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計画結婚 [読書・ミステリ]

計画結婚 (徳間文庫)

計画結婚 (徳間文庫)

  • 作者: 白河三兎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2019/06/11

評価:★★☆

久曽神静香(きゅうそじん・しずか)は、モデル体型の超絶美人。
高校生の頃から芸能界へのスカウトは引きも切らず、
男たちの視線を一身に集め、女性からの嫉妬も一身に集めてきた。

そんな静香も33歳となり、ついに結婚することになった。
定員600人の客船を借り切り、80人の招待客を乗せて横浜を出港、
洋上結婚式を行うのだ。

その結婚式で、同じテーブルに着くことになった
6人の男女を中心に物語が展開する。

新婦側の招待客には佐古怜美、桜田祐介、富永仁。
新郎側の招待客には小暮宏、高原満男、三谷信之助。

彼らはみな、新婦の静香に対して、あるいはこの結婚式に対して
”腹に一物” を抱えていた。本書は全五章からなるが、
各章はそれぞれ異なる招待客の視点から語られる、
連作短篇となっている。

「第一章 メランコリック・ダブルデート」では
怜美による静香の高校時代のエピソード。
「第二章 ハッピー・メイストームデー」では
祐介による卒業後の話となるので、時間軸に沿って語られるかと思いきや、
高原が語る「第三章 マリッジ・トラップ」では意外な展開を見せ、
新郎の驚くべき正体が明らかになる。

「第四章 エンディング・リング」では、
富永とその妻・美登里の物語が綴られる。
ネタバレになるので詳しく書けないが、夫婦のあり方を考えさせられる、
本書で一番 ”重い” エピソードだろう。

そして「第五章 ピンチヒッター・ウェディング」では、
披露宴の最中に、次から次へと予想外の展開が続発し、
それまでの四つの章で張られた伏線がまとめて回収されて
一気に大団円へとなだれ込む。

第一章の冒頭からは、こんな結末はまず予想できないだろう。
作者のストーリーテリングの巧みさはスゴい。

でも、星の数が今ひとつなのは、キャラのせいかな。

まず主役たる静香さん。悪い人ではないのだけど
強烈すぎる個性がギラギラしていて、
ちょっと見ているのが(読んでるのが?)辛い。

静香さんの高校時代からの親友・怜美(れいみ)さん。
彼女もある意味、静香さんの ”被害者” なのだけど
それでも親友であり続けるところが健気。

そんな彼女の作中での扱いが、あまりにも報われないのも
ポイントを下げた理由(まあ、いちばん悪いのは祐介なんだが)。
もっとも、ラスト2ページの展開がちょっぴり救いになってるけど。

私はキャラに入れ込むタイプなので、
気に入った登場人物が報われないと、評価が下がってしまいがち。

最後にもう一つ。
文庫版表紙のデザインが実に秀逸。
読み終わってから、改めて眺めてみるとよく分かる。


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総閲覧数210万回突破 & 近況 [このブログについて]

本日未明、このブログの総閲覧数が210万に達しました。


210.jpg

2006年1月2日の開設以来、約15年7ヶ月での達成です。
日数で数えると、5700日目になります。
1日あたりの平均アクセス数は368くらいです。

たくさんの方に覗きに来ていただいて、感謝の極み。
本当にありがとうございます。

それでは、毎回恒例の近況報告などを。
コロナワクチン接種関係の話は別記事にして
既にアップしてありますので、それ以外のところを書いてみます。

■近況その1 職場について

定年退職後は、週の半分ほどを仕事に充てるという
パートタイム労働者になっている、ってのは過去にも書いてますね。
ヒマな時間が増え、収入がドーンと減ったことも(笑)。

まあ、慎ましく暮らす分には何とかなってますので、
雇っていただいているところには感謝であります。

とりあえず、来年も同じ環境で働けるようにお願いはしてあるんですが
こればかりは、ふたを開けてみなければ分かりません。

いちおう65歳までは再雇用してもらえるはずなので、
(今年を入れずに)あと2年は働けるはずなんですが、
65歳まで働き続けるかは微妙なところ。

もちろん収入以外にも、生きがいや健康増進、ボケ防止(笑)など
働く意味はいろいろあるとは思うんですが
職場の環境が2年後まで同じという保証もない。
まあ、このへんもおいおい考えていくつもりです。

■近況その2 生活について

相変わらず新型コロナウイルスのおかげでホームステイの毎日。
今年度に入って、県境を超える移動は・・・3回くらい?

