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鹿の王 ユナと約束の旅 [アニメーション]


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まずは公式サイトの「STORY」から引用。

 かつてツオル帝国は圧倒的な力でアカファ王国に侵攻したが、突如発生した謎の病・黒狼熱(ミッツァル)によって帝国軍は撤退を余儀なくされた。
 以降、二国は緩やかな併合関係を保っていたが、アカファ王国はウィルスを身体に宿す山犬を使ってミッツァルを再び大量発生させることで反乱を企てていた。
 ミッツァルが国中で猛威を振るう中、山犬の襲撃を生き延びたヴァンは身寄りのない少女ユナと旅に出るが、その身に病への抗体を持つ者として、治療薬開発を阻止したいアカファ王国が放った暗殺者サエから命を狙われることになる。
 一方、治療薬を作るためヴァンの血を求める医師のホッサルも懸命にヴァンを探していた―― 。
 様々な思惑と陰謀が交錯した時、運命が動き始める。

 原作は上橋菜穂子の長編小説。文庫版で4冊、総ページ数は1000ページを超える。単純に考えてそのまま映画化したら最低でも5~6時間になるだろうし、TVアニメにしても余裕で2~3クールくらい作れるだろう。

 それを2時間弱の尺に収めるために、内容の刈り込みが行われてる。
 キャラ同士の関係性では、ヴァンとユナの ”親子の絆” にクローズアップして、他の要素はかなり省かれてしまった。
 ”黒狼熱” の治療法についてもかなりの改変がある。これは観客にわかりやすくするという目的もあるだろう。
 それ以外でも、とにかく ”尺がないから入らなかった” であろう要素は盛り沢山だ。

 逆にプラスされた要素もある。全体的にファンタジー描写が多く盛り込まれていることだ。映像で見せられるんだから、これは当然のことだろう。
 「ファンタジー小説なんだから当たり前じゃない?」そう思う人もいるだろう。でも、この作者の書く作品は、『精霊の守り人』もそうだったけど、舞台こそ架空の異世界だが魔法的・幻想的な要素は非常に少ない。
 この映画の原作もファンタジー要素はあるけれど、大部分は ”こちらの世界” とほぼ同じ条件・環境での生活が描かれる。それがこの人の特徴でもある。

 いろいろ書いてきたけど、小説と映画は別物だから改変自体は悪いことではないと思う。単体の映画としてみれば、それなりにまとまっていて分かりやすい話になっていると思う。原作未読で映画が初見という人の感想はどうなのか知りたいところではある。

 ただまあ、原作を読んでいる人からするとモヤモヤが残る映画ではあるかな。長大な物語故にキャラや場面にも愛着が出てくる。個々の読者にもそれぞれ贔屓のところができていてもおかしくないし、その扱いが小さかったり無視されていたらやっぱり哀しいよねぇ・・・

 私の場合、いち押しのキャラはサエさん。
 ヴァンを付け狙う刺客の女性なのだが、次第に彼に惹かれていってしまう役回り。彼女には哀しい過去があるのだが、そのあたりの描写はバッサリ。
 本作のメインヒロインはもちろんユナなんだけど、”大人枠” では間違いなくサエさんだからねぇ。

 原作は長大で、決して明るいとは言えない物語なのだけれども、未来に希望を感じさせる素晴らしいエンディングを迎える。
 物語終盤でのサエの ”決断” も、その重要な要素になってるのは間違いない。それぞれの家族を喪った3人が、血のつながりではなく心がつながることによって ”家族としての再生” を果たす。
 だけどそこのところもバッサリ。エンドロールの後に若干補足されてはいるのだけどね・・・。

 映画前半のヴァンとユナの牧歌的な生活のシーン。この2人に焦点を当てた構成になったが故に、ここが大事なのは百も承知なのだが、1分でもいいから削ってサエさんの描写に割いてあげて欲しかったなぁ、って思ったり。

 声優陣について。
 ヴァンは堤真一。野太い声が意外とあってるので私としてはOK。
 ホッサルの竹内涼真はちょっと線が細いかなぁ。
 サエの杏さんは、そもそも台詞が少なすぎ(笑)。刺客としての鋭さがちょっと足りない気もしたり。
 こちらの2人は、やっぱり声優さんを使ってほしかったな。

