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美神の狂宴 クラッシャージョウ12 [読書・SF]

美神の狂宴 (ハヤカワ文庫JA)

美神の狂宴 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 高千穂 遙
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/02/20
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

22世紀初頭に超光速(ワープ)航法を手にした人類は、
広く銀河に植民地を築き、版図を広げていった。
惑星改造などの任務を請け負ったのは、"クラッシャー" と呼ばれる
宇宙活動のスペシャリストたち。
非合法なこと以外は、どんな仕事でも引き受ける "何でも屋" だ。
数あるクラッシャーたちの中でもAAA級の評価を誇る、
クラッシャージョウとそのチームの活躍を描くスペースオペラ、
その最新作にして第12作。

人類の宝とも言える重要美術品の護送・護衛任務を終え、
惑星アフロディーテに降り立ったジョウのチーム。
乗艦ミネルバのパーツ交換のため、宇宙港に残ったリッキーは、
要人グラン・ダーツの暗殺を狙ったテロ事件に巻き込まれる。
3人組の凄腕の殺し屋・ディザスターズ、
そして異形の生物群との戦いで瀕死の重傷を負うリッキー。

リッキーが入院した病院へ向かったジョウたちの前に現れたのは、
鈴鈴(りんりん)と蘭蘭(らんらん)と名乗る正体不明の双子の美女。
彼女らは、ジョウたちに "護衛" を依頼したいという。

惑星アフロディーテを舞台に、美術品をめぐる欲望が渦巻き、
クラッシャー、ディザスターズ、謎の双子、
謎の生物群、そして連合宇宙軍まで巻き込んだ死闘が始まる。


前作「水の迷宮」から2年と、近年になく速い刊行ペース。

 wikiで見てみたら、一番間が空いたのが
 第8巻「悪霊都市ククル」と第9巻「ワームウッドの幻獣」の間で
 なんと13年も空いてた。

ただ、前作は今ひとつ消化不良感の残る出来だった。
海洋惑星が舞台で、水上での戦闘シーンが多く、
ジョウたちにとってはホームグラウンドではなかったせいも
あるとは思うが、主役の座が他のキャラに喰われてたしねえ。

今作はどうか。
パワードスーツを駆使する3人組のディザスターズ、
異形の巨大生物群、謎の拳法を操る双子の美女と
派手な道具立てはたくさん揃っているが
逆に揃いすぎていてジョウたちの影が薄いようにも思う。

ディザスターズがまず強い。半端なく強い。
通常兵器がなかなか通用しない巨大生物も強い。
ジョウもタロスも苦戦の連続で、身を守るので精一杯。
そんな連中に対して、双子の美女は軽やかに互角の戦いを見せる。
つまり、彼女らも半端なく強い。

シリーズものの宿命で、巻を重ねるごとに
敵の設定が難しくなってきたのかも知れない。
どんどん敵を強くしてしまうと主人公が勝てなくなってしまうし
弱い敵ばかり出してもじり貧になるだろうしねえ。

今回、非常に強力な敵を設定したので、不利になったジョウたちの
"援軍" として双子を登場させたのだろうけど、
この二人が目立ちすぎて・・・なんだか双子が主役の物語に
ジョウたちがゲスト出演してるみたいである。

戦闘シーンがほぼ地上戦のみなのも、ちょいと地味かなぁ。
メカのサポートはあるものの、メインになるのは肉弾戦。
これはこれで "熱い" んだけど、仮にも "スペース" オペラなんだから、
ミネルバやファイター1とかの活躍も拝みたかったよねぇ。


何だか文句ばかり書いてしまったが
戦闘シーン自体は迫力充分でページ数もたっぷり。

鈴鈴と蘭蘭も、最初は気づかなかったけど、途中で
「あ! あの子らかあ」ってわかったよ。
同じ作者の他のシリーズからの友情出演(?)だったんですね。
いやあ久しぶり。あの子らはこうなってたんですねえ。


というわけで、普通なら★3つかなあと思ったんだけど
2年というインターバルで出してくれたこと、
懐かしいキャラに再会できたこと、
そして迫力充分の戦闘シーンを読ませてくれたので★半分増量だ!


私が19歳のときに出会ったシリーズなのに、
38年経った今でもその新作が読めるなんて、素晴らしいこと。
齡60を超えて、まだまだ元気な高千穂さん。
次作も期待してます。


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