読書も順調に進んできたんですけど、
6月に入ってからは、映画三昧の日々に突入してしまったのは
記事に書いたとおりです。

感染を心配される方もいるかも知れませんが、
私が行くのは平日の昼間の回ですから、ほとんどガラガラです。
埋まってるのは座席数の1~2割くらい。3割を超えるのはまれ。

 一番混んでいたのはやっぱり「竜とそばかすの姫」でしたね。
 それでも埋まっていたのは半分くらい。
 一番少なかったのは観客が私を含めて3人、てことも。
 どの作品とは言いませんが(笑)。

みんな離れて座ってますし、当然ながらマスクをして黙って観ていて
ある意味、一番安全なエンタメではないかと思ってます。

ここのところ映画の方も一段落したので
お盆休みには読書に勤しもうと思っているところ。

■近況その3 読書規則の変更について

実は、私が本を読む順番には一定の決まりがあります。
在庫の本はぜんぶ Excel に記録してあって、作者別や発行順など
いろいろ並び替えてみて、その中から ”読む順番” を決めてきました。

まず、在庫の本を次の4段階に分けてグループ化してあります。

(1)お気に入りの作家さんなので、すぐにも読みたい本
(2)好きな作家さんなので、早めに読みたい本
  このグループは、優先度の高いA、低いBの2つに分けられてます。
(3)興味はある作品なので、いつか読みたい本

この4つのグループに対し、さらに上記にあるように
作家さんや発行日などを勘案して読む順番を決めてきました。

この「順番規則」を、8月に入った時点で変更しました。

いままでの順番だと、
(1)+(2)Aのグループ と (2)B+(3)のグループ の冊数の比は、
だいたい1:1.5から1:2くらいだったのですが、
それを今回、1:1になるように改めました。

要するに「早めに読みたい本の比率を上げた」わけで、
変更した理由は、”残り時間” が気になりだしたから。

還暦を過ぎて、人生の残りもそんなに長くない。
視力も落ちてきて、今後は読むスピードも、集中力も落ちていく。
なにより、コロナ禍のように今後の世界で何が起こるか分からない。

 最悪の場合、明日死んでしまうことだってあるかも知れない。
 先日の小田急線内での事件のように、
 いつどこで何に巻き込まれるかもわからないですもんねぇ。

だから、まあ心残りが少なくなるように
「今、読みたい本を優先して読む」ようにしよう、ということです。

とはいっても、(3)グループを全部切り捨てるのももったいない。
読んでみたら意外な掘り出し物だった、って例もたくさんあったし。

今後、情勢の変化で ”読む順番規則の再変更” はあるかも知れませんが
しばらくこれでいってみようと思ってます。

■おわりに

毎回書いてますが、まとまりのない駄文を垂れ流してきたこのブログ、
なんとかここまで続けてこられているのは、
のぞきに来ていただいてる皆様のおかげです。

ありがとうございました。
そして、これからもよろしくお願いします。 m(_ _)m  ぺこり

さて、次の220万回の達成は年末くらいかなあ。
これまで通り、焦らず慌てず、のんびり続けていきます。


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南青山骨董通り探偵社 [読書・ミステリ]

南青山骨董通り探偵社 (光文社文庫)

南青山骨董通り探偵社 (光文社文庫)

  • 作者: 五十嵐 貴久
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2015/03/12
  • メディア: 文庫

評価:★★★

主人公・井上雅也は25歳。大手自動車メーカーの営業職で3年め。
会社の組織に馴染めず、うだつが上がらない日々に、転機がやってくる。

「うちの探偵社で働いてみませんか?」
オファーしてきたのは ”南青山骨頭通り探偵社” 社長の金城だった。

かつて雅也が担当した顧客から彼のことを聞いたという。
能力はともかく(おいおい)、人柄は素晴らしい、と。

会社には内緒でアルバイト的に体験入社し、働き始めた雅也。
そんなとき、探偵社に入った依頼は中学生の援助交際に関するもの。

警察に対して、名門小中高一貫校の中等部3年生で水沢瞳という生徒が
複数の男性と淫らな関係を持っているという告発メールがあった。
メールを受け取った南青山暑は静観することを決めたが、
それに不満な刑事・田代千賀子からの個人的な依頼だった。

同僚たちとともに瞳の尾行を始める雅也。
そしてさらに告発メールが届く。
瞳は担任教師の細野とも関係を持っている、というものだった。

細野の調査を始めた雅也たちは驚くべき事実を知る。
彼は自宅とは別に、家族に隠れてマンションを借りていて、
そこで瞳以外にも複数の女子生徒と関係を持っていたのだ。

細野の監視を始めた雅也は、同僚の探偵・朝比奈玲子から連絡を受け、
彼の隠しマンションへ向かうが、そこで発見したものは
細野の死体と、気を失って倒れている玲子。
しかも殺害現場は内部から施錠されていた・・・

シリーズものの第1巻なので(全3巻構成みたい)、
前半は登場人物の紹介を兼ねているのか
ストーリーの進行もゆるめで、殺人が起こるのは中盤過ぎ。

中学生の売春というテーマはなかなか重い。関係者にも同級生が多く、
彼ら彼女らの年代なりの ”人間関係” も深く絡んできている。
真相はそれなりに意外だが、解決してもすっきりしないのはテーマゆえか。

探偵という普通ではない職業に就いているだけあって、
登場する探偵社のメンバーはみななかなか個性的。
さらに、過去にいろいろあった人も多そうで、そのへんは次巻以降で
おいおい明かされていくのだろう。

本書のラストで、雅也は大手メーカーを辞め、
探偵社のアルバイト扱いから正式なメンバーとなる。
次巻以降はフルタイムで活躍することになるのだろう。


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コロナウイルスワクチン2回目接種 [日々の生活と雑感]

