SSブログ

消人屋敷の殺人 [読書・ミステリ]


消人屋敷の殺人 (新潮文庫)

消人屋敷の殺人 (新潮文庫)

  • 作者: 深木 章子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/04/25
  • メディア: 文庫

評価:★★★

 日影荘は、東京から車で5時間ほどの距離にあるQ半島、そこでも秘境と呼ばれる軽磐(かるいわ)岬の突端にある断崖上に立てられた武家屋敷だ。

 明治9年、反政府運動を企てた者たちがこの屋敷に立て籠もった。しかし周囲を官憲が取り囲く中、20人近くの者が屋敷内から姿を消してしまう。それ以来、ここは ”消人屋敷” と呼ばれるようになった。

 そして現代。
 女子大生・幸田真由里は、書店でベストセラーになっている『鬼人の杜(もり)』(流星社・刊)という小説を目にする。
 その内容は、数年前に真由里の兄・淳也が書いたものと全く同じだった。しかし文章量は増え、文体も異なっている。
 作者の「黒崎冬華(とうか)」は覆面作家で、深山大輝と西条かほりという2人の合作ペンネームだという。

 淳也は3年前に「作家になる」といって大学を中退して家を出て、以後は音信不通になっていた。ならば「黒崎冬華」の2人のどちらかが兄ではないか?

 淳也の行方を捜し始めた真由里は、新城篤史という人物が兄のアパートの保証人になっていたことを突き止める。しかし、その兄でフリーライターの新城誠に会ったところ、篤史もまた失踪しているのだという。

 黒崎冬華の正体が淳也と篤史ではないか? しかし覆面作家に対する流星社のガードは堅く、情報がつかめない。
 そんな中、真由里と誠に招待状が届く。差出人は黒崎冬華。指定の日時までに日影荘に来いというものだ。

 日影荘にやってきた2人は、同じく招待状を受け取った文芸評論社の女性編集者とともに、屋敷の住人たちに会う。
 そこにいたのは「黒崎冬華」と名乗る男女2人組、そして流星社の黒崎担当編集者が2人。だが彼らはそんな招待状を出した覚えはないという。

 対面してみて分かったが「黒崎冬華」たちは淳也と篤史ではなかった。しかしそれならば、淳也の書いた作品との共通点は何を意味しているのか?

 そこへ折からの豪雨が襲い、日影荘の離れが崖下へ崩壊、そこにいた流星社の編集者2人は行方不明に。
 また道路にも土砂崩れが起こり、日影荘は陸の孤島と化す。さらに何者かが電話線を切断、外部との連絡手段さえも失ってしまう。

 日影荘の中に残された5人だったが、彼らをさらなる惨劇が襲う・・・

 読んでいくと、ところどころ「?」って引っかかるとこが出てくる。それは中盤以降になるとより頻度が上がるのだが、それが何処につながるのかは見えない。まあそこが本書のキモなので、そう簡単には見破れないよねぇ。

 もちろん終盤近くにはそれが明らかになるのだが・・・うーん、”この手” で来たかぁ・・・という感じですかね。
 このあたりは感想を書くのが難しい。何を書いてもネタバレになりそう。

 クローズド・サークルというのは、事件が進行する(殺人が起こる)たびに容疑者が減っていく、という難点があるのだけど、なるほど、こういう方法もアリなんですね。



nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ: