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覇王の番人 [読書・歴史/時代小説]

覇王の番人(上) (講談社文庫)

覇王の番人(上) (講談社文庫)

  • 作者: 真保 裕一
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/09/15
  • メディア: 文庫




覇王の番人(下) (講談社文庫)

覇王の番人(下) (講談社文庫)

  • 作者: 真保 裕一
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/09/15
  • メディア: 文庫



評価:★★★

歴史小説って滅多に読まないんだけど、何と言っても
題材が戦国最大の "謎" である「本能寺の変」、
そして作者がミステリ作家とあれば、
一体どんな解釈を見せてくれるのかと期待もしてしまう。


物語は、永禄9年(桶狭間の戦いの6年後)、
越前朝倉家に身を寄せている明智光秀の元へ、
13代将軍足利義輝の弟・義昭が細川藤孝とともに
やってくるところから始まる。

光秀と藤孝は、一人の武将に期待をかける。その名は織田信長。
義昭を将軍とし、戦国の世に秩序を取り戻すことを胸に、
二人は信長に仕え、天下布武への戦いへ身を投じてゆくが
それは鬼畜の所業、阿修羅の道を歩むことだった・・・


明智光秀という人は、謀反人・裏切り者という
悪いイメージで語られてきたことが多かった。
しかし本書で描かれる光秀はいささか異なる。

乱世を終わらせ、万民に平穏な暮らしを与える、という
確固とした理想を持った深謀遠慮の人である。
戦で死んだ部下を一人一人手厚く葬り、
領民に対しても慈悲深く、家族への愛にあふれた人でもある。

そんな光秀だから、信長の下で働くのは容易ではない。

信長は、浅井一族を滅ぼしてその髑髏で杯を作ったり、
比叡山をはじめとする、織田軍に反抗する宗教を徹底的に弾圧し、
農民や女性、子供も容赦なく皆殺しにしていく。
信長が次々に起こす悪鬼のような仕打ちも
「すべては乱世を終結させるため」と
光秀は自分の心に言い聞かせ、堪忍を重ねて仕えてきたが・・・


光秀が本能寺の変を起こした理由は、
歴史的にはいろいろな説があるらしい。

本書の中で、作者の用意した理由は、
上記のように信長と光秀の "理想" が次第にかけ離れていき、
その違いが修復不能なまでに広がったことによる。
しかしそれは全く意外では無い。
文庫上下巻で1000ページを超える長さのうち、
下巻の半ばまではひたすらに耐える光秀が描かれているので、
謀反の原因が "忍耐の限界" だろうというのは、まあ予想できる。


しかしそれでは普通の歴史小説と変わらない。
本書の特色は、光秀が「本能寺の変」を起こした後にある。

詳しく書くとネタバレになってしまうんだが
「本能寺の変」の裏に隠された事情というか "黒幕" が明らかになる。
そして、いかにもミステリ作家らしく、「本能寺の変」から始まって
秀吉の台頭、関ヶ原、そして徳川の治政に至るまでの
一連の歴史的な出来事に、意外な解釈を引き出してみせる。
このあたりは歴史ミステリとしてけっこう面白い。


本書には、光秀以外にもう一人、主人公がいる。
信長軍の美濃侵攻によって家族を殺された少年・小平太である。
彼は忍びの里の頭目・弦蔵に拾われ、厳しい修行の日々を送る。
やがて成長した小平太は、明智軍配下の忍びとなって、
光秀と共に戦いの日々を過ごしていく。

修行のシーンや、敵の忍びと刃を交えるシーンは
昔懐かしい忍者マンガの世界。
白土三平の「サスケ」を思い出してしまった。

小平太にとっての永遠の女性は、ほんの一時だけ、心を通わせた
光秀の末娘・玉子(たまこ:後の細川ガラシャ)。
彼女の面影を胸に秘め、小平太は光秀のために闇を駆ける。


面白かったのは否定しないけど、やっぱり1000ページは長い。
歴史小説ってなぜか興味を惹かないんだよねえ・・・
戦国時代を扱ったNHKの大河ドラマはけっこう喜んで見るんだけど。

 「軍師官兵衛」は抜群に面白かったなぁ・・・
 岡田准一の熱演(怪演?)ぶりも見事だったし。

 ちなみに「花燃ゆ」は一回も見てない。


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