■接種について

7/18(日)にワクチン1回目を接種して3週間。
昨日(8/8)、無事に2回目の接種を迎えることができました。

 朝起きて、検温をしてみたら35.8℃。
 (予診票には、当日の検温結果を記入する欄がある。)
 かみさんに言ったら
 「そんなに低いはずないじゃないの! もう一回計ってみて!」
 仕方ないのでもう一回検温してみたら35.9℃。かみさんに伝えたら
 「よろしい!」
 「え・・・」

前回は、自宅から車で20分かかる公営の体育館で接種しましたが
今回は5分で着く集団接種会場(民営の多目的ホール)です。

必要書類の確認 → 本人確認 → 問診 → 接種 → 15分の待機 と
基本的な流れは1回目と同じです。

 ちなみに、受付でも検温があります。非接触式の赤外線感知方式。
 あのスピードガンみたいなやつです。結果は35.9℃でした(笑)。

違うのは、会場が前回と比べてかなり狭いこと。
まあ前回は体育館のフロア一面まるまる使ってましたからね。
今回の広さは、それと比べたら1/6くらいかな。

それと比例して、動員されているスタッフの数もかなり少なめ。
目立ったのは、平均年齢がかなり若そうなこと(医師は除いて)。
前回は30~40代の方が目立ちましたが
今回はほとんどが20代とお見受けしました。
30代以上の方はちらほら、かな。

会場内の壁にある張り紙の内容も前回の会場と同じもの。
(同じ自治体がやってるんだから、同じで当たり前なんだけど)
それでも、今回新たに発見したのが
「会場内での撮影・録音は禁止します」というもの。
場所が多目的ホールなので、以前から掲げてあったのかなぁとも
思ったのだけど、見た感じでは他の張り紙と同じように張ってあるので
やっぱりワクチン接種に合わせての注意書きなのかも知れない。

さて、受付での本人確認を終えて待機しているとき、
私の目の前にあった問診ブースの中から、会話が聞こえてきた。
盗み聞きしようと思ったわけじゃないんだけど
何しろ声が大きいもので、外まで響いてくるんだよねぇ。

内容は、問診中にワクチン接種に対して支障が見つかったみたい。
なにやら医師の方から説明があったようで(細かい内容は不明)
最後に「今回は見送った方がいいですね」という医師の発言。

でも、漏れ聞こえてくる単語をつなげると、
どうやら後日にちゃんと接種の予約を入れてくれるらしい。

その後、ブースから男性(わたしとほぼ同年代とお見受けする)が
出てきたんだけど、怒ったりがっかりしたりしてる感じではなく
どちらかというと苦笑いしているようにも見えたので、
本人にも自覚があったのかも知れない。

いやあ、問診で撥ねられることって、あるんですねぇ。
頭では理解していたけど「そんなことはまずないんじゃないの?」って
思ってたから、ちょっと意外でした。

私自身は無事に問診をクリアして接種へ進みました。
終わってみれば、今回も前回並のトータル25分ほどで完了です。

■副反応について

1回目よりも2回目の副反応の方が大きく出る、って聞いていたので
それに備えて、翌日(8/9)には外出を伴う用事は入れてませんでした。

では、どうだったか。

結論からすると、この文章を書いている時点
(8/9午後:接種から24時間以上経過)では
大きな副反応は出ていないみたいです。
倦怠感・頭痛・発熱などの全身症状はありません。

 ちなみに朝起きて検温してみたら35.1℃。なんと昨日より低い。
 かみさんに言ったら
 「そんなに低いはずないじゃないの! もう一回計ってみて!」
 仕方ないのでもう一回検温してみたら35.2℃。かみさんに伝えたら
 「よろしい!」
 「え・・・」

自覚できる副反応としては、接種部の筋肉痛が主ですね。
これは接種した人の7割くらいに出るものなので、
ある意味普通の反応かと。

ただ、その出方が1回目とは違います。

前回は接種して6時間後くらいから痛みが生じ、
腕を上げたり肩を回したりするとかなり辛かったのですが、
翌日の朝(接種から20時間後くらい)には、かなり軽減していました。
前回の記事にも書きましたが、
接種当日でいちばん痛かった時を100とすると、翌朝は20くらい。
(数字はあくまで主観的なものですが)

今回は、まず症状が出るのが遅かった。
12時半頃に接種した後、かなり痛いなあと感じ始めたのは
10時間以上経ってから。
それでも、前回の100と比べたら80~85くらいかな。
痛み自体は前回よりはちょっぴり軽い。

しかしこれが、なかなか治まらない。
翌朝(20時間後)になってもさほど変わらず、75~80くらい。
それでも、午後になったらだんだんと治まってきました。
夜9時をまわったら(接種後33時間)、30くらいまで低減しましたね。

 ちなみに、午後2時頃(接種後26時間)に
 体温が上がってきたような気がしたので、検温したら36.5℃でした。
 かみさんに言ったら
 「やっと平熱になったね!」
 「え・・・」
 つまり、発熱らしい発熱もありませんでした。

