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武家屋敷の殺人 [読書・ミステリ]

武家屋敷の殺人 (講談社文庫)

武家屋敷の殺人 (講談社文庫)

  • 作者: 小島 正樹
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/08/11
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

弁護士・川路弘太郎は、静内瑞希という妙齢の女性から、
「自分の生家を探してほしい」という依頼を受ける。
彼女は20年前、生後間もない状態で
孤児院の前に置き去りにされていた。

20歳を迎えた瑞希は、施設の園長夫人から
一通の手紙と一冊の日記を渡される。
それはどちらも、赤ん坊の彼女が入れられていた
籠の中にあったものだった。
名前こそ記していないものの、それらを書いたのは
瑞希の母の兄、つまり伯父だという。

手紙には、瑞希の母親が父親である男を殺したこと、
そして伯父が死体の隠蔽に協力したことが記してあった。

さらに日記には、母親の殺人以後の日々が綴られていた。
やがて伯父は死んだはずの男を目撃するようになり、
日記の内容も次第に現実味を失っていく。
「一晩で壁の色が変わった」「空から人が降ってきた」
「塀が血を流した」「死んだ人間が一瞬でミイラに変わった」・・・

依頼を引き受けた川路は、友人の那珂邦彦と共に
瑞希の生家を探し始める。

川路は、日記の内容の異様さから
瑞希の伯父は統合失調症になっていたのではないかと疑うが
那珂は日記の内容がすべて真実を語っていると考える。

那珂は、日記の内容を手がかりに瑞希の生家の場所を絞り込んでいくが
その過程で彼の考えが正しかったことが明らかになっていく。

一見すると奇怪な現象が論理的に説明されていく、
てのは島田荘司の十八番なんだけど、
この作者は島田荘司と合作までしている人なので
いわば弟子みたいなものなのでしょう。


本書は文庫で約580ページとかなり長め。
そのうち、瑞希の生家を突き止めるまでで約150ページ。
これだけでもけっこうなネタが満載で、
すでに満腹感がし始めてしまうんだがまだまだこれは序の口である。


発見した生家で川路と那珂は瑞希の生母・赤座怜子と対面する。
精神に異常を来している彼女は、20年前のことを語り始める。
瑞希の父親となる男・才藤との出会いから、
彼を殺すに至った経緯、さらに死体の消失まで・・・
これまた長い上に、さらに多くの謎が散りばめられている。
ちなみに怜子の話だけで約170ページもある。

もう満腹感を通り越して胸焼けがしそうである。
しかもこの段階で、まだ220ページくらい残ってるんだから・・・

20年前の事件に隠された真相を暴くのが
後半のストーリーのメインとなる。

タイトルの「武家屋敷」とは、もちろん瑞希の生家・赤座家のことだ。

しかし、前半に大活躍した那珂は、後半にいたって
なぜか謎解きへの熱意を失っていく。
代わって川路が探偵役を張り切ってつとめるのだが・・・

謎がてんこ盛りな上に、物語の進行とともに
一旦は明らかになったはずの謎に実は意外な裏があったりと、
推理が二転三転してなかなか真実は見えてこない。

読者は最後の最後まで
作者にいいように引っ張り回されてしまうんだけど
よくできたミステリなら、それがまた楽しいだろう。


巻末の解説によると、この過剰なまでの
トリックのてんこ盛りな作者の作風は
"やりすぎミステリ" (やりミス)と呼ばれているらしい。

たしかに、食べ応えは十分なんだけど、食べきるには体力が必要。
こてこてのミステリファンなら大喜びなんだろうけど
昨今の流行りである "ライトなミステリ" 好みの人にはどうなんだろう。
ちょっと感想を聞いてみたい気もする。
あ、でもそういう人はこの手の濃厚な作品は読まないかなあ・・・
(私はライトミステリも大好きですけどね)

それと、この大長編を一気に読み切るだけのまとまった時間も必要かな。
私は半分くらいまで読んだ後、
時間がとれなくなって一週間くらい放置してしまい、
それから後半を読んだら、最初の方のいくつかの場面やら伏線やらを
きれいに忘れてしまっていたよ(笑)。

ご馳走が多すぎて、最初に何を食べたか忘れてしまうなんて情けない。

 まあ、たぶん私が単にトリアタマなだけなんだろうけど。

私はこの作風、好きです。
次回はちゃんと "体調を整えて"(笑) 挑みたいと思います。


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