせで二人が壱六八家を出たとき、万姫はまだ家の中にいたのだという。

 殺人の容疑者扱いをされた "僕" は壱六八家へ "連行" され、この旧家の内情を知らされる。

 複数の家業を持つ資産家でもある壱六八家、その当主だった壱六八真人(まひと)はこの夏に急死し、暫定的に彼の姉・御津代(みつよ)が当主を継いでいる。
 真人には本妻との間に四人の子がいる。万姫・千姫の双子姉妹と和亀・伊鶴(いづる)の双子兄弟だ。壱六八家では代々双子が生まれてきた。これは壱六八家が島に渡ってきてから連綿と続いてきたのだという。

 そして、島で唯一の寺・龍力寺(たつりきでら)の住職の娘・三嶋桜(さくら)と、真人の間に生まれたのが古陶里だった。
 当然ながら古陶里は壱六八家から疎まれ、認知もされないままに桜は娘と共に島を出た。そして "僕" と同じ児童福祉施設に古陶里を預けた後、交通事故で世を去った。これが古陶里の出自だった。

 壱六八家に滞在する "僕" に向けられる敵意のまなざし。その一方で、壱六八家の者たちが次々に命を落としていく。古陶里はどこにいるのか? 一連の事件にどんな関わりを持っているのか?


 『壱六八家殺人事件』という別名をつけたくなるくらい、地方の閉鎖的な旧家に取り憑いた因習が事件を引き起こしていく。ひと言で言ってしまえば "血の呪縛" というか、旧弊的で不合理な価値観が、その家の人々をがんじがらめに縛り付けていく。
 その最たるものである和亀くんなんか、"しがらみ" がそのまま服を着て歩いてるようなキャラで、登場時から "嫌な奴オーラ" 全開なんだが、読んでいるとだんだん可哀想に思えてくる(笑)。

 もちろんそこから抜け出そうという動きもあるが、それがまた新たな葛藤を生み、さらなる悲劇の引き金になっていく。
 そんな話を、時代を現代に設定して描こうというのだから、本土から離れた孤島という舞台は必然なのだろう。

 ヒロインである三嶋古陶里の出自(実はこれにもひとひねりあるのだが)が明らかになる(あわせて○の○○や○○まで判明する)本作で、シリーズ的には一区切りとなるのだろう。

 古陶里の事情のみを鑑みればここで完結してもおかしくないが、読んでみた感じではまだ続きそう。それでもターニング・ポイントにはなりそうな、大事な巻ではあるだろう。
 古陶里の出自も全てが語られてはいない気もする。続巻を期待しよう。



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