副反応は、若い人ほど激しいともいいます。
実際、当年とって85歳になる私の母は、2回目の接種後も
ほとんど何も感じなかったと言ってましたし。
まあ、私もトシを取ったんだと言うことですな。

■終わりに

さて、とりあえず2回の接種を受けましたので、ひと安心かな。
変異種が相手だと感染してしまうみたいなので油断はできませんが
それでも、重症化のリスクはかなり減るはずなので。

ただ、来年あたり3回目の接種が必要とかのニュースも耳にします。
それでも、まずは希望する人全員に2回の接種を
行き渡らせてほしいですね。
私の家族の中にも、まだ1回も接種してない者がいますし。

自治体ごとにもかなり差があるみたいで、私の住んでる自治体では、
20代~30代の接種開始は秋頃になりそうな気配なのに、
隣の自治体では、若年層にもけっこうワクチンが回ってきているみたい。
この差は何なんでしょう・・・


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卒業したら教室で [読書・ミステリ]

卒業したら教室で 市立高校シリーズ (創元推理文庫)

卒業したら教室で 市立高校シリーズ (創元推理文庫)

  • 作者: 似鳥 鶏
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/03/11

評価:★★★☆

著者のデビュー作「理由(わけ)あって冬に出る」から始まる
〈市立高校シリーズ〉の最新刊。

文庫の著者紹介を見たら、デビューは2006年。
もう15年選手になってしまってるんですねぇ、この人。
著作も30冊を超えてるし、〈戦力外捜査官シリーズ〉はTVドラマになるし
もうすっかり人気作家ですなぁ。

さて、本書は3つのストーリーラインからなる。

一つ目は、以前からのシリーズの時系列上にある。
主人公兼語り手の2年生・葉山君がいる市立高校は年度末を迎え、
一学年上で演劇部部長の柳瀬さんが卒業する時も近い。

そんなとき、クラスメイトの秋野舞衣から相談を受ける。
放課後のパソコンルームで、謎の人影を見たという。
その人物は、電源も入れずにPCの前で何かをしていたらしい。

卒業生の伊神に話すと、それは「兼坂(んねさか)さん」と呼ばれる
市立高校 ”八番目の七不思議” だという。
やがてそれは、二つの密室事件へとつながっていく。

二つ目は、12年後の時間線。
高校生だったメンバーも社会人となり、結婚している者もいる。
葉山と親友の三野(ミノ)がTV電話で交わすやりとりで進行する。

ミノからネット上に公開されている小説のことを聞く葉山。
作者は市立高校出身で、葉山たちと同時期に在学していたらしい。
小説の登場人物を見ると、明らかに葉山たちをモデルにしているようで
当時、かなり親しい仲にあった人物のようだ。

葉山はネット小説を読むことで作者を突き止めようとするが・・・

三つめは、そのネット小説。
内容は「王立ソルガリア魔導学院」という学園を舞台にした
”異世界ファンタジー” だ。登場するのは、
12年前の市立高校にいた生徒がモデルと思われるキャラばかり。

ハリー・ポッターでのホグワーツのように、
魔法を学ぶ者が集まった学園で事件が起こる。
魔法と言っても制限があって、何でもできるわけでない。
そんな世界での ”不可能犯罪” が描かれる。

序盤では、学園を謎の怪物軍団が襲撃してきて
アクションたっぷりの戦闘シーンも展開する。
現実世界での2つの密室、異世界での不可能犯罪と合わせて
エンタメとしてのサービスもたっぷりだ。

ただまあ、異世界での不可能犯罪の方は、
解決に必要な ”魔法における制限事項” が、
必ずしも読者に開示されていないように思えた。

 開示されていたからと言って、犯人が当てられるわけでもない
 とは思うが、ちょっとひっかかった。

それに対して現実世界の方は、手堅く解決される。
中盤で示される解決が終盤ではひっくり返るなど、
予想される展開ではあるが楽しめた。
終わってみれば〈高校〉という場だからこそ起こる事件でもあって
最終的に明かされる真相にも納得だ。

もっとも、読んでいて一番気になるのはミステリ部分よりも
葉山君が思いを寄せる柳瀬さんとの仲。

柳瀬さんも満更ではない様子(というか彼女の方が乗り気)なのだが
「去る者は日々に疎し」とも言う。卒業して会えなくなると、
そのまま関係が消滅してしまうのもよくあること。
葉山君は卒業までに柳瀬さんとの仲を深めることができるのか。

そして、もっと気になるのは「12年後」の葉山君の境遇。
一人暮らしではなく、「うちの人」と呼ぶ同居人がいるらしい。
年齢も性別も不明でなんとも気を揉ませる。
妹さんかも知れないし、嫁さんかも知れない。いったい誰なのか。
読者が知っている人物なのか、全く未知の人なのか。
そのへんは今後のシリーズで描かれていくのだろうか。


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サイダーのように言葉が湧き上がる [アニメーション]

私が観るアニメは、基本的にSFやファンタジー系(ロボットもの含む)で
こういう日常系のアニメは本来守備範囲外なのだけど
ネットでの評判がけっこう良さそうなことと、
独特な色使いに惹かれて、観てみることにした。


