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聖刻群龍伝 龍晴の刻 全4巻 [読書・ファンタジー]

聖刻群龍伝 - 龍睛の刻1 (C・NOVELSファンタジア)

聖刻群龍伝 - 龍睛の刻1 (C・NOVELSファンタジア)

  • 作者: 千葉 暁
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2014/06/24
  • メディア: 新書




聖刻群龍伝 - 龍睛の刻2 (C・NOVELSファンタジア)

聖刻群龍伝 - 龍睛の刻2 (C・NOVELSファンタジア)

  • 作者: 千葉 暁
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2014/08/22
  • メディア: 新書




聖刻群龍伝 - 龍睛の刻3 (C・NOVELSファンタジア)

聖刻群龍伝 - 龍睛の刻3 (C・NOVELSファンタジア)

  • 作者: 千葉 暁
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2015/01/23
  • メディア: 新書




聖刻群龍伝 - 龍睛の刻4 (C・NOVELSファンタジア)

聖刻群龍伝 - 龍睛の刻4 (C・NOVELSファンタジア)

  • 作者: 千葉 暁
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2016/08/18
  • メディア: 新書



評価:★★★★☆

第1巻の発売が1996年7月で、第28巻(最終巻)の発売が2016年8月。
完結までほぼ20年かかったということになる。

中断(続巻が出ない時期)が結構あったような気がするんだけど
単純計算すると8~9ヶ月に1冊出ていたことになる。

もちろんその間、『聖刻1092』等の他の作品も
並行して書いてたわけだから、
決してさぼっていたわけじゃないのは分かるんだけども。
でも20年は長かったなぁ。

物語開始時には少年の面影を残していたデュマシオンも
成長して所帯を持ち、最終章では思春期の子供を持つまでになる。
彼と同年代のキャラたちも同様だ。

大人として登場したキャラたちは
そろそろ引退を考える年齢になるなど
(おお、私と同年代じゃないか)
物語の中でも同じくらい着実に時は流れている。

 それもまた読む方にとっては楽しいんだが。

『グイン・サーガ』(栗本薫)は途中で放り出してしまったから
現在のところ、私が読んだファンタジーでは最長だろう。

とにもかくにも、全28巻での完結、おめでとうございます。

さてこの『龍晴の刻』はこの大長編の最終章である。
ざっと今までのストーリーを振り返ってみよう。

2000年前、大陸西方域に「龍の帝国」を一代で築いた「龍の王」は、
死に際して転生の秘術を施し、遙かな未来での復活をもくろんだ。

王の魂は復活に際して8つに分かれ、
それぞれ8人の人間("龍の器")に宿った。
その一人、小国イシュカークに第二公子として生まれた
デュマシオンが本編の主人公だ。

デュマシオンは国内での権力争いに生き残るため、
自分の力となってくれる人材を求めて諸国を放浪していた。
その中で、龍の王の遺産ともいうべき
"シュルティ古操兵" を手に入れたことにより、
「龍の王の後継者争い」の大本命として
歴史の表舞台に躍り出ることになる。

数多くの戦乱・陰謀・裏切り・恩讐を乗り越え、最終的には
最大のライバルであるレクミラー率いる帝国と
大陸西方域を二分して対峙するまでになる。

ここまでの戦いで、"龍の器" のうち6人までを
打ち破り、あるいは従え、残る最後の一人がレクミラー。
彼との戦いこそが "決勝戦" となるはずだったが・・・

これ以上の戦乱を望まないデュマシオンは、
愛娘スクナーをレクミラーの皇太子クロムリーに嫁がせ、宥和を図る。
レクミラーもまた病に伏して、両国の間に平穏な時が流れ始めたが・・・

というのが前章「龍虎の刻」までのあらすじ。


最終章では、当然ながらレクミラーとの決戦が描かれるかと思いきや
彼との決着は早々についてしまう。

代わって、デュマシオンの "最後の敵" となるのは、
彼の息子であるアーカディアであった。

 このあたりはアーサー王伝説がモチーフかなとも思った。
 アーサー王は謀反を起こした息子・モルドレッドと戦い、
 これを討ち取るも自らも致命傷を負い、
 アヴァロンの地で息を引き取るという悲劇的な結末を迎える。

 デュマシオンもまた悲劇的な最後を迎えるような気がして
 心配しながら読んだよ。

デュマシオンは、残忍で冷酷な暴君であった "龍の王" が復活し、
自分の体を乗っ取られることを恐れ、
強固な意志の力で "彼" を押さえ込んでいた。

自分の版図を連邦制にして自らは皇帝の座につかなかったのも、
農業・商業・工業の振興に尽くし、善政を敷いたのも、
すべては "龍の王" の二の舞にならないためであった。

しかし "龍の王" は、アーカディアを新たな "龍の器" とし、
彼の身体を乗っ取ることで "転生" を果たそうとする。

"竜の王" に支配されたアーカディアは、
新たな古操兵軍団を復活させ、
デュマシオンの正妃・サクヤーをも巻き込んで父に叛旗を翻す。

この最終章では、妻と息子を取り戻すべく "龍の王" へ挑む、
デュマシオンの最後の戦いが描かれる。

さぞかし激しい戦いになるのかな・・・と思いきや、
デュマシオンの矛先はいささか鈍りがちかなぁ。
目的は "倒す" ことではなく、"取り戻す" こと。
ある意味、もっとも困難な闘いではある。

"最後の決戦" というよりは "締め括り" の章、という感じ。
"寿命" の尽きかけた "古操兵たち" の最後の見せ場でもある。
20年にもわたって親しんできた綺羅星のようなキャラたち、
その最後の活躍もまた描かれていく。

 もっとも、「あとがき」にもあるように、
 なにぶん膨大なキャラと詳細な設定の集積であるから、
 人、モノ、すべてについて決着をつけることはそもそも無理。

作者の描いたこの物語の結末は、読んでいただくしかないが、
まずは完結まで書いていただいたこと、
読者に最後まで語りきってくれたことを感謝したい。


エピローグでは最後の戦いから十数年後が描かれる。

生き残ったキャラたちのその後、
そして、その子どもたちのことまで。
このあたりはちょっと感慨深いものがある。

もちろん、これだけではまだまだ掬い切れていないキャラや、
描ききれなかったエピソードもたくさんあるだろう。

そういうこぼれた部分も知りたいし、
デュマシオンが作り上げたこの世界の行く末を
もっと知りたいとも思う。

短編集でもいいので、ぜひ「外伝」を書いてほしいなぁ。
よろしくお願いします。


まずは20年間、お疲れ様でした。


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