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小説 シドニアの騎士 きっとありふれた恋 [アニメーション]

シドニアの騎士 きっとありふれた恋

シドニアの騎士 きっとありふれた恋

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2021/04/30

未知の生命体・ガウナに地球を破壊され、かろうじて生き残った人類は
巨大な播種宇宙船「シドニア」を建造して太陽系を脱出、
内部で世代交代を重ねながら1000年あまりの旅を続けていた。

「シドニア」はガウナの襲来を撃退しつつ、レム恒星系に到達し
そこに人類が居住可能な惑星「セブン」を発見するが、
星系内にはガウナの巨大母船〈大シュガフ船〉が居座っていた。

「シドニア」は人類の生存のために〈大シュガフ船〉の排除を決定、
開戦の時が迫っていた・・・

アニメ化もされたマンガ「シドニアの騎士」の終盤では
この〈大シュガフ船〉との全面戦争がメインストーリーとなるのだが
本書はその外伝にあたり、〈大シュガフ船〉との最終決戦が近づく
「シドニア」艦内で展開されるラブ・ストーリーを描いている。

主人公は〈衛人〉(もりと:ガウナ迎撃用の人型兵器)の整備士を務める
金打(かねうち)ヨシ。人工的に産み出された ”中性” だ。

 かつて人口が激減し、滅亡しかけたことがある「シドニア」では、
 遺伝子工学が極限まで進んでいる。
 ”中性” として生まれた者は、思春期を迎えると
 相手に合わせて男女どちらかに ”分化” するようになっている。

同期にして親友の大森とともに整備の仕事に明け暮れる中、
いつか〈衛人〉の操縦士になること夢見ていたヨシだったが、
仮象訓練装置(シミュレータ)の成績は箸にも棒にもかからない。

そこで、機体制御システムに介入する拡張機能操作機を自作し、
密かに仮象訓練装置に組み込んでみるが、それでも
成績は〈衛人〉操縦士になれるレベルには遠く及ばなかった。

 ヨシの作成した ”拡張機能操作” とは、
 リミッターを解除して機体性能を極限まで高める、というもの。
 その代償として耐久性が犠牲になるわけだが・・・

ヒロインは〈衛人〉操縦士候補生・仄燧(ほのか・すい)。
クローン技術によって産み出された22人の ”仄姉妹” のうちの一人。
しかしながら、操縦士へと最適化された遺伝子を持っていながら
仮象訓練装置の成績は姉妹中最下位と振るわない。

あるとき、燧はヨシの不正行為に気づくが、通報しない代わりに
拡張機能操作器を自分の仮象訓練装置に取り付けさせる。

その結果、訓練の成績を伸ばすことができた燧は
ヨシとの ”共犯関係” を続けていくことになる。

ヨシもまた、燧と親密さを増していくうちに
自分の中に ”新たな感情” が湧き上がってきたことを自覚していく。

やがて燧は正規操縦士へと昇格、ヨシもまた拡張機能操作機を
〈衛人〉本体に取り付けられるように改良し、”共犯関係” は続くが
〈大シュガフ船〉との最終決戦の時が迫ってくる。

二人は戦術防巡艦・水城(みづき)に搭乗し、
最前線へ向けて出撃していくことになるが・・・

”中性” の人間とクローン兵士との恋、って書いてしまうと
いかにもSFな感じだが、彼らのメンタリティは
現代の我々とほぼ同じように描かれているので、違和感なく読める。
ハードSFとしてはともかく、エンタメとしては正解だろう。

ツンデレな燧と不器用なヨシ。すんなり感情移入ができるカップルで
この二人の恋愛模様もひねりがなく、きわめてストレート。

主役である二人だが、燧は本編では名前が出てくるくらい、
ヨシに至っては名前すら出てこないキャラなので、
ストーリーの自由度は大きい。

その代わり、いつお亡くなりになってもおかしくないわけで(おいおい)、
終盤の激戦の中、私は二人の(とくにヨシの)生死を巡って
気も揉むことになってしまったよ。

ラストはかなり ”力業” な感じもするが、
本編を読んでいる人なら納得できる範囲に収まっているだろう。


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