サイダー.jpg

以下、公式サイトの「STORY」から引用すると・・・

17回目の夏、地方都市。

コミュニケーションが苦手で、人から話しかけられないよう、
いつもヘッドホンを着用している少年・チェリー。
彼は口に出せない気持ちを趣味の俳句に乗せていた。

矯正中の大きな前歯を隠すため、
いつもマスクをしている少女・スマイル。
人気動画主の彼女は、“カワイイ” を見つけては動画を配信していた。

俳句以外では思ったことをなかなか口に出せないチェリーと、
見た目のコンプレックスをどうしても克服できないスマイルが、
ショッピングモールで出会い、やがて
SNSを通じて少しずつ言葉を交わしていく。

ある日ふたりは、
バイト先で出会った老人・フジヤマが失くしてしまった
想い出のレコードを探しまわる理由にふれる。
ふたりはそれを自分たちで見つけようと決意。
フジヤマの願いを叶えるため一緒にレコードを探すうちに、
チェリーとスマイルの距離は急速に縮まっていく。

だが、ある出来事をきっかけに、ふたりの想いはすれ違って・・・

物語のクライマックス、
チェリーのまっすぐで爆発的なメッセージは心の奥深くまで届き、
あざやかな閃光となってひと夏の想い出に記憶される。

引用、ここまで。

ひと言で言ってしまえば地方都市のショッピングモールを舞台にした
ボーイ・ミーツ・ガールのラブコメだ。

互いにコンプレックスを抱えた不器用な二人が、
手探りながら相手をすこしずつ理解していく過程がなんともいじらしい。

ああ、私もこんな初恋をしたかったなぁ・・・なんて思ってしまうよ。

ちょっと認知症気味の老人・フジヤマの探している
”思い出のレコード” をめぐるエピソードを通じて
順調に進行していった二人の仲が、
”ある事情” のために終盤に至って疎遠になってしまう。

しかし、ラストシーンで二人が
自らコンプレックスを乗り越えることによって結ばれる。

まあ絵に書いたようなラブ・ストーリーで、
終盤の展開も予想の範囲内に収まるけれど、
それだけに安心して(?)観ていることができる

しかも上映時間が87分というコンパクトさ。
余計なテーマやイベントもなく、2人の物語に特化しているのもいい。

夏休みに若い人たちがカップルで観にいくには
ぴったりの ”デート・ムービー” になっていると思うし、
私のような ”心が汚れてしまったオッサン” にとっては
貴重な ”心を洗ってくれる時間” だったよ(笑)。

次に、作品の独特な色使いについて

わたせせいぞうっぽい色使いだけど
彼の作品はどちらかというと都会的なおしゃれなイメージ。
それを、田舎のショッピングモールに持ち込んだことで
写実的に描いたら地味になってしまう(であろう)舞台が一気に華やかに。

ただまあ、コントラストが強めの絵は好き嫌いが分かれそう。
私も慣れるまでちょっと時間がかかったかな。
でも、映画が始まって10分もしたら気にならなくなっていたが・・・

キャストについて

主人公・チェリーは市川染五郎(八代目)。
私には九代目松本幸四郎(現・松本白鸚)の孫、
と言われたほうがわかりやすい(トシだねぇ・・・)。
なんと16歳だそうで、ほぼ自分と同年齢のキャラを演じていたわけだ。

ヒロインのスマイルは杉咲花。
wikiを見たら過去に映画で声優の経験もあるみたい。

二人とも声優としては合格点かな。見ていて気になることはなかった。

周囲はベテランで固めてる。

フジヤマが山寺宏一。山ちゃんは何をやらせても上手い。
その娘のつばきは井上喜久子。どちらも声優界の重鎮ですな。

この2人はすぐに分かったけど、意外なところで
チェリーの両親を演じてるのが神谷浩史と坂本真綾。
これは映画を見ている最中は全くわからなかったよ。
見終わった後でwikiで知って、びっくり。
何とも贅沢というか無駄遣いというか(笑)。

それ以外にも中堅・若手の声優陣が起用されていて、
当たり前だけど、みんな達者。

音楽について

フジヤマが探していたレコードには、ある女性歌手の歌が
収録されているのだけど、この曲が終盤、クライマックスで流れる。

誰だろうとエンドロールを見ていたら、大貫妙子さんと判明。
名前は知ってましたが、歌をまともに聴くのは初めて。
こんな声で、こんな歌を歌うんですね。
この映画のための書き下ろしみたい。

wikiで見たら当年とって67歳とある。
若者向けの映画だけど、ベテランもがんばってるのだね。

ラストシーンについて

「アニメ史に残る最もエモーショナルなラストシーンに、
 あなたの感情が湧き上がる!」

公式サイトの「STORY」は上の言葉で締めくくられている。
この表現はちょっと大袈裟だけど、感動的なのは間違いない。
私もちょっと目頭が熱くなったよ。

以下蛇足。

ちょっと余計なことを書いてしまうと、
昭和生まれのオッサンである私は、この映画のラストシーンから
眉村卓の処女長編SF「燃える傾斜」を思い出していたんだよねぇ。

この作品も、一度は別れた恋人たちが再会するところで終わる。
初読の時に目から汗が出てしまったことはナイショだ。

 この映画を観て「燃える傾斜」を思い出すなんて、私くらいだろうな。
 それにしても、40年前に読んだ小説のラストは覚えているのに
 一昨日の昼に何を食べたか思い出せないのはなぜだ・・・(おいおい)。


