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監獄島 上下 [読書・ミステリ]

監獄島〈上〉 (光文社文庫)

監獄島〈上〉 (光文社文庫)

  • 作者: 加賀美 雅之
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2012/05/10
  • メディア: 文庫




監獄島〈下〉 (光文社文庫)

監獄島〈下〉 (光文社文庫)

  • 作者: 加賀美 雅之
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2012/05/10
  • メディア: 文庫



評価:★★★★☆

作者の後書きによると原稿用紙にして2400枚。
文庫にしても上下巻で合わせて1300ページを超えるという
まさに本格超大作ミステリだ。

1927年10月。
マルセイユの沖合20キロに浮かぶサン・タントワーヌ島。
中世より流刑地として知られ、現在も刑務所が設置されている。
この刑務所内で、「驚くべき陰謀が進行している」という
匿名の内部告発があり、パリ警察は調査のために
予審判事シャルル・ベルトランを向かわせる。

彼の甥にして作家のパトリックを含めた一行6人が
島に到着した日から、謎に包まれた連続殺人事件の幕が開く。

密室状態の館での撲殺、塔からつり下げられた火だるまの死体、
独房の死体は手足をバラバラに切断され、
地下室のギロチンで切断された上半身は持ち去られ、
海岸の岩に突き刺ささった状態で発見される・・・


全編これディクスン・カーの世界。
横溝正史もかくやというばかりの怪奇幻想の中で起こる不可能犯罪。
ミステリ好きなら必読の書と言い切ってしまおう。


これでもかこれでもかと不可思議な殺人事件のオンパレード。
こんなに死んでしまっては、犯人がいなくなってしまうんじゃないかと
心配になるくらい容赦なく死んでいく。

そしてまた、解決編がすごい。
全1300ぺーじのうち、最後の300ページが
まるまるベルトランの謎解きシーンになってるのだ。

 昔読んだ、世界最長の本格ミステリ(笑)である
 二階堂黎人の『人狼城の恐怖』全4巻では、最終巻が
 一冊まるごと解決編だったけど、それに次ぐボリュームだ。

トリックも機械的なものあり、心理の盲点を突くものあり、
錯誤を誘うものありとバラエティ豊か。
並みの長編6本分くらいのアイデアがつぎ込んである。

そして、伏線の回収も徹底的に行われる。
それはもうほんの些細なところまできっちりと。


上手く言えないのだが、"階層構造" とでも言うのかな。
伏線の回収と謎解きが進むたびに、
明らかになったかと思われた真相が根底から覆って、
新たな様相を示すようになる。
それが何度も繰り返されて全貌をつかむことは容易ではない。
それが300ページに渡って続くのだから凄まじい。

いやはや最後の最後まで気を抜けない作品である。


なにせ1300ページもあるんだから、1日や2日じゃ読み切れない。
記録を見ると、私はこの上下巻を10日ほどかけて読んでる。
10日もあると、読みながらいろいろ考える。

どんどん人が死んでいくので、容疑者も減ってくる中で
「どういうオチだったら、読者が一番驚くだろう?」

これはもう推理ではないね(笑)。単なる当てずっぽうの世界。
自分でも思うけど、嫌な読者だね(笑)。でもそれもまた楽しい。

本書を読むような人なら、どのように着地するのか
あーでもない こーでもないって、いろいろ思いを巡らすだろう。
10日間、これぞ本格ミステリ、って雰囲気にどっぷりと浸れる。
好きな人には堪らない、極上の体験が出来る作品だ。


さて、作者の加賀美雅之さんなんだけど、
思えば最近新作が出てないよなあ・・・
と思ってネットで検索したら、なんと!
2013年の5月にお亡くなりになってたんですね(;_;)

1959年生まれというから享年は54歳くらいでしょうか。
まだまだ若かったですね。
これから多くの作品を残せるはずだったのに・・・
ご冥福をお祈りします。


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