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冒険王<1> ビスマルクの陰謀 [読書・冒険/サスペンス]

冒険王〈1〉ビスマルクの陰謀 (ハルキ文庫)

冒険王〈1〉ビスマルクの陰謀 (ハルキ文庫)

  • 作者: 赤城 毅
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2015/03
  • メディア: 文庫



評価:★★★

同じようなタイトルのマンガ雑誌が昔あったような気が・・・?


1895年、清との戦争に勝利した日本が、
ロシア・フランス・ドイツの三国干渉に屈した頃。

ドイツ留学中の陸軍中尉・志村一心は、独仏露三カ国の外交官と
乱闘騒ぎを起こし、士官の身分を剥奪される。
しかし、武芸に長じ英独仏三カ国語をこなす一心は、
新たにスパイとしての任務を与えられた。

ベルリン近郊の屋敷に身柄を移され、語学と武術、
さらには間諜としての技術を叩き込まれていく。

そして1年が経ち、"卒業試験" として与えられたミッションは
引退してもなおドイツ政界に大きな影響力を持つ
鉄血宰相・ビスマルクに接近し、ドイツの対日政策を探ること。

日本の大財閥の次男坊という身分をでっち上げ、
ビスマルク主催の舞踏会に潜り込むが、
そこでアンネローゼと名乗る謎の美女に出会う。

彼女から手渡された秘密文書を巡り、一心は
いくつもの勢力による争奪戦に巻き込まれていく・・・


和製007誕生編ともいうべき作品なのだが、
主人公の一心があまりスパイらしくない。

スパイといえば、権謀術数が渦巻く闇の世界を
手段を選ばず、非道に手を染めて生き抜いていく
・・・ってイメージがある。

一心もスパイになりきろうとするのだが、
心の根幹とも言える武士道精神が邪魔をするのだ。

卑怯な振る舞いはしない、
弱者は見捨てない、傷つけない。
女性の影に隠れるなど言語道断・・・
表紙のイラストではやたらニヒルに描かれてるけど
本文中の一心は女性を労り情に厚い好漢である。

もっとも、本書はスパイ・サスペンスではなく、
タイトル通り、冒険ヒーロー・アクションものなので、
実は一心のようなキャラのほうが主人公として正解なのだが。

ただ、非情になりきれない一心は、
それがために窮地に陥ることもしばしば。
スパイになりきれないスパイ見習いは
国際的な謀略の世界で翻弄されることになる。
しかし、そんな中でも一心は、あくまで武士道を貫いていく。
そんな主人公を応援しながら読むのが、
本書の正しい楽しみ方なのだろう。

この作者の作品はいつもそうだが、
払った値段分はきっちり楽しませてくれる。
そういう意味ではハズレがない。
本書も充分に楽しませてもらった。

ただ、最後に一つだけ文句を言わせてもらおう。
中盤、ベルリンへ向かう列車の中で一心たちは敵に襲われる。
そこから "ある方法" で危機を脱するのだけれど
いくら何でもこれはないだろう。
物理的に考えて無理だと思うぞ。


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