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最愛 [読書・ミステリ]



最愛 (文春文庫)

最愛 (文春文庫)

  • 作者: 真保 裕一
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/11/10
  • メディア: 文庫

評価:★★☆

幼い頃に両親を事故で失った千賀子と悟郎。
姉と弟はそれぞれ別の親類に引き取られることになった。
悟郎は伯父夫婦に愛されながら育ったが
千賀子は伯母の一家との折り合いが悪く、
18歳になったとき家を飛び出し、音信不通になってしまう。

そして18年。小児科医となった悟郎の元へ警察から連絡が入る。
千賀子が暴力団の組事務所に放火し、その際に頭部に銃弾を受け
意識不明の状態で病院に収容されたという。
しかもその前日、姉は婚姻届を出していた。
その相手・伊吹は、かつて殺人を犯した前科がある男だった。

意識の戻らない姉。姿を現さない夫・伊吹。
悟郎は姉が引き起こした事件の背景、
そして18年間の姉の足跡を知るべく、調査を始めるが
手がかりは姉のアパートに残された8通の年賀状だけだった。

年賀状の差出人を訪ねてまわる悟郎の前に、
伊吹の行方を執拗に追う男たちが現れる。
そして、悟郎の行く先々に姿を見せる刑事・小田切は
姉と伊吹について、何を知っているのか・・・


まず、ミステリとしてとても良く出来ていることは
挙げておかなければならない。

学生時代の友人、会社の同僚、行きつけの美容室などから来た
8通の年賀状の使い方が巧みで、
それぞれ違った向きからスポットライトを当てたように
姉の18年間の生活の断片が描き出される。

意識不明のため、病床の千賀子は一度も言葉を発しない。
作品中に描かれる彼女の言動はすべて、
彼女を知る者による、過去の記憶の中にあるものである。
悟郎は、さながらジグソーパズルのピースを集めるように
千賀子の周囲にいた人々から姉のエピソードを集めていく。
やがてその中から意外な真相が現れてくるのだが
そのあたりの流れはとても自然で、上手だなあと思う。


本書には様々な愛が描かれている。
姉弟の愛、夫婦の愛、親子の愛・・・
では "最愛" というタイトルが示すものは何か。
誰が誰に向けた愛を "最愛" と呼んでいるのか。
それが明らかになるラストが、物語のクライマックスになる。


意識不明の姉の、18年にわたる空白を探っていくという
ストーリーの流れはなかなか魅力的で、
ぐいぐい引き込まれてページがどんどんめくられる。
しかもミステリとしても良く出来ているし、
普通だったらもっと★がついてもいいのだが、
上記のような評価になってしまったのは
主にラストシーンのせい。

あの結末に感動した人も多いと思う。
でも、価値観は人それぞれ。
好みの問題だろうが、私はちょっと受け入れられないなぁ・・・。


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