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ウルトラマンデュアル [読書・SF]

ウルトラマンデュアル (TSUBURAYA×HAYAKAWA UNIVERSE)

ウルトラマンデュアル (TSUBURAYA×HAYAKAWA UNIVERSE)

  • 作者: 三島 浩司
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/01/23
  • メディア: 単行本



評価:★★★☆

以前このブログで紹介した「多々良島ふたたび」という
怪獣小説アンソロジーにつづく、円谷プロとのコラボ企画第2弾。

「TSUBURAYA ✕ HAYAKAWA UNIVERS 02」は
まさに "ウルトラの戦士" を題材にしたハード・アクション長編だ。

これから紹介の文章を書くけれど、
あなたがウルトラ・シリーズのファンで、
この本を読むつもりでいるのなら、以下の駄文なんぞ無視して
本屋へ走るなりネットでポチるなりしましょう。
余計な予備知識はない方が楽しめると思うので。

もう少し内容を知ってから判断しよう、という人は
私の下手な文章にいましばらくお付き合いいただこう。


ある夜、夜空に謎の文字が現れる。
全世界で同時に観測されたその正体は "ウルトラサイン"。
すなわち、銀河の秩序を司る "光の国" から
地球人にもたらされたメッセージだった。

そして1週間後、世界中の人口密集地帯で謎の大爆発が起こる。
被害は地球全体で25カ所に及び、日本では東京都練馬区を中心に
22万の人命が失われ、全世界では500万人以上が犠牲となった。

それは地球征服を目論むヴェンダリスタ星人による最初の攻撃だった。
"ウルトラサイン" は、迫りくる侵略者の存在を
地球人に知らせるための警告だったのだ。

そして抵抗する術を持たない地球人に対して
侵略者が示した降伏期限が迫る中、"ウルトラサイン" は再び現れた。

同時に、地球各地で侵略者と戦う銀色の "光の国の巨人" が目撃され、
さらには地球近傍の宇宙空間においても、
侵略者と "光の国" のスペースシップ同士の戦闘が行われた。

戦力的に拮抗する両者は激しい消耗戦を展開し、
最終的に艦艇と人員のほとんどを失うに至る。

"光の国" の最後の1隻は航行能力を失い、
わずか1人(と "1体" )の生存者とともに東京近郊に不時着した。

ヴェンダリスタ星人側も、数名の生存者を残すのみとなった。

侵略者は援軍を呼び寄せたことを明らかにし、
それをたてに地球人に服従を迫るが、
"光の国" 側もまた、母星に救援を求めたことにより、
三者の関係は膠着状態に陥る。

"光の国" とヴェンダリスタ星人。
どちらの援軍が先に到着するかで地球の運命は決まる。

"光の国" の援軍の到着までの間、表向きは
ヴェンダリスタ星人への服従を示さなければならない地球人は
苦渋の選択として、"光の国" の最後の生存者である
"ウルトラの聖女" を、建前上はヴェンダリスタ星人と同格の
「侵略者」と位置づけた。

"聖女" もまた地球側の意を汲み、不時着地の周辺を
"光の国の飛び地" として侵略支配することを宣言する。
彼女は人々から "ティア" (涙)と呼ばれ、
不時着した "光の国" の宇宙船は地球上で唯一
ヴェンダリスタ星人に対して抵抗を続ける砦、
"ティアズ・スタンド" となった。

戦力のほとんどを失っていたヴェンダリスタ星人は、
静止衛星軌道上に廃棄されていた "光の国" の輸送船を拿捕し、
積載されていた宇宙生物を「兵器」として調整したのち、
次々と "飛び地" へと転送させ、"ウルトラの聖女" の抹殺を図る。

"聖女" の存在に心を打たれ、共闘を誓った少数の者たちは
国籍を捨て、地球人であることを捨てて、
"飛び地" へ入り、"ティアズ・スタンド" へと加わった。
"光の国" の超技術である "ウルトラ・オペレーション" を
受けることによって、自らが "ウルトラの戦士" となり、
ヴェンエダリスタ星人と、そして
彼らが送り込む "怪獣" たちと戦うために・・・

 ちなみに、"ウルトラ・オペレーション" を受けて
 "ウルトラマン化" しても、全員が "戦士" になれるわけではない。
 資質を持った一握りの者だけが、
 銀と赤のボディをもつ "光の戦士" になれるのだ。


長々と書いてきたがこれはあらすじではない。
作中で断片的に語られる、物語の開始時点までの世界状況を
まとめたものである。

主人公・二柳日々輝(フタヤナギ・ヒビキ)が "飛び地" へ入り、
"ティアズ・スタンド" の戦列に加わるところから本書は始まる。

折しも、"ティアズ・スタンド" 最強の戦士・デュアルが
怪獣との戦いに斃れた直後であった。
"ウルトラ・オペレーション" によって、"戦士" としての能力に目覚め、
"デュアルII" となった日々輝の戦いが始まる・・・


侵略者の圧政に苦しむ人々の生活とか、
"ティアズ・スタンド" を密かに支援する地下組織とか、
同級生を侵略者に乗っ取られた高校生・三矢(みつや)と
"ティアズ・スタンド" 司令官の娘・滴(しずく)との淡い慕情とか、
敢えて "飛び地" の中と外に分かれる道を選んだ恋人たちとか、
書かなければならないことはまだまだたくさんあるんだけど
既にけっこうな字数を費やしているのでそろそろ締めよう。


ここまで読んでいただければおわかりのように、
世界設定がとにかく凝ってる。

お馴染みのウルトラ・シリーズとはちょっと変わって
かなりハードでシリアスな雰囲気なのだけど、
オリジナルへのリスペクトも充分に感じるし、
暴虐な侵略者に敢然と立ち向かう人々を描いたこの物語は
紛れもなく「ウルトラマン」である。


難を言えば、ラストがややあっけないかなぁ。
とにかく物語がどう着地するのか皆目分からないまま、
残りページだけがどんどん減っていく。
「ウルトラマン」なのだから、最後は侵略者に勝利するはずだと
堅く信じて読み続けたのだけど、いささか心配になるくらい。
もうちょっと最終決戦の描写が厚ければ、
文句なしで星4つだったんだけど。

とはいっても、エピローグの爽快さは格別。
最後まで頑張って読んだ甲斐があったというものだ。

最後に、本書の裏表紙の惹句、その最後の一文を紹介しよう。
そこにはこう記してある。
「君には今でも、ウルトラの星が見えているか?」

この本を作った人は「よく分かってる」なぁって思った(笑)。


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