伊藤博文邸の怪事件 [読書・ミステリ]
評価:★★☆
九州出身で大阪で英語を学んだ杉山潤之助。
明治17年、上京した彼は念願だった伊藤博文の屋敷に
新入りの書生として住み込むことになった。
しかし、新生活が始まって早々に、先輩書生の一人・桜井が
屋敷内で殺されるという事件が起こる。
潤之助は、相部屋となった書生仲間の月輪(がちりん)龍太郎と共に
犯人を求めて推理を巡らせるが、
やがて伊藤博文邸に秘められた、ある "仕掛け" が明らかになる・・・
明治~大正~昭和初期を舞台にした作品は好きで
書店で見かけたらかなりの確率で購入してる。
本書もその例に漏れず、ってやつですね。
標題にある伊藤博文はもちろん、伊藤の娘の家庭教師として
津田梅子が登場したりと、実在の人物もストーリーに絡んでくる。
そういうところは歴史小説の醍醐味でもある。
ただまあ、本書はミステリなので、ミステリとしての出来が問題。
残念ながら、それについてはいささか残念に思った。
だいたい裏表紙の惹句からして誇大広告気味。
「恐るべき密室殺人事件」なんて書いてあったら、
どんなにおどろおどろしいのかと期待してしまうじゃないか。
でもこれ、密室じゃないでしょ?(^^;)
屋敷内ではあるけど出入りが不可能な密閉空間じゃないし、
人間だって何人もいたんだもの・・・
「堂々たる本格ミステリの傑作」ってあるけど、それもどうかなあ。
本書の中核を占めるネタは、某大御所作家の超有名短編と同じもの。
別にトリックの再使用が悪いとは思わないけど、
最後にこのネタが明かされた時には、ちょっとガッカリしたし
何となく釈然としないものを感じたりもした。
短編だったら「やられたー」って素直に受け取れても
長編だとそう思えないのかなぁ・・・
やっぱ短編向きのネタなんだろうか。
それとも私のココロが狭いのでしょうかねぇ・・・(^^;)。
解説の千街晶之氏によると、
作者の岡田秀文氏は、ずっと時代小説を書いてきた人で、
本格ミステリ作品としては本書が第1作目とのこと。
本作は潤之助&龍太郎が登場するシリーズになっていて、
既に2作めの『黒龍荘の惨劇』が刊行されている。
千街氏によると「第2作の方が出来がいい」そうなので、
とりあえず『黒龍荘-』までは読んでみようかなあ。
★2つにしようかと思ったんだけど、
私の好きな時代なので★半分増量しました。