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怪盗ニック全仕事4 [読書・ミステリ]


怪盗ニック全仕事4 (創元推理文庫)

怪盗ニック全仕事4 (創元推理文庫)

  • 作者: エドワード・D・ホック
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/04/21
  • メディア: 文庫
評価:★★★

短編ミステリの名手である作者が残した
「怪盗ニック」シリーズは全87編。

そのうちの何割かは邦訳され、日本独自編集の短編集も出ていたが
この「全仕事」は、87編すべてを発表順に全6巻にまとめるもの。
本書はその第4弾で、1983~89年にかけて発表された15編を収録。
話数で言うと第45話~第59話である。

ニック・ヴェルヴェットは一風変わった泥棒。
彼が盗むのは、貴金属や宝石の類いではない。
"価値がないもの" や "誰も盗もうと思わないもの" に限るのだ。
本書でも、およそ価値がありそうもないものの依頼が続く。

「白の女王のメニューを盗め」
「売れない原稿を盗め」
「ハロウィーンのかぼちゃを盗め」
「図書館の本を盗め」
「枯れた鉢植えを盗め」
「使い古された撚り糸玉を盗め」
「紙細工の城を盗め」
「人気作家の消しゴムを盗め」
「臭腺をもつスカンクを盗め」
「消えた女のハイヒールを盗め」
「闘牛士のケープを盗め」
「社長のバースデー・ケーキを盗め」
「色褪せた国旗を盗め」
「医師の中華鍋を盗め」
「空っぽの鳥籠を盗め」


「白の女王-」で登場し、以後セミレギュラーとなるのが
女怪盗サンドラ・パリス。ニックネームはそのものズバリ、”白の女王”。

これはルイス・キャロルの「鏡の国のアリス」に登場する
”白の女王” から来ていて、キャッチフレーズは「不可能を朝食前に」。
その通りに早朝までに盗みを完了して、現場には
自身の名刺を残していくという、
アルセーヌ・ルパンか怪人二十面相かというくらい
自己演出が大好きな様子。ちなみに、
ニックと異なり、依頼があれば価値のあるなしに関係なく何でも盗む。

ニックとは最初のうちはライバル同士で、ニックが狙っていた獲物を
先にサンドラにさらわれてしまったりする。
もちろん彼女も、ニックの逆襲のおかげ警察に捕まったりするわけで。

しかしそのうちに奇妙な ”同業者意識”(?)が芽生えてきたみたいで、
抜きつ抜かれつな関係から、時には助け合う関係に。

しかし、そんなサンドラとの関係を、
ニックのパートナーであるグロリアが喜ぶはずはない。
でもサンドラの ”実力” は認めているみたいで
警察に拘束されたニックの救出をサンドラに依頼したりと
この二人の女性の関係もまた変化していく。

新レギュラーの登場は、シリーズのマンネリ化を
防ぐためのだったのだろうね。
ニックが価値のないものを盗んでいくだけのパターンだけだと
単調になりがちだし。

 日本での短編集1~3では、1冊あたりにこのパターンの短編が
 14~15編が収録されてるわけで、
 こればかり続けて読むのはいささか辛いかな。

 実際、「怪盗ニック全仕事2」に記事で、私はこんなことを書いてる。
 「面白いんだけど、この手のものばかりだとやっぱり飽きるかなあ。
  まあ、年に1冊というペースは正解だと思う」

作者もたぶんそのあたりは分かってて、
サンドラ初登場の「白の女王ー」が発表された1983年は、
シリーズ開始の1966年から数えると17年めで、話数でいうと45話め。
ここで新しいバリエーションを取り入れてきたということなんだろう。

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