 この3人以外はベテラン声優さん。皆さん達者な人ばかりなんだけど、なんと公式サイトにはキャスト一覧がない! 私が見落としているだけなのかも知れないが。もし存在してないなら、声優さんを軽んじてるよなあ・・・

 全く関係ない話なのだけど、観終わって近くの書店に行ったら『大怪獣のあとしまつ』のノベライズがあった。分量は文庫で200ページ弱。
 まあジャンルも異なるし、ノベライズとオリジナル小説では単純比較はできないけど、『大怪獣-』と『鹿の王-』は上映時間がほぼ同じ。かたや200ページ、かたや1000ページ超え。うーん。

 小説の原案・原作があって映画化され、かつ傑作と呼ばれてるものは、短編がベースになってることが多いって話を聞いたことがある。
 『2001年宇宙の旅』は2時間半あるけど、アーサー・C・クラークの短編小説が原案だったはず。
 長編原作がダメというわけじゃないけど、映画化のハードルは短編よりは高いのだろうなぁ・・・って思ったりする。

 『鹿の王 ユナと約束の旅』を観て,少しでも興味を覚えたら、ぜひ原作にあたってほしいなあ。映画とはまた違う ”旅” が体験できると思うから。


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本と鍵の季節 [読書・ミステリ]


本と鍵の季節 (集英社文庫)

本と鍵の季節 (集英社文庫)

  • 作者: 米澤穂信
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2021/07/01

評価:★★★★

 高校2年生の春、堀川次郎は図書委員会で松倉詩門(しもん)という男子生徒と知り合う。図書委員は回り持ちで図書室の当番を担当するのだが、この学校の図書室は至ってヒマで、当番の日の二人は専ら本を巡る話に花を咲かせている。
 そんな2人が巻き込まれる ”日常の謎” を巡る連作ミステリだ。

「913」
 図書委員会を引退した3年生・浦上麻里が図書館に現れる。彼女の祖父が家の金庫の鍵をかけたまま亡くなった。その金庫のダイアル番号を探り当ててほしいというのだ。
 2人は彼女の家を訪れ、金庫と対面する。祖父の残した言葉をヒントに何かを掴んだかのように見える松倉だったが・・・
 ”913” という数字を見て ”813” を連想してしまった私は、やっぱり怪盗ルパンのファンなのでしょうか。もちろんこちらの ”913” には、全く別の意味がありますが。

「ロックオンロッカー」
 堀川に誘われ、散髪屋を訪れた松倉。そこは20人以上の収容能力がありそうな広さの割に閑散としている。店員や店長の言動から、”あること” が進行中なのではないか、と察する2人だが・・・
 読者にもある程度の予測はつくだろうけれど、2人の眼力はそのさらに上をいく。

「金曜に彼は何をしたのか」
 期末テストの最中、職員室近くの廊下でガラスが割られるという事件が起こる。
何者かがテスト問題の盗難を企てたものと思われた。
 その ”容疑者” として名が挙がったのが2年生の植田昇(しょう)。普段から素行の悪いので有名な生徒だった。
 その弟で1年生の登(のぼる)が堀川と松倉に相談してきた。兄の無実を晴らしてほしい、と。
 日常の謎でアリバイものは珍しいかな。終わってみれば冒頭の会話からすでに伏線になっていて、ラストの切れ味も抜群。

「ない本」
 3年生が自殺した。生徒の間で不確定な情報が飛び交う中、図書館に3年生の男子・長谷川が現れる。彼は自殺した生徒・香田の友人だった。
 彼は香田が死ぬ直前、最後に読んでいた本が知りたいのだという。しかし図書の貸借は個人情報なので他者には開示できない。
 そこで堀川と松倉は、長谷川から聞き出した情報を手がかりにその本を探しだそうとするのだが・・・
 本の特定に至る推論もよくできてるが、ラストの展開はそれ以上に意外なもの。こりゃ確かに長谷川くんは困るわなぁ・・・

「昔話を聞かせておくれよ」
 ある日突然、昔話を始めた松倉。6年前に彼の父親が亡くなったのだが、その際に大金を残したのだという。しかしその行方が杳として知れない。
 しかし堀川は、松倉の父が残した遺品や手帖の記述を手がかりに、当時の様子を推測し始める・・・

