SSブログ

ゴーストハント1 旧校舎怪談 [読書・その他]

ゴーストハント1 旧校舎怪談 (角川文庫)

ゴーストハント1 旧校舎怪談 (角川文庫)

  • 作者: 小野 不由美
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2020/06/12
  • メディア: 文庫

評価:★★★☆

”ミステリ&ホラー” と銘打った全7巻シリーズの第1巻。

語り手は、女子高生・谷山麻衣(まい)。
小中高一貫校の高等部に外部から入学してきた麻衣は
同級生から ”旧校舎” の噂を聞く。

それは学校に敷地の一角にある、半ば壊れかかった木造校舎のこと。
そこを取り壊そうとするたびに、なぜかトラブルが起こっていた。

解体中に2階部分が崩壊して1階にいた作業員が死亡したり、
工事用のトラックが暴走して生徒が死傷したり。

そもそも、かつて校舎として使われていた時代から
怪奇な噂が絶えない場所だったという。

校長は、心霊現象の調査研究を行っている
SPR(渋谷サイキックリサーチ)に旧校舎の調査を依頼する。

麻衣は、あるトラブルからSPRの機材(テレビカメラ)を破損し、
スタッフの一人に怪我を負わせてしまう。

SPR所長の渋谷は、賠償させる代わりに
麻衣に臨時の助手として働くことを命じる。

麻衣は、図らずも怪異現象の現場に立ち会うことになってしまう・・・

私は基本的にホラーは守備範囲外、というか苦手なんだが
このシリーズは大丈夫だったよ。

確かにホラーな描写は気味が悪くて、読み進めるのが
躊躇われる部分もあるけれど、全体的にみてそういう場面は少ない。

ページをめくらせる原動力のほとんどは、登場人物のキャラ設定だ。

SPR所長に収まっている渋谷は17歳の美少年だが、
学校に通っている様子もなく、高価な機材を多数持っているので
かなりの財力もありそうだ(後援者がいるのかも知れない)。

「一也(かずや)」という名前があるにも関わらず
あまりにも傲岸不遜な自信家、そしてナルシストぶりから
麻衣は彼を「ナル」と呼び始める。

 話が進むうちに、他のキャラもみな彼のことを
 「ナル」と呼び始めるのも面白い。

さらに校長は、SPRだけでは不安なのか、
”怪奇現象の専門家” を複数呼んでいた

化粧がケバいお姉さんだが、本業は巫女という松崎綾子。

麻衣からは ”ぼーさん” と呼ばれる滝川法生(ほうしょう)は、
バンドを組んでベースを弾いているが、
実は高野山から降りてきたロン毛の僧侶。

そして物語が進むにつれて、
怪奇現象に立ち向かう人物がさらに増えていく。

金髪美少年のエクソシスト兼神父のジョン・ブラウン。
日本語は達者だが、なぜかアヤシげな関西弁で喋る。

和服姿で日本人形のような美少女霊媒師・原真砂子(まさこ)。

なんとも賑やかなメンバーだが、彼らは決して一枚岩ではなく
顔を合わせれば憎まれ口をたたき合う。

さて、主役の麻衣さんだが、彼女も ”単体” でみれば
好奇心いっぱいで、かつ元気に満ちあふれた威勢のいいお嬢さん。
通常なら充分 ”濃いキャラ” で通ると思うのだが
如何せん、周囲があまりにもエキセントリックすぎて、
かえって ”普通” に見えてしまう。

彼女自身には霊能力などはないし、お祓いなどの特殊技能も
持っていないのだけど、それだけに ”一般人の感覚の持ち主” として
物語全体を見通して語るには、いちばん適しているのだろう。

それに、こういう ”濃いキャラ” に囲まれていても、
押し負けない逞しさも持ち合わせている。

麻衣を含めて、こういうキャラ同士の掛け合いが
このシリーズの面白さなのだろうと思う。

巻末の解説によると、本シリーズの初出は1989~92年。
それが大幅にリライトされたのが2010~11年。
そしてその文庫化が2020~21年、ということだ。

作中に携帯電話が出てこないのは、初出時の時代背景を
リライト時にもそのまま踏襲しているのだろう。

ホラーであるから、ミステリのように
全てが理詰めで解決されるわけではないが、
上にも書いたように、それを補ってあまりあるくらい
面白いとは思うので、続巻も読む予定。

さて、読み終わってみていちばん疑問だったのは麻衣さん自身のこと。
家庭環境とか家族構成とかは作中に一切出てこない。
娘がこんな ”危ないアルバイト” に駆り出されているのに、家族からの
リアクションが何もない(どうなってるのか知らないのだろうが)。

ストーリー展開上、不要なので描写していないのか。
それとも次巻以降の伏線になっているのか。
はて。


nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ: