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多々良島ふたたび ウルトラ怪獣アンソロジー [読書・SF]

多々良島ふたたび: ウルトラ怪獣アンソロジー (TSUBURAYA×HAYAKAWA UNIVERSE)

多々良島ふたたび: ウルトラ怪獣アンソロジー (TSUBURAYA×HAYAKAWA UNIVERSE)

  • 作者: 山本 弘
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/07/23
  • メディア: 単行本



評価:★★★☆

「TSUBURAYA ✕ HAYAKAWA UNIVERS 01」と銘打った、
ウルトラシリーズを題材にした、怪獣SFアンソロジー。

各編の最後には、作者とウルトラ作品との出会いをテーマにした
エッセイがつき、イラストレーターも作品ごとに替えてあるという
豪華なつくり。


「多々良島ふたたび」山本弘
 『ウルトラマン』第8話「怪獣無法地帯」の後日談。
 巨大怪獣に襲われた多々良島の測候所。
 ただ一人生き残った所員・松井は、多々良島の学術調査団に参加する。
 しかし一行を乗せた船には密航者がいた。
 それは毎日新報記者・江戸川由利子だった・・・
 さすがは怪獣小説の第一人者(?)だけあって、ツボを押さえてる。
 多々良島に5体もの怪獣が一度に出現した意外な理由が明らかになり、
 由利子の登場も単なるカメオ出演に終わらないし、
 あの怪獣の命名秘話まで飛び出してくる。
 あと、イラストに描かれた由利子さんが超美人(おいおい)。
 桜井浩子さんにはあんまり似てないんだけど(^_^;)

「宇宙からの贈りものたち」北野勇作
 タイトルは『ウルトラQ』第3話「宇宙からの贈りもの」から。
 イッペイくんとユリちゃんを主役に、
 火星から来た巨大ナメクジ怪獣の巻き起こす騒動を描いている。
 とはいうものの、私には今ひとつよく分からない。
 この作者の作品は、今まで私のストライクゾーンに
 (自分で言うのも何だけど、そんなに狭くないつもり)
 来たことがないんだよなあ。 

「マウンテンピーナッツ」小林泰三
 ヒロイン・千草はアイドルを目指す女子高生。
 そしてもう一つの顔は、ウルトラの戦士・"ウルトライブ"。
 今日もオーディションに怪獣退治に大忙し。
 そんな彼女の前に立ちはだかる "マウンテンピーナッツ" とは
 「怪獣保護」を叫ぶNGO団体だ。
 ウルトラの戦士 vs 怪獣 vs 世界最強の環境保護団体(笑) という
 三すくみというか三つどもえというか、
 よく分からない "戦い" が描かれる。
 イラストの女の子がかわいいなあ。私の好みだ(おいおい)。
 ちなみにイラストレーターは
 ファフナーやガンダムのメカデザイン・鷲尾直弘。
 小林泰三と言えば『AΩ』(アルファ・オメガ)だよなあ。
 またあんな作品を読みたいなあ・・・

「影が来る」三津田信三
 毎日新報記者・江戸川由利子の周囲で、不可解な事件が頻発する。
 どうやら、由利子が "もう一人" いるらしい・・・
 作者お得意のホラー路線で描かれた、正統派のパスティーシュ作品。
 『ウルトラQ』のエピソードの一つ、と言われても違和感がない。

「変身障害」藤崎慎吾
 米瀞(めとろ)メンタルクリニックに現れたその男は、
 M78星雲からやってきた『ウルトラセブン』と名乗る。
 モロボシ・ダンという名でウルトラ警備隊に勤務しながら、
 私生活では妻と娘と暮らしているという。
 ブラックユーモア満載で、読んでいるうちに
 どんどん可笑しくなってくる。
 セブンのパロディとしては秀逸の出来だと思う。
 ぜひ実相寺昭雄監督に映像化してもらって・・・
 ってもう無理か(;_;)。

「怪獣ルクスビグラの足型を取った男」田中啓文
 日本列島に怪獣が頻出していた時代。
 「怪獣学」が発達し、怪獣に関する様々な資格・職業が生まれた。
 その一つ、怪獣類足型採取士・田中啓文に弟子入りした福太郎は
 師匠の果たせなかった夢、世界最初の怪獣ルクスビグラの足型を取るべく
 シルジョンスン島へ向かう・・・
 この人の作品は往々にしてダジャレで終わることが多いのだが・・・
 今回も脱力もののオチが待っている。

「痕(あと)の祀(まつ)り」酉島伝法
 主人公・降矢は、加賀特掃会(!)で働いている。
 彼の仕事は、倒された怪獣の死体を処理すること。
 "斉一顕現体" とか "万状顕現体" とか "絶対子" とか
 作者お得意の漢字用語が飛び交うが
 それぞれはウルトラ世界でおなじみの "言葉" の言い換え。
 何が何を表しているのかは読んでのお楽しみ。
 この人、苦手なんだけど本作は最後まで読めたよ(^_^;)。
 イラストはSF界の大御所・加藤直之。


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