「友よ知るなかれ」
 「昔話-」の後日談というか完結編。「昔話-」のラストで解明された事実の中には、読者が疑問を憶える箇所がいくつか存在する。しかしそれも実は伏線になっていて、こちらの話の中できっちり説明がつけられる。
 そして松倉の父が残した ”隠し財産” の正体、さらには松倉自身が抱えた秘密も明らかに。

 ミステリで主人公が2人組というと、ホームズ役とワトソン役が割り振られるのが定番だが、本書はいささか異なる。

 洞察力・推理力については、やや松倉が上かなとも思うが、堀川も能力的にはかなり拮抗しているようにも思う。
 時には松倉の気がつかない部分にまで思いが及んだりするし、ラストの二話「昔話-」「友よー」においては謎を解明する主体となる。
 ホームズとワトソンというより、お互いが補完し合うことによって ”探偵役” として成立している、という感じだ。

 本書はミステリではあるけど、青春小説でもある。2人が解明する事件の真相には、かなり苦いもの、後味の悪いものもある。
 かと言って読後感が重くならないのは、この2人組のキャラも大きいかと思う。なれ合うこともおもねることもなく、お互いを対等に認め合っていて、2人の距離感は適度かつ絶妙な気がする。こういう2人組の主人公って、あまり見たことが無いんじゃないかな。

 2人の物語はここで終わりではなく、続編が書かれているらしいので、そちらも期待してしまう。


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大怪獣のあとしまつ [映画]


 とにかくネットでの評判が悪いみたいで、観に行くのは正直心配だったんだけどね・・・でも、大丈夫でしたよ(笑)。
 私はこの映画、嫌いじゃない。むしろ好きな部類に入る。たしかに欠点もあるとは思うけど、115分の上映時間中、私は充分に楽しみましたよ。

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 ではまず、公式サイトからあらすじを引用すると・・・

 人類を未曽有の恐怖に陥れた大怪獣が、ある日突然、死んだ。
 国民は歓喜に沸き、政府は怪獣の死体に「希望」と名付けるなど国全体が安堵に浸る一方で、河川の上に横たわる巨大な死体は腐敗による体温上昇で徐々に膨張が進み、ガス爆発の危機が迫っていることが判明。

 大怪獣の死体が爆発し、漏れ出したガスによって周囲が汚染される事態になれば国民は混乱し、国家崩壊にもつながりかねない。終焉へのカウントダウンは始まった。
 しかし、首相や大臣らは「大怪獣の死体処理」という前代未聞の難問を前に、不毛な議論を重ね右往左往を繰り返すばかり・・・。

 絶望的な時間との闘いの中、国民の運命を懸けて死体処理という極秘ミッションを任されたのは、数年前に突然姿を消した過去をもつ首相直轄組織・特務隊の隊員である帯刀(おびなた)アラタ[山田涼介]だった。
 そして、この死体処理ミッションには環境大臣の秘書官として、アラタの元恋人である雨音(あまね)ユキノ[土屋太鳳]も関わっていた。

 果たして、アラタは爆発を阻止し、大怪獣の死体をあとしまつできるのか!?
そして彼に託された本当の〈使命〉とは一体・・・!?

 基本的には喜劇。突然死んだ大怪獣の死体処理を巡るドタバタで笑わそうという狙いがあるのだろうけど、そのあたりのギャグが寒くてスベりっぱなし。まあそのへんが酷評の原因のひとつか。
 内閣の大臣たちが縦割り行政を盾に、死体処理を押しつけ合うところから始まるところはまだ笑えるが、国防大臣(岩松了)の飛ばす下品な下ネタギャグに眉をひそめる女性客は多そう。あれはセクハラだよねぇ。

 作品世界の中では ”国防軍” というのが存在していて、怪獣の死体処理にはまずそちらが乗り出していく。その方法というのが「凍結させる」というもの。
 だけど、じゃあ凍結させた後どうするのかというのは劇中で説明されない。細かいとこかも知れないが、そういうところまできっちり示していかないといけないよねぇ。荒唐無稽な物語だからこそ細部は大事だ。そういう詰めの甘さがある脚本も、本作の評価を落とすところだろう。