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星空のむこうの国 [映画]

※終盤のストーリーに触れています。

1986年に公開された同題の日本映画を、
監督の小中和哉自身がセルフリメイクした作品。

監督は当時22歳だったというのも驚きだけど、
こういうリメイクに出資してくれるスポンサーもいるということも驚き。
hosizora.jpg

では、「あらすじ」を公式サイトから抜粋(一部修正)して・・・

天文部に所属する高校生・森昭雄は、トラックに轢かれる寸前のところを
親友の尾崎誠に助けられるが、その際に頭を強打して入院する。
そしてそのときから不思議な夢をみるようになり、それは退院後も続いた。
見たことのない美少女が昭雄をじっと見つめて何かを語りかけてくる夢だ。

ある日の下校途中、バスに乗った昭雄は
併走するバスの中に夢の美少女を見かける。
昭雄は急いでバスを降り、彼女の乗るバスを追うと、
彼女も降りて駆け寄ってきた。彼女は涙をためて
昭雄を抱きしめるが、その瞬間、忽然と姿を消してしまう。

昭雄は夢か現実かわからぬまま帰宅すると、
そこには昭雄自身の遺影と位牌が――。

自宅の窓から再び美少女を見つけた昭雄は彼女を追うが
とある病院に着いたところで見失ってしまう。
昭雄はそこで尾崎を見つけて話しかける。

彼は昭雄を見て驚く。尾崎にとっても昭雄は ”死んだはず” だったのだ。
しかし尾崎は持ち前のSFの知識を活用して推測する。
”こちらの世界” では、昭雄が交通事故にあって死んでしまっているが、
”尾崎に助けられた世界” が並行して存在し、助けられた世界の昭雄が
”こちらの世界” に来たのではないか、と。
尾崎は、パラレルワールドから来た昭雄を ”美少女” に
引き会わせることにした。

彼女の名は坂口理沙。生前の昭雄の恋人で、重い病に冒されていた。
理沙は昭雄の死を信じられず、ずっと意識の底で呼び続けていた。
その理沙の想いが、別の世界線に生きる昭雄を引き寄せたのだ。

「昭雄は死んでいなかった」と思い込む理沙。
昭雄は、”この世界の自分” が理沙と交わした約束を果たすために、
彼女を病院から連れ出す決心をするのだが・・・

以下、この映画について思ったことを書いていくけど
終盤のストーリーについて盛大にネタバレしているので、
未見の人はご注意を。

まず、観ていて感じたのはなんとも懐かしい雰囲気。
これはあれだね。往年のNHK「少年ドラマシリーズ」だね。

もちろん登場するのはスマホを持ってる高校生たちなのだけど
みな素朴な性格の子たちばかり。どぎつい描写もなく、そういう意味では
小中学生のお子さんを持つ親御さんでも安心してみせられる(笑)。

35年前の作品のリメイクだが、出てくる高校生たちのメンタリティも
35年前のままなのだろう。私には懐かしい感じがする作品世界だけど
現役の高校生からみれば、物足りない描写が多いかも知れない。

冒頭から中盤までは、並行世界に於けるボーイ・ミーツ・ガールを
扱ったSFとして楽しめるのだけども、
終盤に至るとなかなか辛い展開になる。

「岬の堤防の上で、二人でシリウス座流星群を見る」というのが
”この世界” での昭雄と理沙の約束。
”向こうの世界” からやってきた昭雄は、
死んでしまった ”こちらの昭雄” に代わって
その約束を果たそうとするのだが、彼女を病院から連れ出すことは
即、彼女の生命を危険にさらすことを意味する。

でも、昭雄は連れ出してしまうんだよねぇ。
もちろんそこには、理沙の強い希望があったから。
おそらく彼女は、自分の命がそう長くないことを自覚していて
このまま病院で衰弱して死んでいく人生よりも、
恋人と一緒に過ごす時間を優先したかった、のだろう。

中高生の世代なら共感できる ”純愛ストーリー” なのかも知れない。
私だってそんな時代はあったはずなのだが、いかんせん
もう還暦過ぎのオッサンになってしまっている身からすると
なんとも受け入れ難く、辛い物語になってしまっている。

二人の行動を見る目は、どうしても大人目線、
もっと言えば親目線(祖父目線と言わないでwww)になってしまう

親の目から見れば、理沙の行動は短慮以外の何物でもない。
恋人だったとは言え、所詮は他人でしかない少年によって
娘の命を奪われてしまっては、理不尽としか言い様がないだろう。

まあ、せいぜい自分たちの周囲数メートルの世界、
そして「いま」しか考えられないのが ”若さ” といえば
それまでなんだが、それでもこのエンディングは如何なものか。
若者が死に急ぐ終盤は見ていて苦痛しか感じなかったよ。

