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バチカン奇跡調査官 天使と堕天使の交差点 [読書・ミステリ]


バチカン奇跡調査官 天使と堕天使の交差点 (角川ホラー文庫)

バチカン奇跡調査官 天使と堕天使の交差点 (角川ホラー文庫)

  • 作者: 藤木 稟
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/11/22
  • メディア: 文庫
評価:★★★

カソリックの総本山、バチカン市国。
世界中から寄せられてくる "奇跡" 発見の報に対して
その真偽を判別する調査機関『聖徒の座』。

そこに所属する天才科学者の平賀と、
その相棒で古文書の解析と暗号解読の達人・ロベルト。
「奇跡調査官」である神父二人の活躍を描く第18弾。
短編集としては4巻目。


「ベアトリーチェの踊り場」
宝石商バッサーニが入手したのは、16世紀に処刑された
”悲劇の女性” ベアトリーチェ・フィンチが所有していたサファイア。
しかしそれ以降、不可思議な事件がバッサーニを襲う。
勤続30年の従業員が首のない幽霊を目撃した後に転落死を遂げ、
バッサーニの屋敷にもベアトリーチェの亡霊が出没し始める。
平賀とロベルトは ”悪魔払い” を依頼されるが・・・
このシリーズの短編は、ホラーが強かったりコメディ調だったりと
ミステリ要素の薄い作品が多いのだけど、
本作はラストで合理的な解決を見せる。
文庫で130ページとかなり長めで、分量が十分にあるのも大きいかな。
いつもながら超常的な現象を科学的に説明してみせるのは流石。

「素敵な上司のお祝いに」
秘密結社・ガルドゥネのメンバーで、
平賀とロベルトの宿敵でもあるジュリアは
結社の ”上司” である富豪ルッジェリの
誕生パーティーの開催を開くことになるのだが・・・
いやあこれはエグい。でもこのネタ自体は
何年か前にニュースで見た記憶がある。
そういうのを見逃さないで作品に仕込んでくるんだからたいしたもの。

「マスカレード」
秘密工作員エリザベートは、FBI捜査官ビル・サスキンスと偽装婚約中。
しかしこれはFBI内部に潜む ”敵” を探り出すためと、
ビルの両親もまた陰謀に加担していることが判明したためだ。
しかし生真面目なビルはエリザベートを両親に会わせようとしない。
そんなとき、ビルのアパートへ彼の母エミリーがやってきて・・・
ナイスバディで美人の工作員エリザベートが
”恋人” の母親に取り入ろうと大活躍の一編。
平賀とロベルト以外のサブキャラも多士済々だけど
その中でもエリザベートは大好だなあ。ビルの朴念仁ぶりも笑いを誘う。

「シン博士とカルマの物語」
朴念仁ぶりではビルを上回るシン博士の登場。
敬虔なジャイナ教徒であるシンは、
ある日一匹のネズミに怪我を負わせてしまう。
ジャイナ教では一切の殺生を禁忌としているため、
パニックになったシンは平賀とロベルトに助けを求めるのだが・・・
ネズミの容態に一喜一憂するシンの姿がコミカルに描かれる。
この作者さん、ほんといろんなキャラをうまく書き分けるよねえ。


長大なシリーズになったけど、飽きられずに続いているのは
毎回、新しいネタを持ち出してくるのもあるけど
キャラの多彩さも大きいんじゃないかな。

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