 喜劇とはいえ、国防軍も特務隊も含めて、とにかく現場で命をかけて死体に対峙している人たちの描写はかなりリアル。特務隊長・敷島[真島秀和]なんて、笑顔のシーンは皆無だよ。だからこそ、彼らのバックボーンはしっかり描いて欲しいなあと思った。

 環境大臣(ふせえり)をはじめ、政府内では、怪獣の死体処理を自分の利益に結びつけようという輩がうごめき始めるが、その筆頭は首相秘書官を務める天音正彦(濱田岳)。元特務隊員で、ユキノの夫でもある。

 この正彦が全編にわたって陰謀を巡らす役回り。ユキノの元カレであるアラタを死体処理の責任者に任命するが、裏では足を引っ張り、失敗させようとする。未だアラタに想いを残すユキノへの嫉妬がそうさせるのだが。

 さて、その主役のアラタだが、3年前に謎の失踪を遂げ、2年間消息不明に。その間にユキノは正彦と結婚してしまうのだが、1年前に姿を現し特務隊に復帰している。その間、何処で何をしていたのかは最後まで謎なのだけど・・・

 とはいっても、作中の描写からある程度の予測はつく。というか、この日本という国に生まれて、幼少時から浴びるように特撮TVや特撮映画を見てきた人なら分かるよねぇ・・・

 でもまあ、「いくらなんでもそれはないだろう」という気持ちもあった。
 しかしラストに至り、「ああ、やっちまった」となる。

 断っておくがこのラスト、私は嫌いじゃない。だけど、この展開について行けない人も多いだろうというのはわかる。
 山田涼介や土屋太鳳のファンです、ってだけで観に来た人には予想の斜め上過ぎるだろうし、『シン・ゴジラ』みたいなリアル路線を期待した人は、裏切られたって思うだろうし。
 アラタ&ユキノ&正彦の三角関係の決着も、このラストでどこかへ吹っ飛んでしまうので、そのあたりも不評の原因かも知れない。

 観る人を選ぶ映画だとは言える。波長が合えば楽しめるし、合わなければ拒絶反応が起こるだろうというのもわかる。

 うーん、ラストの展開について、ネタバレしないように書くにはやっぱり限界があるなぁ・・・。

 ひとつヒントというかキーワードを挙げると、映画のかなりはじめの方に
 「deus ex machina」(機械仕掛けの神)という言葉が登場する。

 wikiには「劇の内容が錯綜してもつれた糸のように解決困難な局面に陥った時、絶対的な力を持つ存在(神)が現れ、混乱した状況に一石を投じて解決に導き、物語を収束させるという手法」とある。
 日本の特撮作品にも、そういうのがあるでしょう・・・?


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消人屋敷の殺人 [読書・ミステリ]


消人屋敷の殺人 (新潮文庫)

消人屋敷の殺人 (新潮文庫)

  • 作者: 深木 章子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/04/25
  • メディア: 文庫

評価:★★★

 日影荘は、東京から車で5時間ほどの距離にあるQ半島、そこでも秘境と呼ばれる軽磐(かるいわ)岬の突端にある断崖上に立てられた武家屋敷だ。

 明治9年、反政府運動を企てた者たちがこの屋敷に立て籠もった。しかし周囲を官憲が取り囲く中、20人近くの者が屋敷内から姿を消してしまう。それ以来、ここは ”消人屋敷” と呼ばれるようになった。

 そして現代。
 女子大生・幸田真由里は、書店でベストセラーになっている『鬼人の杜(もり)』(流星社・刊)という小説を目にする。
 その内容は、数年前に真由里の兄・淳也が書いたものと全く同じだった。しかし文章量は増え、文体も異なっている。
 作者の「黒崎冬華(とうか)」は覆面作家で、深山大輝と西条かほりという2人の合作ペンネームだという。

 淳也は3年前に「作家になる」といって大学を中退して家を出て、以後は音信不通になっていた。ならば「黒崎冬華」の2人のどちらかが兄ではないか?