ラストシーンで昭雄は元の世界に戻るのだが、
映画の冒頭とは微妙に異なる時間線が展開する。
事故直後で入院している時点の昭雄が、診察室前の待合で
理沙(こちらは健康体と思われる)と出会うシーンで幕となるのだ。

はて、これはハッピーエンドと言えるのか。

”こちらの理沙” にとっては間違いなくハッピーなのかも知れないが
ならば、”あちらの理沙” にも、何らかの救済があってほしかったなぁ、
って思う私は、欲が深いのでしょうかねぇ・・・

あといくつか書いておこう。

主人公の親友である尾崎のキャラが素晴らしい。
こちらの尾崎君は、身を挺して昭雄の命を救うし、
あちらの尾崎君は、おそらく理沙に惚れているんだろうけど
そこを押さえて昭雄のアシストに徹する。いい奴だよ二人(?)とも。

理沙の母親役は有森也実。
なんと1986年版ではヒロインを演じていたそうな。
彼女に惹かれて観に来る人もいるのかなあぁ。

35年前には感動の物語だったかも知れないけど、現在では
ライトノベルやマンガにもっと刺激に溢れた物語がたくさんあるだろう。
現役の中学・高校生に受け入れられるかどうかはかなり疑問な気もする。
かと言って、35年前のノスタルジーで見に来る人も
さほど多いとは思えないし。

より多くの人に観てもらえるようにするなら、
かなりのリビルドが必要だったような気がしてならないんだが。


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竜とそばかすの姫 [アニメーション]

※終盤のストーリーに触れています。

細田守という監督さんの作品、実はまともに観たことが無い。

何回かTVで放送されたこともあったけど、それも見たことが無い。
細田監督にとっては、”よい観客” ではなかったのだけど、
そんな細田監督の新作映画が公開になった。
この際、真面目に観てみようと思って(笑)、映画館まで足を運んだ。
ryuusoba.jpg

で、どうだったか。

結論から書くと、ものすごく素晴らしいところがたくさんあった。
だけど、「うーん」と首を傾げてしまう部分も多々あった。

これからそのあたりのことを、
例によってまとまりなくダラダラと書いていくのだけど、
上にも書いたように褒めるだけではない文章なので
(というか、けっこう文句を書いてる)
「素晴らしい! 感動した!」と絶賛されている方にとっては
面白くない文章になっていると思いますので、悪しからず。

あと、終盤のストーリー展開にも触れているので
未見の人はご注意を。

まずはストーリー紹介から。
以下は、wikiの「あらすじ」からの引用。

高知県の田舎町に住む女子高生・すずは
幼い頃に母を事故で亡くして以来、大好きだった歌を歌えなくなり、
父との関係にも徐々に溝が生まれていた。

作曲だけが生き甲斐となっていたすずは、
ある日全世界で50億人以上が集う超巨大インターネット空間の
仮想世界〈U〉に Belle というキャラクターで参加。

そこでは自然と歌えたすず(Belle)は、
自ら作った歌を披露していくうちに歌姫として世界中から注目を集め、
遂にはコンサートが開かれるが、コンサート当日、突然謎の竜が現れて、
コンサートは台無しになってしまう。

だが、 Belle はそんな竜が抱える大きな傷の秘密を知ろうと接近し、
竜もまた Belle の優しい歌声に少しずつ心を開いていく。
そんな中、世界では「竜の正体探し」が動き出す。

引用、ここまで。

まず、素晴らしいところから。

話題の作品なのでCMの露出も多く、それを見れば予想できることだけど
既に観た人からも多くの感想がネットに投稿されてて
みな異口同音に語るのが「音楽と映像がとにかくスゴい」。
私もこれには100%同意します。

CGで描かれた電脳世界〈U〉は、華麗にして詳細。
画面の隅々にまで至る微細な部分まで描き込まれた映像はまさに圧巻。
まさに現在における最高級の出来で、
世界のどこへ出しても恥ずかしくないレベルになってると思う。

主人公・すずのアバターである Belle が歌うシーンもまた特筆もの。
すずのCVを務めた中村佳穂さん本人の歌唱力がまた頭抜けている。
本職はミュージシャンとのことだけど、流石です。

 声優としては、飛び抜けて上手いとは言えないけど、
 一般芸能人を起用したらとんでもなく下手だった、という例を
 たくさん見てるので(笑)、それと比べれば充分に合格点です。
 少なくとも、観ていて気になるレベルではありませんでした。

millennium parade(ミレニアムパレード)という
音楽プロジェクト・グループが楽曲製作をしているらしいけど
作品が映画の世界にマッチしているというか
逆に音楽が〈U〉のイメージ形成に貢献しているというか。

サントラ盤が発売されたら買おうかと思ってる(ホントです)。

しかしながら、映像と音楽以外の部分では
いろいろとツッコミどころが多いのも事実かと。

物語の序盤、仮想空間で行われる Belle のコンサートが
正体不明の ”竜” が乱入してくることによって中断されてしまい、
会場内で ”竜” とネット内自警集団 ”ジャスティス” との戦闘が始まる。

