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玩具店の英雄 座間味くんの推理 [読書・ミステリ]

玩具店の英雄: 座間味くんの推理 (光文社文庫)

玩具店の英雄: 座間味くんの推理 (光文社文庫)

  • 作者: 石持 浅海
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2015/02/10
  • メディア: 文庫



評価:★★★

長編「月の扉」で登場し、ハイジャックされた機内で起こった
殺人事件を解決した青年・"座間味くん" 、
短編集「心臓と左手」に続き、三度めの登場である。

本名が "座間味" なのではなく、初登場の時にたまたま
座間味島のTシャツを着ていたことから
ハイジャック犯に "座間味くん" と呼ばれたのがきっかけ。
本名はきちんとあるのだが、作中でそれが明かされたことはない。

もちろん前作でも今作でも、作中でちゃんと
本名を名乗っているのだが、作者が記さないできているので、
読者は誰も彼の名前を知らない。

ハイジャック事件で知り合った大迫警部と親しくなった彼は、
しばしば飲み屋で酒を酌み交わす仲になる。
そのとき、大迫が話すいろんな事件(もちろん解決済み)の話を聴き、
そこから座間味くんが意外な解釈をひねり出してきて
解決済みの事件の意味が大きく変わってしまう。
座間味くんの安楽椅子探偵ぶりが楽しめるのが
前作「心臓と左手」だった。

本作では、二人の酒の席にもう一人加わる。
科学警察研究所の職員、津久井操さん。
彼女の研究テーマは
「警察は事件の発生を未然に食い止めることができるか」。
彼女の語る、主に警備が関わる事件(もちろんこれも解決済み)の
話から、前作同様、見逃しがちな小さな矛盾や疑問を
すくい上げて推理を展開していく。
そして、最後に彼が提示する "真相" に驚く二人。
そんな7編が収録されている。


「傘の花」
 郷土の画家が開いた個展を訪れた国会議員。
 しかしギャラリーを出た瞬間に暴漢に襲われて殺害される。

「最強の盾」
 日本に進出した外資系企業のビル。
 襲撃しようとしたテロリストは、通りかかったベビーカーに手をかけ、
 赤ん坊を人質にしようとしたが・・・

「襲撃の準備」
 野球部を辞めて以来、生活がすさんだ高校生。
 親身になって彼の指導をしていた警官OBから連絡が入った。
 「自暴自棄になった彼がチームメイトを襲うかも知れない」

「玩具店の英雄」
 ショッピングセンターの玩具店に現れた、包丁を持った男。
 たまたま娘を連れて店を訪れていた警官は、非番で丸腰だった。
 しかし、男を取り押さえたのは意外な人物だった・・・

「住宅街の迷惑」
 新興宗教の教祖が住宅街に建てた家には、
 巨大な仏像が造形されていた。
 対立する教団の信者が、新築祝いのパーティーに乱入して
 仏像を破壊しようとしたが・・・

「警察官の選択」
 非番の警官二人が目にしたのは、トラックが子供をはねた瞬間。
 ドライバーは心臓発作で意識を失っていたが、
 ドアが内側からロックされていて開けることが出来ない。
 まずは事故のショックで呼吸が止まっている子供の
 救命措置を優先する二人だったが、
 止まっていたはずのトラックが動き出した。
 このままでは近くの釣具店に突っ込んでしまう・・・

「警察の幸運」
 某国の大臣が高速鉄道技術視察のために来日した。
 大臣は名古屋から東京まで新幹線で移動することになったが
 新横浜駅に到着する直前、乗客を装った暴漢が
 大臣の乗った車両への侵入を図る・・・


前作「心臓と左手」では、なんとなくこれで打ち止め、
って雰囲気があったので、シリーズが続いたのは嬉しい。
「月の扉」で恋人だった女性とはその後結婚し、
今作では二人目のお子さんも授かるなど、
リアルタイムで生きているキャラになってきた。
また近い将来、座間味くんに再会したいものだ。


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