 淳也の行方を捜し始めた真由里は、新城篤史という人物が兄のアパートの保証人になっていたことを突き止める。しかし、その兄でフリーライターの新城誠に会ったところ、篤史もまた失踪しているのだという。

 黒崎冬華の正体が淳也と篤史ではないか? しかし覆面作家に対する流星社のガードは堅く、情報がつかめない。
 そんな中、真由里と誠に招待状が届く。差出人は黒崎冬華。指定の日時までに日影荘に来いというものだ。

 日影荘にやってきた2人は、同じく招待状を受け取った文芸評論社の女性編集者とともに、屋敷の住人たちに会う。
 そこにいたのは「黒崎冬華」と名乗る男女2人組、そして流星社の黒崎担当編集者が2人。だが彼らはそんな招待状を出した覚えはないという。

 対面してみて分かったが「黒崎冬華」たちは淳也と篤史ではなかった。しかしそれならば、淳也の書いた作品との共通点は何を意味しているのか?

 そこへ折からの豪雨が襲い、日影荘の離れが崖下へ崩壊、そこにいた流星社の編集者2人は行方不明に。
 また道路にも土砂崩れが起こり、日影荘は陸の孤島と化す。さらに何者かが電話線を切断、外部との連絡手段さえも失ってしまう。

 日影荘の中に残された5人だったが、彼らをさらなる惨劇が襲う・・・

 読んでいくと、ところどころ「?」って引っかかるとこが出てくる。それは中盤以降になるとより頻度が上がるのだが、それが何処につながるのかは見えない。まあそこが本書のキモなので、そう簡単には見破れないよねぇ。

 もちろん終盤近くにはそれが明らかになるのだが・・・うーん、”この手” で来たかぁ・・・という感じですかね。
 このあたりは感想を書くのが難しい。何を書いてもネタバレになりそう。

 クローズド・サークルというのは、事件が進行する(殺人が起こる)たびに容疑者が減っていく、という難点があるのだけど、なるほど、こういう方法もアリなんですね。



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「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 後章 -STASHA-」を観てきました [アニメーション]



※本編のネタバレはありません。

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 記事のタイトルにあるとおり、昨日(2/5)、「2205 後章」を観てきました。
 詳しい感想もどきは後日アップしますが、これだけ書いておきましょう。

 私はこの作品にとっても満足しております。
 制作スタッフには、素晴らしい仕事をして頂いたと思ってます。

 場所は新宿ピカデリー。舞台挨拶付きの回です。前章の時も舞台挨拶を観ましたから、後章でも・・・と申し込んでみたら、運良く当選させて頂いて。

 とはいっても、埼玉の片田舎からは新宿は決して近くはない。
 私は5時半に目覚ましをかけてきっちり起きましたが、かみさんは既に活動を開始してました。
「やっと起きてきたね。あたしは4時から起きてるわよ」
 早起きはいいんですが、上映中に寝てしまうんじゃないか心配になりました。なにせこの人は七色星団の時に寝落ちしたという過去がありますからねぇ・・・

 あれももう9年位前の話だねぇ。時の流れが速すぎる。
 ああ、何もかもみな懐かしい・・・

 閑話休題。
 早起きのおかげで予定よりも1本早い電車に乗り、8時20分にはピカデリーに到着。入り口には例によってヤマトの模型が。

 「撮るんでしょ?」とかみさんに言われたら撮らないわけにはいかない。
 何枚か撮ってスマホをしまったら「もういいの?」
 かみさんもスマホを構えてたので、「俺はもういいから撮れば?」
 「いや、ヤマトを撮ってるあなたを撮ってたから、私ももういい」
 さぞかし一生懸命撮ってたんでしょうなぁ、私は。

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 さて、エスカレーターで上の階のロビーに上がると、ものすごい人だかり。
いままで何回か新ピカに来たことはありましたが、これは私の知る限り最大規模の人数ですな。よくみたら物販にも長蛇の列が・・・ヤマトファンはグッズに対して金に糸目はつけないようです。

 さすがにロビーが ”密” になりすぎてたみたいで、9時上映なのに8時半には開場のアナウンスが。私たちも早めに入場しました。

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 席は完売のはずなんですが、私たちの席の隣には3人分くらい空席が。ひょっとして感染者になったり、あるいは濃厚接触者になったりとかしてしまったのかなぁと思ったり。
 私の職場もかみさんの職場も感染者が出てます。私たちが無事に鑑賞できたのも幸運に恵まれたのでしょう。