それまでの幻想的なシーンが、単なるバトルアニメになってしまって
ここでちょっと興醒めしてしまった。

仮想空間内で敵視されている竜だけど、彼が具体的に悪行を働いている
シーンは描写されないので、今ひとつ迫害される理由がピンとこない。
だからジャスティス達の方が嫌味な悪役になってしまう。

 まあこの辺は昨今の ”自粛警察” のメタファーなのかも知れないが。

そしてこれ以降、特に個々のキャラクターの行動に疑問符がつく展開が。
挙げればいろいろあるのだけど、いちばん憤りを覚えたのは終盤だ。

すずは幼少時に母を喪い、父とも疎遠になってしまい、
現実世界での自分に自信を持てない少女に設定されている。
なかなか重い設定だが、それが彼女を仮想世界へのめり込ませる
動機にもなっている。それは理解できる。

本作はいろんなテーマを盛り込んでいる作品なのだけど、
すずに注目すれば、彼女の成長の物語だ。
幼い自分を残し、他人の子を助けるために亡くなった母親のことを、
許すことはできなくても理解することはできるようになり、
父親との関係も修復の一歩を踏み出す。

そして彼女がそういう境地にいたるまで成長することに対して
他の誰も助けることはできない。
彼女自身が一人で、独力で乗り越えなければならないことだ。
それは分かるのだけど、だからといって終盤のあの展開はないだろう。

児童虐待という微妙なテーマを絡める必要はあったのか?
そしてその現場へ、すずが一人で向かうというという
ありえない展開は必要なのか?

 普通は警察か児童相談所へ連絡するものだろう。
 まあ、お役所の対応が鈍い場合もあるだろうが、
 だからといって一介の女子高生が介入する案件ではない。

そしてその彼女を一人で送り出してしまう周囲の人々もありえない。
クラスメイトはともかく、父親など周囲の大人の対応は常軌を逸してる。

本作は、徹底して大人たちを役立たずに描いているように私には思える。
理由は分からないけど。

他のキャラクターについても不自然なところが多々。

すずの幼馴染みで、彼女がほのかに思いを寄せる ”しのぶくん”。

終盤になって突然、すず= Belle  だと知っていたと言いだし
(気づいた理由は描写されない)、心を閉ざす竜に対して
呼びかけようとするすずに対して
「素顔を出せば信じてもらえる」と言う。

何を根拠にそう言い切れるのか分からないし、すずがどんな思いで
”Belle” をつくり出したのか理解しているのだろうか?
そしてリアル世界で正体がばれてしまったら、
すずがどんな目に遭うのか、その責任をとれるのか?
私には「ずいぶん勝手な台詞だなぁ」としか思えなかった。

少なくとも ”Belle” というキャラが、すずとしのぶの合作だった、
くらいの設定があればともかく、全くの部外者だった彼から
突然に発せられたあの台詞は、説得力のなさがハンパない。

このしのぶくんをはじめ、同級生のカヌー部員・カミシン、
吹奏楽部のルカちゃん、そしてすずの父親。
それぞれCVは成田凌、染谷将太、玉城ティナ、役所広司。
しのぶくんの成田凌はともかく、他の3人は
ストーリーにもほとんど絡んでない。

あ、カミシンは虐待現場を突き止めるのに一役買うのだが
これも、いかにもご都合主義的な展開だよなぁ。

 それに、もしも現場が海外だったらすずはどうしたのだろう?
 とも思ったが、物語の構造上、すずが関わる必要があるのだから
 その可能性はハナからなかったことになる。

さらに、劇中に登場する熟年女性合唱団の5人組。
たぶん、すずにとっては母親代わりを務めたのであろうと
思われる人たちなのだが、ひと言くらい
説明の台詞があってもよかったんじゃない?

そして彼女らもなぜか すず= Belle  だと知っているんだが、
こちらも気づいた理由は描写されない。
外野でわいわいしているだけでストーリーにもほとんど絡みなく
この5人も登場理由が不明。
CVは森山良子、清水ミチコ、坂本冬美、岩崎良美、中尾幸世。
中尾さんは寡聞にして存じ上げないのだが、それ以外の4人、
そして上記の3人をみると客寄せのための起用かと思う。

起用が正解だった例も挙げなければいけないね。
すずの親友で、彼女を Belle としてプロデュースするヒロちゃん。
CVは幾田りら。YOASOBIのボーカルの女の子だ。
これも話題作りの一環で起用されたのだろうけど、彼女は素晴らしい。
映画を観ている間、本職の声優さんだと信じて疑わなかったよ。
それくらい上手だった。
ネット動画からブレイクしたあたり、実は Belle という存在に
一番近いのは彼女だったりするとも思うんだが
天は二物も三物も与えるのだねぇ。

いろいろ書いてしまったけれど、
序盤の映像と音楽があまりにも素晴らしかったのに比べて、
中盤以降の展開がなんとももったいなさ過ぎて。

残念ながら「もう一回観たいな」って
思わせる映画ではありませんでした。


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