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パティシエの秘密推理 お召し上がりは容疑者から [読書・ミステリ]

パティシエの秘密推理 お召し上がりは容疑者から (幻冬舎文庫)

パティシエの秘密推理 お召し上がりは容疑者から (幻冬舎文庫)

  • 作者: 似鳥 鶏
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2013/09/04
  • メディア: 文庫



評価:★★★

父の開いた喫茶店PRIERE(プリエール)を引き継いだ長男・季(みのる)。
弟の智(さとる)は大学在学中に国家公務員試験に合格、
卒業後はキャリア警察官としての道を歩んだ。
有能で周囲の期待も高かった智だが、何故か突然退職し、
半年前から兄の店を手伝ってパティシエとして働き始めた。

しかし鋭い推理力を持つ智の力を借りたい県警本部は
智の大学時代の後輩で、秘書室勤務の直ちゃん(直井楓巡査)を
PRIEREに送り込み、なんとか復職させようと算段を巡らしている。

いつのまにかPRIEREの常連客と化した直ちゃんだが
彼女が持ち込む難事件に智は関心をさっぱり示さない。
それを見かねた兄の季が直ちゃんの手伝いに乗り出し、
二人で集めた手がかりが智に解決をもたらす。

安楽椅子探偵一人にワトソン二人という組み合わせだね。

毎回、ラストにお菓子のウンチクがあってそれも楽しみの一つかな。
なかには、それが解決に繋がるものもあるし。


第1話「喪服の女王陛下のために」
 司法試験に合格し、司法修習を間近に控えた青年・正輝が
 崖から不審な転落死を遂げる。
 正輝の恋人だった女性・沙穂を直ちゃんがPRIEREに連れてきたことから
 季は不本意ながらも捜査の手伝いに乗り出すことになる。

第2話「スフレの時間が教えてくれる」
  工員・南が撲殺される。容疑は第一発見者の手嶋慎也にかかり、
 息子・慎也と不仲だった父・手嶋浩がPRIEREにやってくる。
 遺留品から新たに太刀川と遠山という男たちが浮上するが
 二人にはアリバイがあった・・・

第3話「星空と死者と桃のタルト」
 第1話で知り合った弁護士・的場莉子と季・智の兄弟は
 直ちゃんの親類が持つ田舎の別荘に招待される。
 しかしその地では新旧の住人間でトラブルが起こっていた。
 そしてその夜、別荘の隣家で死体が発見される・・・

第4話「最後は、甘い解決を」
 莉子の母親は、20年前に強盗に射殺されていた。
 そしてその13年後、今度は隣家の女性が同じ拳銃で射殺された。
 智の推理は、20年の時を超えて意外な真相を暴き出す。


現在、ブレイク中の似鳥鶏。
順調に作品を発表しているし、ドラマ化もされた。

日常の謎から殺人事件まで、扱う題材も幅広い。
本作も基本的にはユーモア系の作風ではあるのだけど、
智の復帰を願う警察側の思惑もけっこうドロドロしてるし、
何と言っても今回は4編とも殺人を扱っているだけあって
終盤に明らかになる事実関係はけっこう陰惨だ。

 創元推理文庫の「伊神先輩」のシリーズでも
 学園ドタバタ劇の裏側に "人の悪意" が示されていたけど
 本作はそれがもっと前面に出ているようだ。

「第4話」だってタイトルこそ「甘い解決」なんて謳ってるが
実のところいちばん "甘くない" 結末かも知れない。
ミステリとしても本書中いちばんの出来だと思う。

喫茶PRIEREを舞台にした作品は今のところこれ1作のみ。
これで完結でもおかしくはないけど、できれば続きが読みたいかな。
真面目で実直な季と飄々とした直ちゃんが交わす会話がツボなので。


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