 予告編に続いていよいよ本編の上映開始。
 あらすじ「これまでの宇宙戦艦ヤマト」、前章の担当は芹澤(玄田哲章氏)でしたが、後章は別の方の渋いお声が聞けます。
 それでは(たぶん)ネタバレしない範囲でいくつか。

・古代進という男の ”操縦法” を完璧にマスターしている森雪さん。
・まず一発殴ってから話そうとする古代。
 殴りだしたら止まらないデスラー(笑)。
・意外なキャラが再登場。
・ラスト近くのCVに「これってもしかして?」
 エンドロールを見て仰天、「や、やっぱり!」
・終盤は涙でスクリーンが滲んでしまいました。

 上映終了後、舞台挨拶開始。その模様はネットにもたくさん上がってるので割愛。

 舞台挨拶も終了してまたロビーに戻ってきましたが、相変わらずの物販の大行列。

 今回はなんと、12時からの舞台挨拶の回も応募して当選してたので、続けて鑑賞することに。
 こちらは上映前の舞台挨拶だったので、ネタバレトークはなし。ちょっとアブナイのはあったけど(笑)。
 ちなみに「この回が初見という方は挙手してみて」という問いかけに手を挙げた人は1~2割くらいかな。みなさん前日(2/4)か、今日の9時の回に参加されてたのですね。

 舞台挨拶についての、ネットでのパワーワードは「宇宙のお姉さん」らしいですね。その言葉が出た瞬間を生で見られたのも、とても楽しかったです。

 そして本編上映。1回目よりも2回目の方が涙がたくさん流れてきました。感染予防でマスク着用での鑑賞なのですが、マスクの内側は鼻水でぐじゃぐじゃになってしまいました(汚い話でスミマセン)。

 さて、2回目上映の後にまたロビーに戻ってきましたが、相変わらずの物販の大行列が続いてます。さすがにあの ”密” の中に割って入る勇気は出なかったので、買い物は諦めて帰ることに。

 でも、どうしてもパンフレットだけは欲しかったので、帰る途中でさいたま新都心に寄り道し、MOVIXさいたまで買ってきました。こっちも物販に行列はありましたけど、新ピカと比べれば可愛いもんでした。

 来週の金曜にはBDが届くんですけど、それまでは何回か観に行くことになりそうです。


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鎮憎師 [読書・ミステリ]


鎮憎師 (光文社文庫 い 35-17)

鎮憎師 (光文社文庫 い 35-17)

  • 作者: 石持浅海
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2021/06/16
  • メディア: 文庫


評価:★★★

 冒頭で語られるのは、ある中学生のいじめ事件。
 これによって中学生2人を含む3人の死者、そして重傷者が発生する。
 加害者と被害者、双方の間に起こった復讐の連鎖によるものだった。

 本書のタイトルにある ”鎮憎師” とは、そういう憎しみの連鎖を断ち切り、事件を ”上手に終わらせる” 者のことを指す。

 そして本編。

 赤垣真穂は大学時代のサークル仲間の結婚式に出席する。その二次会に現れたのは、かつて同じサークルにいた熊木夏蓮(かれん)。
 彼女は3年前、”ある事件” に関わって大学を中退、故郷の広島に帰った後は友人たちと縁を切り、音信不通になっていた。

 しかしサークル仲間の一人、桶川ひろみが彼女の消息を掴むことに成功していた。夏蓮は彼女の招きで、この二次会に現れたのだ。

 新郎新婦、真穂、ひろみを含めた8人の仲間は驚きながらも夏蓮を迎え入れ、旧交を温める。その日は三連休の初日だったこともあり、翌日も集まることを約束して解散する。

 しかし翌朝、夏蓮は宿泊していたホテル近くで絞殺死体となって発見される。警察の事情聴取から解放された8人は、集まって情報交換と事件の検討を始める。

 この8人の出身校は理系の大学であり、大学院で研究を続けている者や高校で理科の教師になった者もいる。
 みな理詰めの議論を苦にしないようで、いろいろな可能性の検討が繰り返される。
 このあたりの ”推理バトル” は本書の中でも読みどころの一つだろう。

