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大怪獣のあとしまつ [映画]


 とにかくネットでの評判が悪いみたいで、観に行くのは正直心配だったんだけどね・・・でも、大丈夫でしたよ(笑)。
 私はこの映画、嫌いじゃない。むしろ好きな部類に入る。たしかに欠点もあるとは思うけど、115分の上映時間中、私は充分に楽しみましたよ。

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 ではまず、公式サイトからあらすじを引用すると・・・

 人類を未曽有の恐怖に陥れた大怪獣が、ある日突然、死んだ。
 国民は歓喜に沸き、政府は怪獣の死体に「希望」と名付けるなど国全体が安堵に浸る一方で、河川の上に横たわる巨大な死体は腐敗による体温上昇で徐々に膨張が進み、ガス爆発の危機が迫っていることが判明。

 大怪獣の死体が爆発し、漏れ出したガスによって周囲が汚染される事態になれば国民は混乱し、国家崩壊にもつながりかねない。終焉へのカウントダウンは始まった。
 しかし、首相や大臣らは「大怪獣の死体処理」という前代未聞の難問を前に、不毛な議論を重ね右往左往を繰り返すばかり・・・。

 絶望的な時間との闘いの中、国民の運命を懸けて死体処理という極秘ミッションを任されたのは、数年前に突然姿を消した過去をもつ首相直轄組織・特務隊の隊員である帯刀(おびなた)アラタ[山田涼介]だった。
 そして、この死体処理ミッションには環境大臣の秘書官として、アラタの元恋人である雨音(あまね)ユキノ[土屋太鳳]も関わっていた。

 果たして、アラタは爆発を阻止し、大怪獣の死体をあとしまつできるのか!?
そして彼に託された本当の〈使命〉とは一体・・・!?

 基本的には喜劇。突然死んだ大怪獣の死体処理を巡るドタバタで笑わそうという狙いがあるのだろうけど、そのあたりのギャグが寒くてスベりっぱなし。まあそのへんが酷評の原因のひとつか。
 内閣の大臣たちが縦割り行政を盾に、死体処理を押しつけ合うところから始まるところはまだ笑えるが、国防大臣(岩松了)の飛ばす下品な下ネタギャグに眉をひそめる女性客は多そう。あれはセクハラだよねぇ。

 作品世界の中では ”国防軍” というのが存在していて、怪獣の死体処理にはまずそちらが乗り出していく。その方法というのが「凍結させる」というもの。
 だけど、じゃあ凍結させた後どうするのかというのは劇中で説明されない。細かいとこかも知れないが、そういうところまできっちり示していかないといけないよねぇ。荒唐無稽な物語だからこそ細部は大事だ。そういう詰めの甘さがある脚本も、本作の評価を落とすところだろう。

 喜劇とはいえ、国防軍も特務隊も含めて、とにかく現場で命をかけて死体に対峙している人たちの描写はかなりリアル。特務隊長・敷島[真島秀和]なんて、笑顔のシーンは皆無だよ。だからこそ、彼らのバックボーンはしっかり描いて欲しいなあと思った。

 環境大臣(ふせえり)をはじめ、政府内では、怪獣の死体処理を自分の利益に結びつけようという輩がうごめき始めるが、その筆頭は首相秘書官を務める天音正彦(濱田岳)。元特務隊員で、ユキノの夫でもある。

 この正彦が全編にわたって陰謀を巡らす役回り。ユキノの元カレであるアラタを死体処理の責任者に任命するが、裏では足を引っ張り、失敗させようとする。未だアラタに想いを残すユキノへの嫉妬がそうさせるのだが。

 さて、その主役のアラタだが、3年前に謎の失踪を遂げ、2年間消息不明に。その間にユキノは正彦と結婚してしまうのだが、1年前に姿を現し特務隊に復帰している。その間、何処で何をしていたのかは最後まで謎なのだけど・・・

 とはいっても、作中の描写からある程度の予測はつく。というか、この日本という国に生まれて、幼少時から浴びるように特撮TVや特撮映画を見てきた人なら分かるよねぇ・・・

 でもまあ、「いくらなんでもそれはないだろう」という気持ちもあった。
 しかしラストに至り、「ああ、やっちまった」となる。

 断っておくがこのラスト、私は嫌いじゃない。だけど、この展開について行けない人も多いだろうというのはわかる。
 山田涼介や土屋太鳳のファンです、ってだけで観に来た人には予想の斜め上過ぎるだろうし、『シン・ゴジラ』みたいなリアル路線を期待した人は、裏切られたって思うだろうし。
 アラタ&ユキノ&正彦の三角関係の決着も、このラストでどこかへ吹っ飛んでしまうので、そのあたりも不評の原因かも知れない。

 観る人を選ぶ映画だとは言える。波長が合えば楽しめるし、合わなければ拒絶反応が起こるだろうというのもわかる。

 うーん、ラストの展開について、ネタバレしないように書くにはやっぱり限界があるなぁ・・・。

 ひとつヒントというかキーワードを挙げると、映画のかなりはじめの方に
 「deus ex machina」(機械仕掛けの神)という言葉が登場する。

 wikiには「劇の内容が錯綜してもつれた糸のように解決困難な局面に陥った時、絶対的な力を持つ存在(神)が現れ、混乱した状況に一石を投じて解決に導き、物語を収束させるという手法」とある。
 日本の特撮作品にも、そういうのがあるでしょう・・・?


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