流れ星と遊んだころ [読書・ミステリ]
評価:★★☆
主人公は北上梁一(りょういち)。銀幕の大スター・花村陣四郎(通称 ”花ジン”)のマネージャーをしている。
しかしこの花ジンは凄まじいパワハラ男で、梁一は日夜それに耐え続けていた。
ある夜、梁一は新宿のバーで鈴子という若い女に出会う。彼女に誘われるままに横浜へやってきたが、そこで秋葉という男に襲われる。二人はグルだったのだ。
しかし、秋葉に不思議な魅力を感じた梁一は、逆に秋葉へ交渉を持ちかける。花ジンをスターの座から引きずり落とし、秋葉を新たなスターとして世に送り出そうという計画だ。
花ジンのスキャンダルを暴露し、主演予定の映画から降板させる。さらに監督を通じてその映画に秋葉を押し込む。
そのために梁一は手段を選ばない。芸能界の表も裏も知り尽くした彼の、手練手管が序盤の読みどころか。
梁一、鈴子、秋葉の3人がスポットライトを浴びる場所を目指し、芸能界の底から一歩ずつ這い上がっていくさまが語られていく。
しかしこの3人、決して一枚岩ではない。男2人に女1人という単純な三角関係とも異なる、複雑な愛憎劇が綴られていくのだけど、3人とも決して本当の思いを口にすることはない。徹頭徹尾、嘘のつき合い、だまし合いを繰り返していく・・・
連城三紀彦のことであるから、単純な芸能サクセス・ストーリーになるはずもない。
まず、過去に起こった行きずりの殺人事件を巡る秘密が、3人の行く手に暗雲となってたちこめていく。
さらに、語りもまた独特だ。一人称で語られる部分と、三人称で語られる部分が頻繁に入れ替わるのだ。
このあたりも、何らかの作為が潜んでいそうな気がむんむんとする。だけど、それが何かは見破れないんだよねぇ。流石は連城三紀彦。
物語は大小いくつかのどんでん返しを含んで、二転三転どころか五転六転し、登場人物同士が欺し欺されていく。
それは主役3人に限らず、出てくる者みんなが多かれ少なかれ自分を偽っているから。それゆえに容易に物語の着地点が見通せず、最後まで作者に引きずり回されてしまう。
しかし芸能界の大スター(綺羅星)を目指す物語のタイトルに ”流れ星” なんて言葉が入ってる時点で、主役3人組の愛憎のドラマが行き着く先が暗示されているように感じる。
短篇ならまだしも、長編でこのラストはなぁ・・・
でもまあ、真相を見破ろうとかの無駄な抵抗をしないで、それに身を委ねて素直に驚くのが本作の正しい読み方なんだろう。