 ”ある事件” が原因ととすると、夏蓮に殺意を抱く可能性は、多かれ少なかれメンバー全員が持っている、あるいは持っていてもおかしくない。
 よって結論は・・・「犯人はこの8人の中の誰かである」。

 この中で真穂は、夏蓮との関わりがいちばん薄い人物として設定されている。言い換えれば、事件を最も客観的に観ることができる人物だ。
 物語は主に彼女の視点から語られていくことになる。

 真穂は、弁護士をしている叔父・新妻順司に相談する。
 彼は8人の人間関係から、夏蓮を殺した犯人への復讐を実行する者が現れることを懸念する。新妻は冒頭のいじめ事件の関係者の一人だったのだ。
 そこで新妻は、真穂とひろみに沖田洋平という青年を紹介する。

 沖田は、過去に新妻と協力して事件関係者の憎しみを ”鎮めた” ことがある。新妻は彼のことを「鎮憎師」と呼んでいた・・・

 というわけで、今回登場する沖田だが、通常の探偵とはひと味違う。
 彼は、憎しみの連鎖を止めるには、関係者がみな ”納得” することだ、というのだ。

 だから彼は真穂とひろみ以外のメンバーとは顔を合わせない。2人に対してもアドバイスをするだけで、”解決” を真穂たち当事者に委ねるのだ。
 沖田の導きに従った真穂とひろみは、最終的に自分たちだけで真犯人をつきとめることになる。

 もちろん沖田は、真穂たちよりも先に事件の真相や犯人に辿り着いているのだが、それを真穂たちに明かすことなく、終盤まで傍観者であり続けるわけだが・・・

 真相解明よりも復讐の連鎖を食い止めることを第一義にするという、なかなか思い切った設定で、そこのところが通常のミステリとひと味違うところだろう。



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跡形なく沈む [読書・ミステリ]

 

跡形なく沈む (創元推理文庫)

跡形なく沈む (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2013/02/28
  • メディア: 文庫

 


評価:★★★☆

 


 舞台はスコットランドの小都市シルブリッジ。

 


 ケン・ローレンスは大学を放校処分となってシルブリッジ自治区へ帰郷し、区役所で閑職に就いていた。私生活も荒み、人妻であるリズと同棲している始末。

 


 リズは奔放な女で、いろんな男をしょっちゅうベッドに引っ張り込んでいた。ケンはそんな彼女との生活に疲れ果てている。

 


 リズの別居中の夫ヴィクター・ロスは区議会議員。彼は区役所の職員ジュディ・ハッチングスと交際中で、彼女との結婚を考えていた。

 


 ジュディはかつてケンと婚約していたが、彼の放校によって解消となった。現在はヴィクターとつきあっているが、彼女の中には未だケンへの想いが忘れがたく残っていた。

 


 という、なかなか複雑な人間関係の渦中へ、ルース・ケラウェイという女性が現れるところから物語は始まる。

 


 ルースは、イギリスとフランスの間に浮かぶジャージー島で育った。父親はおらず、ルーズは私生児として産まれた。

 母親が病死し、その遺品から父親の手がかりを得たルースはイギリス本土へ渡り、シルブリッジにやってきた。さらに、かつての母の職場であった区役所でタイピストとして採用され、働き始める。

 


 美しい容姿を持つが極めて狷介で、他人と打ち解けることは全くない。心の中に何らかの策謀を秘めているようでもある。

 ルースは父親を探すとともに、なぜか数年前の協議会議員選挙の不正行為についても調べ始めた。

 そんな彼女の行動は区役所の職員や議員たちの知るところとなり、次第に不穏な空気が醸し出されていく。

 


 そんな中、リズが殺されるという事件が起こる。そして数日後、ルースが下宿先から姿を消してしまう。

 ルースが失踪する直前、最後に会う予定だった相手はロバート・ハッチングス議員。彼はジュディの父親だった・・・

 

 


 物語は主にジュディとケンの視点から語られる。この2人がほぼ主人公といっていいだろう。

 


 ジュディは、ヴィクターとケンという二人の男性の間で揺れ動いたり、父親のロバートと兄のトムが揃って殺人事件の容疑者になったり、ルースがロバートの隠し子ではないかとの疑惑が持ち上がったりと、なかなか波瀾万丈なイベントが待ち受ける人生(笑)。

