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サイダーのように言葉が湧き上がる [アニメーション]

私が観るアニメは、基本的にSFやファンタジー系(ロボットもの含む)で
こういう日常系のアニメは本来守備範囲外なのだけど
ネットでの評判がけっこう良さそうなことと、
独特な色使いに惹かれて、観てみることにした。


サイダー.jpg

以下、公式サイトの「STORY」から引用すると・・・

17回目の夏、地方都市。

コミュニケーションが苦手で、人から話しかけられないよう、
いつもヘッドホンを着用している少年・チェリー。
彼は口に出せない気持ちを趣味の俳句に乗せていた。

矯正中の大きな前歯を隠すため、
いつもマスクをしている少女・スマイル。
人気動画主の彼女は、“カワイイ” を見つけては動画を配信していた。

俳句以外では思ったことをなかなか口に出せないチェリーと、
見た目のコンプレックスをどうしても克服できないスマイルが、
ショッピングモールで出会い、やがて
SNSを通じて少しずつ言葉を交わしていく。

ある日ふたりは、
バイト先で出会った老人・フジヤマが失くしてしまった
想い出のレコードを探しまわる理由にふれる。
ふたりはそれを自分たちで見つけようと決意。
フジヤマの願いを叶えるため一緒にレコードを探すうちに、
チェリーとスマイルの距離は急速に縮まっていく。

だが、ある出来事をきっかけに、ふたりの想いはすれ違って・・・

物語のクライマックス、
チェリーのまっすぐで爆発的なメッセージは心の奥深くまで届き、
あざやかな閃光となってひと夏の想い出に記憶される。

引用、ここまで。

ひと言で言ってしまえば地方都市のショッピングモールを舞台にした
ボーイ・ミーツ・ガールのラブコメだ。

互いにコンプレックスを抱えた不器用な二人が、
手探りながら相手をすこしずつ理解していく過程がなんともいじらしい。

ああ、私もこんな初恋をしたかったなぁ・・・なんて思ってしまうよ。

ちょっと認知症気味の老人・フジヤマの探している
”思い出のレコード” をめぐるエピソードを通じて
順調に進行していった二人の仲が、
”ある事情” のために終盤に至って疎遠になってしまう。

しかし、ラストシーンで二人が
自らコンプレックスを乗り越えることによって結ばれる。

まあ絵に書いたようなラブ・ストーリーで、
終盤の展開も予想の範囲内に収まるけれど、
それだけに安心して(?)観ていることができる

しかも上映時間が87分というコンパクトさ。
余計なテーマやイベントもなく、2人の物語に特化しているのもいい。

夏休みに若い人たちがカップルで観にいくには
ぴったりの ”デート・ムービー” になっていると思うし、
私のような ”心が汚れてしまったオッサン” にとっては
貴重な ”心を洗ってくれる時間” だったよ(笑)。

次に、作品の独特な色使いについて

わたせせいぞうっぽい色使いだけど
彼の作品はどちらかというと都会的なおしゃれなイメージ。
それを、田舎のショッピングモールに持ち込んだことで
写実的に描いたら地味になってしまう(であろう)舞台が一気に華やかに。

ただまあ、コントラストが強めの絵は好き嫌いが分かれそう。
私も慣れるまでちょっと時間がかかったかな。
でも、映画が始まって10分もしたら気にならなくなっていたが・・・

キャストについて

主人公・チェリーは市川染五郎(八代目)。
私には九代目松本幸四郎(現・松本白鸚)の孫、
と言われたほうがわかりやすい(トシだねぇ・・・)。
なんと16歳だそうで、ほぼ自分と同年齢のキャラを演じていたわけだ。

ヒロインのスマイルは杉咲花。
wikiを見たら過去に映画で声優の経験もあるみたい。

二人とも声優としては合格点かな。見ていて気になることはなかった。

周囲はベテランで固めてる。

フジヤマが山寺宏一。山ちゃんは何をやらせても上手い。
その娘のつばきは井上喜久子。どちらも声優界の重鎮ですな。

この2人はすぐに分かったけど、意外なところで
チェリーの両親を演じてるのが神谷浩史と坂本真綾。
これは映画を見ている最中は全くわからなかったよ。
見終わった後でwikiで知って、びっくり。
何とも贅沢というか無駄遣いというか(笑)。

それ以外にも中堅・若手の声優陣が起用されていて、
当たり前だけど、みんな達者。

音楽について

フジヤマが探していたレコードには、ある女性歌手の歌が
収録されているのだけど、この曲が終盤、クライマックスで流れる。

誰だろうとエンドロールを見ていたら、大貫妙子さんと判明。
名前は知ってましたが、歌をまともに聴くのは初めて。
こんな声で、こんな歌を歌うんですね。
この映画のための書き下ろしみたい。

wikiで見たら当年とって67歳とある。
若者向けの映画だけど、ベテランもがんばってるのだね。

ラストシーンについて

「アニメ史に残る最もエモーショナルなラストシーンに、
 あなたの感情が湧き上がる!」

公式サイトの「STORY」は上の言葉で締めくくられている。
この表現はちょっと大袈裟だけど、感動的なのは間違いない。
私もちょっと目頭が熱くなったよ。

以下蛇足。

ちょっと余計なことを書いてしまうと、
昭和生まれのオッサンである私は、この映画のラストシーンから
眉村卓の処女長編SF「燃える傾斜」を思い出していたんだよねぇ。

この作品も、一度は別れた恋人たちが再会するところで終わる。
初読の時に目から汗が出てしまったことはナイショだ。

 この映画を観て「燃える傾斜」を思い出すなんて、私くらいだろうな。
 それにしても、40年前に読んだ小説のラストは覚えているのに
 一昨日の昼に何を食べたか思い出せないのはなぜだ・・・(おいおい)。


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