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星空のむこうの国 [映画]

※終盤のストーリーに触れています。

1986年に公開された同題の日本映画を、
監督の小中和哉自身がセルフリメイクした作品。

監督は当時22歳だったというのも驚きだけど、
こういうリメイクに出資してくれるスポンサーもいるということも驚き。
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では、「あらすじ」を公式サイトから抜粋(一部修正)して・・・

天文部に所属する高校生・森昭雄は、トラックに轢かれる寸前のところを
親友の尾崎誠に助けられるが、その際に頭を強打して入院する。
そしてそのときから不思議な夢をみるようになり、それは退院後も続いた。
見たことのない美少女が昭雄をじっと見つめて何かを語りかけてくる夢だ。

ある日の下校途中、バスに乗った昭雄は
併走するバスの中に夢の美少女を見かける。
昭雄は急いでバスを降り、彼女の乗るバスを追うと、
彼女も降りて駆け寄ってきた。彼女は涙をためて
昭雄を抱きしめるが、その瞬間、忽然と姿を消してしまう。

昭雄は夢か現実かわからぬまま帰宅すると、
そこには昭雄自身の遺影と位牌が――。

自宅の窓から再び美少女を見つけた昭雄は彼女を追うが
とある病院に着いたところで見失ってしまう。
昭雄はそこで尾崎を見つけて話しかける。

彼は昭雄を見て驚く。尾崎にとっても昭雄は ”死んだはず” だったのだ。
しかし尾崎は持ち前のSFの知識を活用して推測する。
”こちらの世界” では、昭雄が交通事故にあって死んでしまっているが、
”尾崎に助けられた世界” が並行して存在し、助けられた世界の昭雄が
”こちらの世界” に来たのではないか、と。
尾崎は、パラレルワールドから来た昭雄を ”美少女” に
引き会わせることにした。

彼女の名は坂口理沙。生前の昭雄の恋人で、重い病に冒されていた。
理沙は昭雄の死を信じられず、ずっと意識の底で呼び続けていた。
その理沙の想いが、別の世界線に生きる昭雄を引き寄せたのだ。

「昭雄は死んでいなかった」と思い込む理沙。
昭雄は、”この世界の自分” が理沙と交わした約束を果たすために、
彼女を病院から連れ出す決心をするのだが・・・

以下、この映画について思ったことを書いていくけど
終盤のストーリーについて盛大にネタバレしているので、
未見の人はご注意を。

まず、観ていて感じたのはなんとも懐かしい雰囲気。
これはあれだね。往年のNHK「少年ドラマシリーズ」だね。

もちろん登場するのはスマホを持ってる高校生たちなのだけど
みな素朴な性格の子たちばかり。どぎつい描写もなく、そういう意味では
小中学生のお子さんを持つ親御さんでも安心してみせられる(笑)。

35年前の作品のリメイクだが、出てくる高校生たちのメンタリティも
35年前のままなのだろう。私には懐かしい感じがする作品世界だけど
現役の高校生からみれば、物足りない描写が多いかも知れない。

冒頭から中盤までは、並行世界に於けるボーイ・ミーツ・ガールを
扱ったSFとして楽しめるのだけども、
終盤に至るとなかなか辛い展開になる。

「岬の堤防の上で、二人でシリウス座流星群を見る」というのが
”この世界” での昭雄と理沙の約束。
”向こうの世界” からやってきた昭雄は、
死んでしまった ”こちらの昭雄” に代わって
その約束を果たそうとするのだが、彼女を病院から連れ出すことは
即、彼女の生命を危険にさらすことを意味する。

でも、昭雄は連れ出してしまうんだよねぇ。
もちろんそこには、理沙の強い希望があったから。
おそらく彼女は、自分の命がそう長くないことを自覚していて
このまま病院で衰弱して死んでいく人生よりも、
恋人と一緒に過ごす時間を優先したかった、のだろう。

中高生の世代なら共感できる ”純愛ストーリー” なのかも知れない。
私だってそんな時代はあったはずなのだが、いかんせん
もう還暦過ぎのオッサンになってしまっている身からすると
なんとも受け入れ難く、辛い物語になってしまっている。

二人の行動を見る目は、どうしても大人目線、
もっと言えば親目線(祖父目線と言わないでwww)になってしまう

親の目から見れば、理沙の行動は短慮以外の何物でもない。
恋人だったとは言え、所詮は他人でしかない少年によって
娘の命を奪われてしまっては、理不尽としか言い様がないだろう。

まあ、せいぜい自分たちの周囲数メートルの世界、
そして「いま」しか考えられないのが ”若さ” といえば
それまでなんだが、それでもこのエンディングは如何なものか。
若者が死に急ぐ終盤は見ていて苦痛しか感じなかったよ。

ラストシーンで昭雄は元の世界に戻るのだが、
映画の冒頭とは微妙に異なる時間線が展開する。
事故直後で入院している時点の昭雄が、診察室前の待合で
理沙(こちらは健康体と思われる)と出会うシーンで幕となるのだ。

はて、これはハッピーエンドと言えるのか。

”こちらの理沙” にとっては間違いなくハッピーなのかも知れないが
ならば、”あちらの理沙” にも、何らかの救済があってほしかったなぁ、
って思う私は、欲が深いのでしょうかねぇ・・・

あといくつか書いておこう。

主人公の親友である尾崎のキャラが素晴らしい。
こちらの尾崎君は、身を挺して昭雄の命を救うし、
あちらの尾崎君は、おそらく理沙に惚れているんだろうけど
そこを押さえて昭雄のアシストに徹する。いい奴だよ二人(?)とも。

理沙の母親役は有森也実。
なんと1986年版ではヒロインを演じていたそうな。
彼女に惹かれて観に来る人もいるのかなあぁ。

35年前には感動の物語だったかも知れないけど、現在では
ライトノベルやマンガにもっと刺激に溢れた物語がたくさんあるだろう。
現役の中学・高校生に受け入れられるかどうかはかなり疑問な気もする。
かと言って、35年前のノスタルジーで見に来る人も
さほど多いとは思えないし。

より多くの人に観てもらえるようにするなら、
かなりのリビルドが必要だったような気がしてならないんだが。


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