 


 一方、ケンはリズを喪った後、改めて自分がまだジュディを愛していることを自覚し、彼女との仲を修復しようと奔走し始める。

 しかしジュディの態度は極めて冷たい。でもこれは、いわゆる ”ツンデレ” って奴ですな(笑)。

 


 以前アップした『三本の緑の小壜』でも書いたが、本書でもラブコメ要素は健在。

 ジュディに何回拒絶されようとも挫けないケンはたいしたものだし、ジュディも内心では悪い気はしていないみたいだし(笑)。

 殺人事件の推移と並行して、この2人の恋愛模様もまた本書の読みどころだ。

 

 


 終盤では一転してサスペンス調になる。犯人を追ってのカーチェイスとか、なかなか意外な展開が待っている。

 


 そして明らかになる真相。まあ分かってみれば極めてシンプルで明快なのだけど、いつもながらそれが分からないんだよねぇ。

 ケンやジュディ以外にも、一癖も二癖もある登場人物ばかりで、そんな人々のドロドロの愛憎劇や、腹に抱えた陰謀が絶妙な目眩ましになってるのはいつもの通り。

 


 ミステリとしてもよくできてるし、ラブコメとしても楽しい。小説としての面白さを充分に味わえる作品だ。

 

 


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流れ星と遊んだころ [読書・ミステリ]


流れ星と遊んだころ<新装版> (双葉文庫)

流れ星と遊んだころ<新装版> (双葉文庫)

  • 作者: 連城 三紀彦
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2021/06/10
  • メディア: 文庫

評価:★★☆

 主人公は北上梁一(りょういち)。銀幕の大スター・花村陣四郎(通称 ”花ジン”)のマネージャーをしている。
 しかしこの花ジンは凄まじいパワハラ男で、梁一は日夜それに耐え続けていた。

 ある夜、梁一は新宿のバーで鈴子という若い女に出会う。彼女に誘われるままに横浜へやってきたが、そこで秋葉という男に襲われる。二人はグルだったのだ。

 しかし、秋葉に不思議な魅力を感じた梁一は、逆に秋葉へ交渉を持ちかける。花ジンをスターの座から引きずり落とし、秋葉を新たなスターとして世に送り出そうという計画だ。

 花ジンのスキャンダルを暴露し、主演予定の映画から降板させる。さらに監督を通じてその映画に秋葉を押し込む。
 そのために梁一は手段を選ばない。芸能界の表も裏も知り尽くした彼の、手練手管が序盤の読みどころか。

 梁一、鈴子、秋葉の3人がスポットライトを浴びる場所を目指し、芸能界の底から一歩ずつ這い上がっていくさまが語られていく。
 しかしこの3人、決して一枚岩ではない。男2人に女1人という単純な三角関係とも異なる、複雑な愛憎劇が綴られていくのだけど、3人とも決して本当の思いを口にすることはない。徹頭徹尾、嘘のつき合い、だまし合いを繰り返していく・・・

 連城三紀彦のことであるから、単純な芸能サクセス・ストーリーになるはずもない。

 まず、過去に起こった行きずりの殺人事件を巡る秘密が、3人の行く手に暗雲となってたちこめていく。
 さらに、語りもまた独特だ。一人称で語られる部分と、三人称で語られる部分が頻繁に入れ替わるのだ。
 このあたりも、何らかの作為が潜んでいそうな気がむんむんとする。だけど、それが何かは見破れないんだよねぇ。流石は連城三紀彦。

 物語は大小いくつかのどんでん返しを含んで、二転三転どころか五転六転し、登場人物同士が欺し欺されていく。
 それは主役3人に限らず、出てくる者みんなが多かれ少なかれ自分を偽っているから。それゆえに容易に物語の着地点が見通せず、最後まで作者に引きずり回されてしまう。

 しかし芸能界の大スター(綺羅星)を目指す物語のタイトルに ”流れ星” なんて言葉が入ってる時点で、主役3人組の愛憎のドラマが行き着く先が暗示されているように感じる。
 短篇ならまだしも、長編でこのラストはなぁ・・・

 でもまあ、真相を見破ろうとかの無駄な抵抗をしないで、それに身を委ねて素直に驚くのが本作の正しい読み方なんだろう。




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