SSブログ

琅邪の虎 [読書・ミステリ]

琅邪の虎 (講談社文庫)

琅邪の虎 (講談社文庫)

  • 作者: 丸山 天寿
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/05/15
  • メディア: 文庫



評価:★★★

秦の始皇帝の時代、山東半島の港町・琅邪(ろうや)を舞台に
異能を持った徐福塾のメンバーが求盗(警官)たちと共に
怪奇な事件の解決に乗り出す、
名探偵・無心(むしん)と徐福探偵団(と私が勝手に呼んでる)
シリーズ第2作。

徐福塾に病気の治療で入院していた少女・春(しゅん)が姿を消した。
行方を捜す求盗・希仁(きじん)と
塾の看板娘・桃姫(とうき)の前に現れたのは
伝説の虎に喰われ、その手先となったと称する
謎の女性・倀鬼(ちょうき)。

彼女は言う。
「500年生きた虎が人に化身して琅邪の町にいる」と。
その日から、町に奇怪な事件が続発する。

少女の母親が死体となって、琅邪川の河原に立つ神木に
吊り下げられるが、発見者が目を離した隙に死体は姿を消す。
そして間を置かずに、また別の娘が
胸を刺されて同じ木に吊り下げられる。

港で働く男が矢で射殺され、死体が虎の皮に包まれて発見される。
さらには漁師の里で不審火が起こり、
果てには始皇帝が建設した観光台(展望台)が崩壊する。

人々は家族や隣人が人虎ではないかと疑心暗鬼に陥り、
治安維持のために軍隊まで出動することになる。

新しく登場したキャラも多いが、
イチ押しは武人の林直(りんちょく)だろう。
軍人にありがちな、頭の固いキャラではなく、
臨機応変で人望もあり、希仁たちと協力して事件解決に当たる。

もちろん前作からのキャラも健在だが、
その中では飲み屋の女主人・蓮(れん)がいい。
前作では事件に巻き込まれたキャラだが、
本作では事件を解決する側にまわり、犯人を追い詰めるのに一役買う。

私がお気に入りの桃姫さんも、相変わらずの大活躍。
文庫版の表紙にあるように、さすが騎馬民出身らしく、
馬上で華麗な弓の腕前を披露する。

そして最後は徐福の弟子・無心がすべてを明らかにしてくれる。

ただ、前作と比べると話のスケールも謎の大きさも
若干のスケールダウンの感は否めないかなぁ。
その分、総合評価はちょいと下がってしまったけど
それだけ前作がよく出来てた、ってことなのだろう。

多彩な登場人物が怪奇な事件を追って活躍し、
ホラーな現象を描きつつ、全体にはそこはかとなくユーモアが漂う。
超常現象のように見えても、最後には合理的な解釈が示され、
ミステリとしてもきちんと出来ているので
最後まで楽しく読めるのは間違いない。

次巻の文庫化が待ち遠しいシリーズの一つになった。


nice!(1)  コメント(1)  トラックバック(0) 
共通テーマ: